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ヤバい奴らとヤバい生活 in 異世界  作者: バウム
第一章 神々の襲撃編
23/40

村での日々 〜獣王の意思〜

 




 そういえば、と。

 今まで何度も後回しにしてきた疑問を今明かしに行こうと思う。


 それは………




「ラミィが貴方を名前呼びする意味…?」




 そう。

 ラミィがおれのことを「トモ」と呼ぶ、これはセレネリアの反応やラミィ自身の言葉から、彼女にとって非常に大きな意味があると分かる。

 一度おれは、名前呼びは婚姻を結ぶ意思の代わり…つまり遠回しな告白であると推測し本人に聞いてみたのだが、不正解だった。

 挙句の果てに、恥ずかしいから正解は魔王に聞けと言う始末。

 恥ずかしいといったら基本愛の告白だろうと思うのだが…ラミィ的にはそれは恥ずかしいことに入らないのか。


 というわけでその後魔王のところに駆けつけたわけだが、村が大変なことになっていたため聞く機会を逃してしまったのだ。



 それを、村騒動が落ち着いてやっとセレネリアに尋ねることができた。




「本人は教えてくれなかったの?」



「恥ずかしいからレナに聞いて、だとよ。んで…どうなんだ。名前呼びは何を意味するんだよ」



「まぁ、ラミィが私に聞けって言ったなら…いいわ。


 獣族にとって、名前呼びは…………」




「なんの話してるの」




 セス太の相手を一旦止めて来たらしいラミィは、感情の読み取れない薄い顔でやってきた。

 この獣娘…割といつも無表情だし喋り方もちょっと淡白だし、これで獣族の王なんてやってこれたのだろうか。

 というかそもそも、王だというのに大した理由も無く国を留守にしている現状はいかがなものかと思う。

 まぁおれは帰って欲しく無いんだけど。


 それはともかく、ラミィが来た以上話は打ち止めか…と思いきや。




「ラミィ。今、彼に名前呼びの意味を教えようとしてたとこよ」



「……そう」




 おれの顔を見つめて動かないラミィ。

 あれ。

 自分で言うのは恥ずかしいのに、誰かに言わせる場合に同席するのはオッケーなのか。


 …いやいや、本人が良いなら良いとしよう。

 今はまず名前呼びの意味だ。

 果たして、恋愛関連のこと以外で恥ずかしいものとは何か。





「獣族にとっての名前呼び、それは……




 服従の意を表すのよ!」





「…………はい?」




「簡単に言えば『貴方の奴隷になります』ってくらいの意味があるわ。獣族は基本、婚姻関係を結ぼうが相手のことは愛称で呼ぶの。名前をちゃんと呼んだら、それは完全服従の意思を示すことになる」



「……………はい………?」




 隣にいるラミィを見やれば、こちらから目を逸らして顔を隠している。

 ただ、耳が真っ赤だ。

 超恥ずかしがっているらしい。



「………文化の違い、か…?」



 獣族はプライドが高い種族なのだろうか…恋愛云々よりも、相手にひれ伏すことの方が恥ずかしいとは。

 まぁ確かに、初めてちゃんと会話をした時は癖だとか言ってマウンティングされたからな。

 相手より上の立場にいることを必定とする欲望か何かがあるのかもしれない。

 そんなやつが自分から下の立場を認めるというのだから、羞恥心を覚えるのも分からないことは無い……と、思ったり思わなかったり。




「…トモの肉、凄いし…あとトモには力で敵わないから、もう認めるしかなかった」



「つっても何だ…奴隷って言ったか?さすがに大袈裟じゃ」



「もうラミィは一生トモのだから。トモの肉無しじゃ生きてけない」




 おいこれもう依存性と化してるんじゃないか。

 魔子が多量に含まれた肉は中毒性を帯びるとでも言うのか。

 何にせよ一生一緒宣言されちまった。

 というか未だに名前呼びが服従を示すの意味分からん。




「そういうわけよ。ちゃんと考えなさいって言ったけれど、ラミィに離れる意思が無いようだしこの子を携えて生きてくしか無いわね」



「急に言われても」



「しっかり守りなさいよ」



「まぁそれは当然だけどもさ」




 想像とあまりにも違いすぎたラミィの名前呼び。

 立派なヤバい奴であるラミィと関係を保つ口実が出来たのはいいが、奴隷なんて言われたらちょっとビビる。

 好き勝手使えるような響きだからな。

 あまり勝手が出来ないよう友人としてありたいのに、奴隷宣言なんてされたらおれの気の赴くままに使ってしまいそうだ。

 さすがに度の過ぎることはやらないと思うが…気をつけよう。



 それはともかく、ラミィは何であろうと一緒にいてくれることを確約してくれたわけだ。

 これは喜ばしい事実である。

 と同時に、まだラミィにおれの性質を暴露してなかったことを思い出す。




「ラミィ」



「なに」



「実はおれ、モノを解体したい欲が凄いんだ。生物とか、人も例外じゃない。中身が気になったものは、状況とか判断しつつだけどつい開いてしまう。この世界に来た時も、女神を殺して解体しちまった。もしかしたらお前のことも我慢出来ず開いてしまうかもしれん。どうだ?」



「どうだって、なにが」



「拒むか?」



「ラミィはもうトモのものだから、変わらない。そもそも、見境なくやるわけじゃないんでしょ。あと、血を見たいのは、ラミィだっていっしょだし」



「おれは血を見たいわけじゃないんだけどな…。まぁ何にせよ、ありがとうな」



「ん…」



 ふわふわの猫耳が生えた頭を撫でる。

 カツシやセレネリアに暴露する時とは全く違い、さらっと済ましたが…特に何も思われなかったようで何よりだ。

 セレネリアに諭されてから、本当に考え方を変えることが出来たから良かった。

 カツシに否定された辺りのおれなら、ラミィに打ち明けることすら躊躇していたかもしれん。

 この魔王には頭が上がらない。




「ま、今後もよろしくってことだな」



「うん」




 頭を撫で続けていると勢い良く尻尾が回り出す。

 あれ、それ犬じゃね…?


 ………………あら。




「犬の尻尾…………?」




 撫でられて踊るように回る尻尾、それはよく見れば犬のものである。

 更に言えば、先程猫耳だと思って撫でていたのは猫のそれとは違った。

 猫耳に猫しっぽという生粋のネコ娘は、あろうことかイヌ娘に様変わりしていたのだ。




「??????????」



「あぁ……気付いてなかった?今日の朝には変わってたわよ」



「いや、気付いてない云々は別として…えぇ…?」



「ラミィの家系は、一定期間を経ると特徴が変化するの。私が前会った時、ラミィは羊の獣人だったわ」



「なるほど?めちゃくちゃ面白い身体してんな…にしても訳が分からないんだが。どういう仕組みだ?気になる」



「ちょっと…絶対傷つけないでよ」



「解体するつもりは無いけど……めちゃめちゃ知りたい」



「《獣淵》が関係してるとだけ伝えておくわ。あとは未解明」



「なるほど…ここでも《淵》か。俄然気になってきた」




 いやはや、まさかラミィがランダム獣人だったとは。

 何だランダム獣人て。

 どんな仕組みか予想が付かないものはこの世界に来てから色々あったが、ランダムで獣の部分の特徴が変わるのは殊更意味分からん。

 くぅー…解体したい。

 ラミィの一族はその特徴を持つということだから、ラミィの血縁の誰かを…いや駄目だ。王族だろうし。

 ままならぬものである。



 ともかく新事実も発覚し、ラミィのクセの強さというか面白い点が増えた。

 これは正式にヤバいパーティのメンバー入りということで良いだろう。奴隷になっちゃったし。

 これからは、ラミィがどんな動物になるかを楽しみに生活していくとしよう。









1000PV突破致しました。

感激がすごいです…!

その反面、拙い文章と練り切れていないストーリーを晒してしまって少し恥ずかしいです…。

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