表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
どうせみんな死ぬ。  作者: 桜愛乃際
第一章 ~願いの手紙~
185/315

6-18 慰めてあげたい

 バッサイと呼ぶ方が面白いので、バッサイと呼ぶことにした。


「バッサイは、どうやって角と尻尾をしまえるようになったわけ?」

「あア? 角は二本とも折れた。尻尾はちぎった」

「尻尾と喧嘩でもしたの?」

「いや。仲はそれなりにいいつもりだったンだが、人間の兵士に掴まれてなア、ヤバそうだったからちぎった」

「ふーん。あんたも辛かったわね。泣いてもいいわよ」


 そう言うと、バサイは少し、面食らった顔をして、


「──ガハハッ! まさか、こんなロリに慰められる日が来るとはなア!」


 なんて、一人で楽しそうに笑った。


「ろり? お姉ちゃん、ろりって何?」

「さあ……?」


 私とまゆは、顔を見合わせた。すると、急に笑い声が止まった。


「おめエら、歳いくつだ?」

「あたしはこの間、九歳になったわ。あともう一つで十歳よっ」

「次で十一だよー」

「そうか。……小せエなア」

「ちっちゃくないわよ!」

「まなは十分、小さいよ」

「ちっちゃくない!」


 バサイは目を細めて、私たちを見つめていたが、やがて、私のところにやってきて、角を掴んで体ごと持ち上げる。


「ひゃあっ! 高ーい!」

「よし、生えてるな」

「……何の確認?」

「いンや。掴みたかっただけだ」


 そうして、すぐに私は降ろされた。それから、バサイは私の尻尾を掴むと、


「いッてエッ!?」


 尻尾にぷすっと刺されていた。


「こら、尻尾! 人を刺しちゃダメでしょ?」


 尻尾はバサイを威嚇しているようだった。バサイは刺された手を痛そうにさする。


「凶暴な尻尾だな……。さて、どうしたもンか」


 バサイの説明によると、どうやら、尻尾をしまうと自動的に角も引っ込む仕組みになっているらしい。


「──体が痛てエとか、重い感じがするとか、目眩がするとか、そういうのはねエか?」

「ええ、ない、と思うけど……」

「まだ若エからなア。──まア、ここで匿ってやれンのは、せいぜい、一週間ってとこだ。それを過ぎたら、容赦なく追い出す」

「一週間かー。この子、だいぶ強情だからねー。そんなにすぐには、しまえないかも」


 まゆは私の尻尾を撫でる。まゆだけは刺したことがない。尻尾もまゆのことが好きらしい。


「お姉ちゃんからお願いしてくれたら、引っ込んでくれるかもしれないわね」

「そう? 尻尾ちゃん、少し、引っ込んでみて?」


 すると、尻尾は体をくるっと丸めて、疑問符の形になった。どうやら、引っ込み方が分からないらしい。


「引っ込んでくれないと、すごく困るの。だから、お願い?」


 私が頼むとそっぽを向かれた。嫌われている。


「まあ、一週間あるから。頑張ってー」

「うえぇぇ……? 手伝ってくれないの?」

「まななら大丈夫。諦めなければ、絶対、なんとかなるから。ね?」


 そう言って、まゆは私の頭に手を置いた。


 ──諦めずに頑張ろう。私はもっと、外の世界を見ていたいのだから。


「うん、頑張る!」

「よしよし、いい子」


 それから、息を止めたり、全身に力を入れたり、押したりしてみたが、簡単にはいきそうになかった。


 そうして私は、いつの間にか眠ってしまった。ここまで歩いてきたから、きっと、疲れていたのだろう。


「た、すけ……」


 そんな声が、遠くの方で聞こえたような気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ