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ヤバい奴らとヤバい生活 in 異世界  作者: バウム
プロローグ
1/40

暴露

 


  吉田友雄、17歳高校生


  おれは、狂っている。












  ーーーちょっと待って。

  そっとブラウザバックしないで欲しい。

  何だよただの厨二病かよ、とか思ったでしょ。

  いや、待って。待ってくれ。

  一旦おれの話に耳を貸してくれ。



  おれは、それなりに頭が良いと思っている。

  だからこそ、自分が通常の人間とは違う感覚と思考をしてるって幼ながらに気付くことができたんだ。



  何が違うかっていうと、まず感覚的な面として、痛みに鈍い。



  5歳の頃、神社に続くとてーーも長い階段を、誤って踏み外して全部転げ落ちたことがある。勿論全身に深い擦傷を負い、血まみれになった。骨折も多かったらしい。

  だが、おれは特に大きな痛みも感じず、平然とそのまま帰路についたのだ。

  最近調べてみたが、どうやらそういう病気らしい。多分生まれつき。両親からの遺伝ではないようだ。

  痛みはほぼ感じないが、骨折してるのにも関わらず普段通りの動きをしたからだろう、その時の骨折は完治に相当の時間が掛かった。


  そんでもって、思考的な面でおれが通常の人間と違う点。

  既にお察しの聡明な読者もおわせられるだろう。

  人を傷つけることに躊躇が無いのだ。

  世間一般で、サイコパスと呼ばれる人間の典型的な例。

  でも正直、人を傷つけるのに躊躇わないってのは大した問題じゃない。本当におれの人生を狂わしているのは、もうひとつの性質。



  知りたいと思ったモノを、解剖・解体せずにはいられないのだ。



  これまた、典型的なサイコパス、それかシリアルキラーと呼ばれるヤツだ。シリアスキラーだったか?シリウスキラーだっけ?忘れた。

  とにかく、小さい頃から虫だの動物だのを見つけては開いて中身を調べていた。機械とか道具とかもその対象であった。

  無論、その興味の対象が人間に行くことは必然。


  しかし!しかしだ。賢きおれは、それが社会的にまずいことを理解し、その欲求を我慢することに成功しているのだ。チョー理性的である。

  それで言ったらシリアルキラーはおれには当てはまらないな。誰もやってないし。二度ほど、河原に打ち上げられた水死体をこっそり開いて見たことはあるけどね。


  というわけで、付き合ってくれてありがとう。

  これがおれの異常なのだ。

  このおれの性質が、社会から見て「狂っている」と表現するに十分であると、おれは理解している。



  そして更に、おれには特殊な欲求がある。

  もうちょい付き合ってね。



  その欲求とは、ずばり!

  狂ったヤツと関わりたい、というものである!



  狂ったヤツは、見てるだけで面白い。話してても面白い。

  おれは人間だの何だのを解体したい欲求を我慢する代わりに、そういった面白いヤバいヤツを探して関わり合いになることで楽しい日々を送っている。



  そこで出てくるのが、今回の物語の全ての発端である、彼。

  名前は…カツシ。漢字は知らん。苗字も知らん。

  けど、こいつは面白いヤツなのだ。



  始まりは高校の始業式。

  まだ互いのこともよく知らない状況だ。

  それにも関わらず、新入生である彼の名前が呼ばれた時、なんととんでもない奇声を返事代わりに発したのだ。

  もちろん、周囲は閑古鳥さえ鳴かぬほど静まり返った。その中で、同じ新入生だったおれは笑いを堪えるのに全力を賭していた。



  こいつはヤバいぞ、と。



  終業式や卒業式でふざけるヤツがいるのは分かるが、まさか一年の始業式でやるとは。

  それからも、彼はあらゆる場面でふざけた行為をした。そんなヤバいヤツをすぐに受け入れるほどの寛容さは、高校一年生たちには無かった。

  ゆえに、彼が孤立するのには全く時間を要さなかった。

  そんな中、ヤツに近づき友好関係を結んだのがおれだ。

  ヤツは、予想通り普段の会話からも常におどける様子が見られた。ヤツと真面目な会話をしたことが、おれの記憶の中には無い。面白かった。笑えた。

  爆笑してるおれと、話を続けるカツシ。

  そんな二人を見て、段々とクラスの奴らは興味を持ち始め、高二になる今ではヤツはクラスの中心とも言えるほど人気者になっていた。

  常に飄々としていて、いつでもおどけるその人柄は、人間に謎の元気を与えるらしい。


  おれから徐々に離れていったカツシ。

  最初に見つけたのはおれなのに、とジェラシーに駆られた…わけでもないが、ある日、ちょっかいを掛けてみたくなったのだ。


  その日が、この物語の原点となる。




  「なんだよ急に呼び出して!告白か?お前からの告白ならオレはオールコレクト、ラブアンドピースだぜおい!」


  と叫びつつ教室のベランダに勢いよく出てきたカツシ。

  相変わらず言っていることの意味が皆目不明で、おれは笑ってしまう。


  「ああ、告白だ。おれに付き合ってくれ」


  「まぁじか!?でもゴメンな、オレには飼い猫というフィアンセが…」


  「実はおれは、生物を解剖するのが大好きなんだ」


  「………っ」


  カツシ。彼は以前、おれが猫の死体を開いていたところを目撃した。その時は彼も動揺を押し隠してその場を去ったが、それからというもの、おれへの態度が若干よそよそしくなったのだ。

 まあ、本当に若干という程で、そのひょうきんさ自体は大きく変わらない。

  そこで、おれは博打に出る。こいつに全て話してみれば、意外と受け入れてくれるかもしれない。狂ったこいつなら、おれの解剖欲に対し同情し、もしかしたら協力とかしてくれるのでは無いだろうか。

  そんな一抹の希望を抱え、暴露してみる。


  しかし、暴露を受けた彼の目は豹変。どこを見ているのか分からないようなおちゃらけた瞳が、ただ一点おれだけを見つめて、恐怖に染まっている。



  うむ。失敗。



  「ただ、人間に対してそんなことをした事は無い。当たり前だ。命は尊いんだ。でもその欲求はいつまでもおれを疼かせているんだ。分かるか?今まで苦労してきたよ。非常にね。で、我慢出来なくなったわけではめっきり無いんだけれど、何となくだ。お前に打ち明けてみようってなったわけだ。お前なら理解してくれると思ってな。どうだ?」


  捲し立てる。ここでゴリ押せば、何とか挽回できないかな?


  「怖いと思うのは分かる。でもお前を殺すなんてことは絶対にしない。お前はおれの親友だ。ただ受け入れてくれるだけでいい。簡単だ。おれの性質を知った上で、これからも宜しくって言ってくれればいい。たまに相談に乗ってもらったりするかもしれない。でも今までとそう大きく変わらない。おれとお前は友達。そうだろ?」


  顔を青ざめるカツシに、ゆるりと手を差し伸べた。


  その瞬間。


  「やめろーーーーーっっ!!」



  ドンッ



  ヤツが急に叫び出すのは今に始まったことじゃない。普段からそうだ。急にわけの分からんことを叫び出しては、今やそれに慣れたクラスの皆を笑わせている。

  ただ、それがいつもより迫真性を帯びていたのと、おれの胸辺りに物理的な衝撃が加えられた点が、普段と違うのだが。


  ベランダの柵は低い。

  具体的には、おれの腰に届くか届かないかの高さ。

  勢いよく押されれば容易く落下する程だ。

  危険であるゆえに、基本的にベランダへ出ることは禁止されている。

  何となく気分でベランダにヤツを呼んだが、まさかこうなるとは。しくった。

  咄嗟にヤツの手を掴もうとするも、届かない。

  やられた。終わりか。

  うーーむ、無念。







  そんなこんなで、前置きが長くなってしまった。すまん。

  おれの異質性を示し、それによって起きたことも示した。

  だが、まだ何か説明が足りない気がする。


  ああ、そうだ。


  頭から落ちて無様にスクランブルエッグになったおれのその後だ。

  普通、その後なんて無い。

  無いが、おれにはあった。



  目が覚めると、そこは。



  「神聖」という言葉が相応しい、見渡す限り真っ白の、神殿らしき場所。



  横たわるおれの下に描かれた複雑な魔法陣。



  少し離れたところから聞こえる繊細な足音。



  そしてーーーーー




  『ようこそいらっしゃいました、吉田友雄様』



  鐘の音のように厳かな、されど鈴の音のように秀美な声音が頭の中に響き渡る。

拙い文章ですが、楽しんで頂けたら幸いです。

ひっそりと投稿していきます。

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