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ヤバい奴らとヤバい生活 in 異世界  作者: バウム
第一章 神々の襲撃編
7/40

朝ヂュン

 


 ヂュンッ



 ヂュヂュンッッ



 ヂュインッ




「ふわぁ〜ぁ…」



 魔王城、魔王の部屋。

 その部屋の壁際に設置されたフワフワの漆黒ソファの上で、おれは目覚めた。

 久しぶりに、ちゃんと寝れた気がする。

 この世界に転生してから四日くらい経ったが、昨日この魔王城に来るまでは、ずっと黒い森の硬い地面で寝ていた。

 勿論熟睡など出来ず、寝不足になった。

 まぁ、念じると出る黒球を吸収すると、すぐにめちゃめちゃ元気になったわけだけど。


 思えば、この世界へ来てから、あまりくつろげていなかった。

 転生したと思ったらつい女神をやってしまって、逃げようとしたら空から落ちる。更には武闘派の神の追撃も食らった。

 ………自業自得の極みだが。

 まぁ、大変だったのには変わりない。

 それを考えると、異世界のことを聞けば話してくれる魔王が傍に居て、フワフワのソファも貸して貰っているこの状況はとても安らかだ。

 まして今現在。気持ちのいい朝。

 小鳥のさえずりと共に起きる朝は、なんて清々しいのだろう。

 まともな生物が居ないこの魔王城でも、小鳥の鳴き声は聞けるのだなぁ………。



 待て。

 小鳥なんて絶対居ない。

 寝惚けていた。

 よく聞くと、チュンチュンではなく、ヂュンヂュン。

 小鳥のさえずりではなく、レーザーの走る音。



「なにごと!?」



 ガバっと起き上がる。

 すると、一面暗黒だった部屋の中は異様な光景に様変わりしていた。

 おれが目覚めがてらに聞いたヂュン音は、レーザーで正解だったらしい。

 部屋中に、レーザーで焼かれた痕跡がある。

 非常に高温なのだろう、黒い壁や黒い床を通ったレーザーは、赤白い熱の線を引いていた。


 部屋を観察していると、窓から真っ黒い何かが勢いよく部屋に入り、おれの右方にドガァンッと音を立てて突っ込んだ。

 窓は開けてないのに、音がしなかったな…と思ってそちらを見ると、既にバキバキに割れた窓。

 その窓枠を、外からぬっと出てきた白い手が掴んだ。

 その次に出てきたのは、顔。

 髪の毛は生えておらず、血が通ってないなんてレベルじゃないほどに真っ白な顔だ。

 加えて、本来なら目と鼻と口がある部分に、まん丸い穴が空いている。

 不気味だ。

 しかし、この異常な白さには覚えがあるのだ。

 おれが最初に、この世界で出会った者ーーーーー




「神、か?」




「その通りよ」


「!」



 見れば、先程部屋に突っ込んできた黒い物体が喋っていた。

 というか、魔王だった。

 全身ボロボロで、頬にはあのレーザーを掠めたと思しき傷がある。

 窓枠から覗いているあの神と、外で戦っていたのだろう。

 そいつに吹っ飛ばされて、勢いのまま部屋に突っ込んだというわけだ。


「大丈夫か?」


「ええ。傷のことであれば心配は要らないわ。魔族は、魔子さえ足りていれば身体の傷が自然と回復するの」


「この部屋の惨状は?もしかして寝込み襲われた?」


「いえ、朝よ。私が起きたのはついさっき。光線の気配で目覚めてすぐに防御したわ。何発も光線を受け流したせいで、部屋中が焼かれちゃったけれど」


「目覚めてすぐ防御体制って、すごいなおい」



 というか、光線って単純に考えて光の速度だろう。

 そうじゃないとしても、とんでもない速さだってのは分かる。

 それを、寝ている最中に察知して即座に反応・防御って、こいつ実はデキるヤツなのか。

 いや、そもそも忘れてたけどこいつ魔王か。

 やっぱり魔王だったらそんくらいするのだろうか。



「舐めないで。私は歴代最強と言われた魔王なのよ?まぁ神と勇者の挟撃には負けてしまったけれど」


「その最強の魔王さん、苦戦しているようだけど」


「うるさいわね!相性が悪いのよ!あいつは神智一廻、《神なる怒り》ゼオグリフ。私の獄炎に対抗出来る唯一の柱神よ」


「ほうほう。また色々出てきたな。神智一廻ってのは、あれか?昨日言ってた『魔導廻級』と同じ感じか?」


「ええそうよ。神智廻級。これは神族の強さを示すもの。魔導廻級っていうのが、魔族の強さを表すものね。数が少なくなるほど強いの。神智一廻は、今のところ神界に十数人しか居ないわ。つまり、神の精鋭のうちの一人ってことよ、こいつは」


「《神なる怒り》とかは何となく分かる。二つ名だろう。けど、お前の獄炎ってのが気になる。得意技か?」


「昨日、言い合いになった時に貴方に浴びせた炎よ!ちょっとやり過ぎた、って冷や汗垂らすくらいの威力だったのに、貴方に全く効いていなかったのよ?いくら魔子量が多いからって、獄炎が通じないとは思わなかったわ…」


「ああ、あの真っ黒い火か。まぁ気にするなよ。そういう日もあるさ」


「一度でもあっちゃいけないのよ!獄炎は魔子を灼き尽くす炎。防御魔法も魔法ごと灼いてしまうから、絶対に相手を死に至らしめるの。魔王の才能を持つ者が、更に努力を重ねてやっと使えるようになる魔法なのよ」


「お前そんなのおれに撃ったのかよ!殺す気か!」


「貴方ほど多くの魔子を持っていれば、獄炎が伝播する前に効果が消えるから大丈夫だと思ったの!無限の炎とも呼ばれるけれど、その実時間経過で消失するのよ。ただ時間経過まで耐え切れずに対象が燃え尽きちゃうだけで」


「とりあえず凶悪な魔法ってのは分かった。で、それがあの神…ゼオグリフだっけ?には効かない、と。」


「神たちは『加護』っていう自動防御魔法を常に張り巡らせていて、そもそも攻撃が通らないの。通るとすれば、神性を纏った力か、加護を一時的に破壊する魔法だけ。更に厄介なことに、神智一廻の神は、一人一人加護に特性があるの。あのゼオグリフは、炎系魔法を()()()にする加護を持っているようなの。私の獄炎より、あいつの加護の方が強いということね。腹立たしいわ!」



 あれ…?

 ヴォルテノンには、おれの攻撃が通っていたようだけど…。

 おれは神族でもないし、加護を破壊する魔法なんて知りもしないから…

 まさか、あのヴォルテノンは加護を持っていない、雑魚兵なのか。あれが雑魚…?

 確かに攻撃はおれにほぼ効いてなかったけど、相当強い威力だったハズだ。

 なんか自信無くなってきた。

 うむむ…取り敢えず置いとこう。



「んで、その魔王特攻のゼオグリフさん、さっきから窓覗いてるだけでずっと動かないんだけど。何あれ」


「貴方を警戒しているのだと思うわ。気付いてなかったの…?貴方も最初あの光線を撃たれてたわよ。私はその時起きて防御出来たけれど、貴方はモロに三発食らっていたわ。と言っても、心配無用だったようね」


「えぇ…あれ食らったのかおれ…どこも痛く無いんだけど」


「あの光線は、凝縮した魔子をものすごい威力で放つだけの魔法なのよ。私の獄炎すら効かない貴方には、ただの魔子が高速でぶつかっても何ら影響が無いのでしょうね」


「要約させてくれ。つまりおれはあいつを容易にやれる、尚且つあいつは敵なんだな?」


「変な要約ね…。敵なのは考えなくても分かるでしょう」


「てかさ、何でおれに早く言わなかったの。おれを起こせばすぐに終わったのに」


「私はあいつの加護を突破出来るほどの獄炎を使えるようになりたいの。無敵の獄炎を。その為に、あいつと戦ってその加護を解析しようとしたの」


「別にそんな事しなくてもいいじゃん、あいつ以外には効くんだろ?」


「いいえ。神智一廻には、その上が存在するの。そいつらは、今の私の獄炎じゃ死なない。あのゼオグリフは、柱神の中で唯一獄炎に対抗出来るというだけ。柱神より上の存在は、格が違うわ」


「柱神ってのは…」


「十数人いる神智一廻の中で、強さの序列が高い方から数えた六人のことよ」


「なるほどなるほど…」


「私の目標を達成するには、柱神より上の神々に対抗する力が必要なの。だからここで獄炎を強化しておきたかったのだけれど…」


「無理そうなのか?」


「加護の仕組みを解析しようとしても、よく見えない。恐らくは、神性を纏った機構なのだと思う。邪性の眼では見通せない。正直言ってこれ以上は戦うのは無駄」


「じゃあつまりあいつはおれの自由にしていいと」


「何か言い方が引っかかるけれど、そういうことよ。早いところ倒して欲しいわ」


「確認だ。あいつは敵、あいつを殺しても咎められない。これは確かか?」


「さすがに神々は怒るでしょう。同胞を殺されるんだもの」


「なんとか神を怒らせない方法って無いか…?」


「正当防衛だと証明すれば許してくれる、公平な立場の神も居るには居るのだけれど…貴方、神とどうしたいのよ?」


「出来れば仲良くしたい!けれど、殺させて欲しい!」


「…貴方、殺しがしたいの……?」



 あ…やっべ。

 つい本音を漏らしてしまった。

 これは完全に引かれたな。

 ふと、前世でカツシにおれの性質を暴露したときのアイツの反応がフラッシュバックする。

 あれでおれが傷付いたわけでは無いが、あの反応は拒絶であり、おれの望むものではないという事はハッキリしている。

 やらかしたな。

 こうなったら、もう遅い。

 ここから関係を巻き戻すことは、多分不可能である。

 冗談だと誤魔化すことは出来るが、今後も行動を共にする上で少しでも片鱗を見せれば冗談では無いと確信を持たれるだろう。

 友好関係を保てないとなった以上、目の前にいるこの女はおれの解剖欲の対象でしかない。

 そこで木偶の坊になってる神をやったら、次はこいつだ。


 なんて思って魔王を見つめていると、彼女は口を開く。




「ふぅん、そ。だったら、公平な神に仲裁して貰って、和解するしか無いわね」




 おや?

 何だか薄い反応。

「殺しがしたいの?」という問いに対して、おれは返答せずこいつの目を見つめるだけだった。

 多分YESと捉えられただろう。

 それでこのリアクションか。



 少しホッとしている自分がいるのに驚いた。

 確かにこいつとの関係が悪化しなかったのは良かったが、関係が壊れたら壊れたでこいつを開くのも楽しみだと思っていたのだ。

 だが、この安堵感。

 友好関係を保てたことに対する、安心。

「おれは狂っている」だの何だのと語ったおれだが、実のところただ友達が欲しいだけの高校生だったのでは?と思わせるような感情だ。


 異世界。

 常識が違う世界。



 何かが。

 おれの人生の何かが変わる、そんな気がした。




読んで下さる方が増えていく…。至上の喜びです!


さて。

やっとこの物語の流れが見えてきました。

主人公が、自分を受け入れてくれる人と関わることで、今後どのように変化していくのか。

刮目せよ!です。

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