厄災
こちらの作品は、『ノベルアップ+』にて連載されているものと同じ作品です。
6/5には同時更新出来るように現在準備を進めております。
※2023/06/02追記:修正作業が予想以上に時間がかかってしまう上、仕事の不規則な出勤時間で作業できる時間が限られてしまったため、第五章同時更新を6/10に延期させていただきます。誠に申し訳ございません※
また予め、こちらの作品はロックバンド『THE ORAL CIGARETTES』の楽曲たちの影響を大きく受けております。問題があればすぐに修正を行います。
改めて、語彙力に自信がありませんが少しでも読んでいただけると非常に嬉しいです。
よろしくお願いいたします!!
「…………」
何の変哲もない現代社会にある街――とは思えない光景が、周囲に広がっていた。
崩壊した建物の破片が地面を埋め尽くされ、それに巻き込まれた人々の死体も一緒に転がっており、豪雨が既に冷え切っている死体をより冷たくしている。
時々漏れたガスが引火し、爆発を起こして被害を拡大させていた。
「妙だな……【奴ら】がここまで暴れるとは……」
黒のフードを身に纏った金髪オールバックの青年はこの状況に動じることなく、不安定な足場を歩き続ける。
前方に動かなくなった夫の冷たい体をひたすら揺すっている妻と、大声で泣いている幼い息子が見えたが、青年は何も感じてないかのように素通りしようとした。
――グォォ!!
上空から低い獣のような雄叫びが聞こえてくる。
青年が上を向いて確認すると、異世界のモンスターのように大きい鳥の姿があった。
桃色の体に、今にも飛び出しそうな眼球、人と同じ形をした足。その鳥の姿は、見ているだけで吐き気がしてくるほど不気味なものだ。
周囲に親子以外にも負傷して助けを求めている者、恋人の名を叫びながら探している者など、多くの人がこの場にいる。しかし、青年以外この鳥の存在に気づいていなかった。
「【アニマ】……こいつが見えるのは幸か、不幸か」
青年が【アニマ】と呼んだ不気味な鳥が大きな足で親子を踏みつけようとした。
「《リベレイト》――【ケラスス】」
刹那――何かによって足を切断され、悲鳴を上げ始める。
青年がまるで最初から手にしていたかのような速度で何もない空間から剣を取り出し、鳥の足を斬ったのだ。
青年はもう一度剣を振り下ろす。空を斬ると同時に炎の斬撃が飛び、鳥の体を斬ると同時に全身を燃やし尽くしていく。
鳥の体は地面に落ちる前に灰になって消えていった。燃やし損ねた眼球が、亡くなった夫の体の上に落ちる。しかし親子はその眼球が目に入らず、助けられた事にも気づいておらず、ひたすら亡くなった夫の方を見ていた。
異形の存在である【アニマ】の姿は、一般人には見えないのだ。
「…………」
青年は剣を消滅させ、何事もなかったように先を歩き始める。
「早いとこ、事態を招いた犯人を見つけたいが――何だあれは?」
青年の目に映ったのは、怪物の山――【アニマ】の死体の山だ。
「一体誰が……?」
青年が近づいて確認すると、その近くで泣いている幼い少年の姿が。
すると、先程と似た【アニマ】が少年に迫る。
「《リベレ――」
青年は瞬時に剣を取り出す構えに入るが、その寸前で【アニマ】が息の詰まったような苦しそうな声をあげ、動きを止める。次第に目から光が失われ、そのまま地面に落ちた。
【アニマ】が無傷のまま、絶命したのだ。
「!?」
信じられない技を目の当たりにした青年は、周囲を見渡す。
自身と同じ【能力者】を探したが、それらしき人物は誰もいなかった。
――目の前の少年を除いて。
「まさか……《リベラ》……!?」
※
未曾有の大災害――『石神厄災』が起きてから約十年が経った。
厄災が起きた街――石神市は、中心都市の中巌区を除いて問題なく復興できており、むしろ厄災前よりも発展していた。
「…………」
発展した中でも、どこか懐かしさを感じる商店街がある東磐区。
学校の制服を着た少女が、学校を目指して歩いていた。
茶髪のショートヘアをしたその少女の目が死んでいる。朝の眠気が残っているのか、学校が憂鬱なのか、無心で歩いていると動物の尻尾を踏みつけてしまう。
しかし、それはただの動物ではなく、狼のような姿をした【アニマ】だった。狼の【アニマ】は一瞬悲鳴をあげ、素早く後退した後少女を睨み付ける。
少女は気づいておらず、そのまま歩みを進めた。
踏まれたことで怒った【アニマ】が、少女に噛みつこうとする。
「《リベレイト》――【サザンカ】」
男の声がすると同時に、【アニマ】が真っ二つに裂け、地面に転がった。
やや目つきの悪い紺色の髪をした少年が、日本刀で【アニマ】を斬り倒したのだ。
「?」
少年の声を耳にした少女が振り向く。
「三咲先輩! おはようございます!」
少年は素早く刀を消し、少女――三咲に挨拶をする。
「……エイト?」
三咲は少年の名前を呟くだけで、挨拶を返さなかった。
少年の名は星守エイト。
十年前、青年に拾われた少年である。
「先輩、今日も一緒に行ってもいいですか?」
エイトは挨拶を返されなかったことを気に留めず、三咲の隣に並び歩き始める。
「いいけど……私といて楽しいの?」
「楽しいですよ!」
「そう…………」
笑顔のエイトに対し、無表情の三咲。
――これは、自身の呪いを解く少年少女の物語――




