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どうせみんな死ぬ。  作者: さくらもーふ
第一章 ~願いの手紙~
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6-35 二人の道を歩きたい

「何の話だ……? 分からない。俺には、少しも、理解できない」

「分からなくていいよ。たとえ、マナが忘れても、誰にも理解されなくても、僕だけが分かっていれば、それでいい。誰がどう思っていようと、僕はまなちゃんを守るだけだから」


 それだけの思いだとは、知らなかった。──本当にあかりは、マナを愛していたのだろう。


「殺す、絶対に殺す……殺してやる……!」


 今のトイスにはきっと、誰の言葉も届かない。愛していたものを、彼は失いすぎた。失う度に、膨れ上がっていた世界への恨みは大きく、それが、マナという最後の歯止めを失ったことで、爆発したのだろう。


「ねえ、トイス。一つ、聞かせてくれる? ──マナの血液型って、何?」


 その質問の真意に、すぐ気がついたのだろう。トイスは顔をさらに歪めた。


「本当にお前はっ……何も、何一つも、少しも、知らない! ルスファの女王となるものは、血液にその印が刻まれ、他の血を一切、受けつけなくなる──輸血なんて、できるはずがないだろ!!」


 ──やはり。最初から分かっていて、マナは、病院に行くのを断ったのだ。


 もっとも、なぜ、女王に輸血ができないことを認知しておいて、何年も放置しているのかという疑問は残るけれど。


「そう──やっぱり、あたしって、すごく愛されてたのね」

「……っ! 死ね! マナ・クレイアアアア!!」


 気がつくと、あかりが氷の剣で、トイスの斬撃を受け止めていた。速すぎて見えなかった、というやつだ。遅れて、背筋を冷や汗が伝う。直後、目の前で剣戟が繰り広げられる。


 私はそれを放心して眺めていたが、やがて、トイスが攻撃の手を止め、こう言った。


「戦争だ……。戦争に勝利し、お前と魔族全員を葬る……!」

「いやいや、もう少し平和的な解決をさ──」

「とっくにその段階は過ぎてるんだ、榎下朱里──いや、榎下朱音、だったな」

「ちょっと名前が違うだけじゃん? たいして変わんないって」

「いいや。勇者の名前は榎下朱里だ。つまり、お前は勇者ではないということだ。それが何を意味するか、分かるか?」

「……難しいことは分かんないなあ」

「これまで、十年以上も、お前は国を欺いてきたことになる。それとも、最初から、そちら側の人間だったのか?」

「いや、そんなわけ──」

「果たして、一体、何人がお前の言葉を信じるだろうな」


 先の発言に見逃せないものがあって、私は口を開く。


「──ちょっと待ちなさい。さっき、とっくにその段階はすぎてるって、言ったわよね? どういう意味?」


 すると、トイスは口角をにぃっと上げた。


「魔王城っていうのは、ずいぶんと物が少ないんだな。おかげで、隠し場所を探すのが大変だったらしい」

「え? 何の話?」

「──爆弾、でしょ?」

「察しがいいな、マナ・クレイア。まあ、もうすでに手遅れだがな……はは、ははははは、ふはははは──」

「あかり、一度、城を出るわよ! どんな方法でもいいわ!」

「おっけえ!」


 すると、あかりは城の天井を落下させ、トイスにその対応を強いる。その隙に、城の壁を溶かして、脱出した。


 それから、走って壁まで駆け抜ける。魔王なので、裁かれはしないが、開戦を宣言された以上、殺される可能性はある。


「ねえ、さっきのって、魔王城が爆発したってこと!?」

「ええ、そうね」

「──あれ? なんか、やけに落ち着いてるような……」

「とりあえず、レックスのところに向かいなさい。人間の側につかないなら、だけど」

「はははっ。言ったじゃん、君を守るって。──それに、人間の側につくなんて無理でしょ。僕、ほんとは勇者じゃないんだからさ」

「それもそうね。……ありがとう」

「お礼を言うのはこっちの方だよ」


 私は足りない頭を回して、なんとか考える。昨日、ご飯は食べたので、頭の巡りもいい気がする。


 王様が戦争を起こすと宣言したのだ。戦いは避けられない。


 なんとしてでも、私は、生きなければならない。この命を無駄に散らすわけにはいかない。どんな手段を使ってでも。


「それから、聞きたいことがあるんだけど──」

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