表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヤバい奴らとヤバい生活 in 異世界  作者: バウム
第一章 神々の襲撃編
3/40

はじめての襲撃

 


 目が覚めると、全身に痛みが走った。



 おお。久々にまともな痛みを感じた気がする。

 とは言っても何かがおかしい。

 何だ、この違和感は?

 痛いってこと自体が問題なのではない。痛いには痛いが、正直言って大したことは無い。



 そうだ。()()()()()()()()、のだ。



 仰向けになって大の字に倒れている今、おれがさっきまで居た神々の国が見える。

 正確には、空に広がる雲が見えていて、その雲の先に神々の国があるのを知っているだけだが。



 そう、雲。

 雲の高さから落ちたのだ。

 おれの元いた世界とは雲の高さが違うかもしれないが、あちらでは確か地表から雲まで何kmという距離があった。

 こちらでも同程度離れていると考えると、おれは何kmという距離を落下してなんの抵抗もなく地面に叩きつけられたのにも関わらず、()()()()()()()()と言える程度の痛みで済んでいるのだ。


 明らかにチート能力の影響である。


「無限の耐久」という能力が、神々の淵で提示された石版の中にはあった。

 その能力を得ることができたようだ、と思った。

 しかしよく考えると、それが選ばれた理由が分からない。

 神々の淵から逃げ出す際、石版を幾つも盗んだ。しかし結局、落下中に全部どこかにバラ撒いてしまったのだ。

 ゆえに、今おれの手元には何も無い。


 そんな状況において、圧倒的な耐久力を身につけている。

 これは異常だ。

 いや、というかそもそも、「無限の耐久」は能力保持者に害を及ぼす物理干渉を一切遮断する、的な能力だったから、高所から落下しても痛みすら無いハズだ。



 ってことはつまり。

 おれの体が、アホみたいに頑丈になってるってことだ。



 うーむ。

 ま、理由を考えても仕方ない。

 おれはまず、落下時に落としてしまった能力石版たちを回収することを目標とした。



 周囲を見渡してみる。

 何やらそこらじゅうに禍々しい雰囲気が漂っている気がする。

 地面は黒々とした固い素材。コンクリートみを感じるが、ひび割れが酷い。

 おれの周りには、見渡す限り木が生えている。それらも黒い。

 葉っぱは紫だが、非常に濃いため黒っぽく見える。


 どうやら森の中に落ちたらしい。

 とんでもなく禍々しい森の中に。

 察するに、きっとここは「魔界の森」とかそんな所だろう。



 魔物とか出てきたら是非とも中を見てみたいな、とか思いつつ適当な方向に歩き出そうとしたその時。



 ドズゥゥゥゥンッッ



 と、轟音を鳴らしておれの後方で地面の破片が舞った。


 何か滅茶苦茶重いモノが落ちてきたらしい。

 何が落ちたのか見ようとするが、真っ黒の砂埃でよく見えない。

 じーっと目を凝らしていると、突如としてその砂埃から巨大なモノがこっちに飛び出してきた。



 あ!

 こいつ、女神の死体の第一発見者だ!



 そう、砂埃から飛び出してきた巨体、それは神々の淵にておれが女神を殺したことを知った最初の神(推定)。

 女神の居ない神殿を呆然と見つめていた、大男だ。

 それが、こちらというかおれに迫ってきている。

 腰あたりに控えた拳はグー。

 おれをボコすつもりだ。



 ヤツのパンチが届く範囲に入った瞬間、カウンターを取ろうと構えていたおれの体はぶっ飛ばされた。

 木を何本もなぎ倒しながら吹っ飛ばされ、ようやく地面に落ちる。


 このパンチ、痛い。

 神の国から落下したときより痛いぞこれ。


 しかし、生憎と出来たのは痣くらいだ。

 今すぐ反撃を……と思った時にはもう遅い。

 地面に倒れていたおれに馬乗りになり、神(推定)がとんでもない速さで連続パンチを繰り出してくる。


 いたたたたたた。


 やばいな。

 手も足も出ない、なんて状況を物理的に初めて味わってる。

 殴り返そうとするとその腕を殴られ、キャンセルさせられる。

 三メートルもある巨体に乗っかられてるせいで、下半身も微動だに出来ない。

 殴られまくって痛いけど、体の損傷はやはり痣ができる程度。つまり膠着状態だ。

 こうなったら仕方ない。やけくそだ!



「おらっ!」



 腹筋に気合いを入れて、一気に上体を起こす。

 だが目的は起き上がることじゃない。

 頭突きだ。

 高速のパンチは見極め不可能だが、その拳に頭突きを当ててやれば多少は鈍ると思ったのだ。



 バギャッ



 すごい痛そうな音がして、おれの額に強い痛みが走る。

 神(推定)が馬乗り状態を解いたため、おれの体がフッと軽くなったので、起き上がって自分の額の無事を確認する。


 結構血が出てる。マジか。

 てかなんか刺さってね?


 抜くと、それは血に塗れた白く硬いモノ。

 これは…骨か!

 人間のものより大分デカいが、多分指の骨だ。

 これはもしかして…?


 そう思い、前方に立つ神(推定)を見ると、険しい顔をしてた。

 なんと言ったって、右手が凄いことになっているのだから。

 おれの頭突きをモロに食らったのだろう、ぐちゃぐちゃになった右の拳は血まみれで、所々骨が突き出てしまっている。

 相当の威力を持つであろうあいつのパンチ、それをまともに受けても痣しかつかない程の耐久力をおれはもっている。

 その硬さを頭突きで思い切りぶつけられれば、ああなってしまうのは仕方ないのだろう。



 さすがにあれは痛いな。ちょっと申し訳無い、なんて呑気なことを考えつつ、警戒して構える。



 が、神(推定)は急に戦闘態勢を解き、喋った。



「今はまだ届かぬが、いずれ貴様を排除する。覚えておけ、我が名はヴォルテノン」


「あ、うん。なんかごめんね」



 そう言ってこちらを睨み、ヴォルテノンは空へ飛んで行った。

 それにしても、強いヤツだった。

 単におれに戦闘技術が無いだけかもしれないが、やけくその頭突きが当たらなかったらあのままタコ殴りにされ続けていただろう。

 が、多分もう大丈夫。

 あの状態が膠着したって何の意味もないことは、あいつも気づいたらしい。



 ここで、おれは気付く。

 知らぬ間に、急に申し訳無い気持ちが高まってきたのだ。

 先程、反射的に「ごめんね」と謝っていたことからも、おれがまともな人間らしい感性を得ていると証明できるのではなかろうか。


 おれは出来るなら、神族とやらとも仲良くしたい。

 死体は開かせて貰うかもしれないけど、生きているうちはちゃんと友好を保ちたいのだ。

 そんなことを、転生から時間が経って困惑が冷めたので、冷静に考えることができた。

 だから、ちゃんと謝ることにする。

 あのヴォルテノンはおれのことを排除するとか言ってたし、きっと相当怒ってるのだろう。

 女神をやってしまったことをしっかりと謝って、神たちとは親交を深めたいな。




 そんなわけで、おれは出来る限り殺しをしないと決意し、能力石版を探しに出たのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ