殿下との出会い
メイドの姿が見えなくなると、空から赤髪の子が降ってきた
どうやら木に登っていたらしい
めっちゃビックリしたけどビックリしすぎて声すら出なかった
赤髪の子はこう言った
「…やっと行ったか」
まるで誰かに追われてるような言い方
私と同い年くらいなのに、テロでも起こしたのかな…
真剣に考えていたら彼が話しかけてきた
「実は俺、さっきの全部みてた」
私はキョトンとしてしまう
さっきの全部みてた… さっき?もしかしてお姉様たちのことかな…
「ひっでーよなあー 少し髪色が違うだけで紅茶ぶっかけるかよ普通ー」
私を擁護するような言葉に心が暖かくなった
「私は白髪ではなく銀髪なのですけれど…白髪に見えちゃうらしいです」
髪を触りながらそう言うと、彼も私の髪を触りだした
「俺は綺麗な銀髪だと思うけどなー」
え、口説いてる?それとも本心?
今まで経験がない状況に心臓のバクバクが止まらない
すると彼はボソッとこう呟いた
「お前知らないようだから言っておくけど、俺この国の第4王子なんだよね」
そう言うと髪を触る手を離した
サラッとすごいことを聞いてしまった気がする
待って待って!?ってことはさっきのメイドが探してた殿下ってこの子なの!?
驚いてキョドっていると彼は吹き出した
「お前おもしろいな!どこの令嬢だ?」
突然家のことについて聞かれた
「アスラン家の者ですが…」
殿下に聞かれたので答えないわけにはいかない
「…ほおアスラン家か。それなら父上も文句は言うまい」
ニヤニヤして何かを企んでいる顔だ
一体この子は何をする気なの!?
そう思っていたら広場のほうからさっきのメイドがこちらへ勢いよく走ってくる
「!?やっべ見つかった じゃーなー!って名前聞いてなかったな!?」
逃げ出そうとする殿下だが、私の名前を聞いてないことに気づき立ち止まった
「私の名前はクロルです!!」
名を告げると殿下はニッコリ笑って走っていった
「またなー!クロル!」
走りながらこちらを向いて手を振ってくれている
手を振り返していると、あっという間に殿下は見えなくなった
「お待ちくださーーい!殿下あぁぁ!!」
メイドの声が裏庭に響き渡る
そういえば・・・殿下の名前聞いてない
広場のほうから賑やかな声が聞こえてくる中、私は裏庭でまだドレスを乾かしていた
表面は乾いても染み込んでしまった奥の方は、中々乾きそうにない
もう私は諦めて、その場に大の字になって寝っ転がった
令嬢がするような行為ではないが少しくらいなら大丈夫でしょ
「いいお天気…」
目を閉じてみる 心地いい風・・・・
気持ちよすぎて寝ちゃいそう と思っていると
人の気配がしたので目を開ける
ファンが私の顔を覗き込んでいたらしい
「……いるなら声かけてくださいよ」
「気持ちよさそうに寝てたから起こしたくなくて…」
と言った 夜中に扉をバーン!と開ける奴がいうセリフだとは思えないが……
「殿下から聞いたよ あの5人のこと」
!?私がお紅茶かけられたこと知られてる〜
「……ごめんね、クロルはあんなに離れたがらなかったのに無理やり離したばっかりに…」
少なからず、責任を感じているようだ
私は立って手を伸ばし、正座しているファンの頭をなでなでした
「・・・・参ったな・・・・」
苦笑いでそう言った
「私はもう大丈夫です!髪や服はベタベタになってしまいましたが……すいません」
いいよそんなこと と言って私たちは少し早いがお屋敷に帰ることになった
最後に殿下へ挨拶とお礼を言いたかったけど、たくさんの貴族に囲まれていたのでお礼は後日することにした
帰りの馬車はファンの膝の上でぐっすり眠ってしまった
お屋敷につくとおじいちゃんとアヤが出迎えてくれた
アヤは私の頭をなでると異様にベタベタしていたので
「何をしたんですかお嬢様!!」
と怒られてしまった
すぐにファンが事情を説明すると、アヤは顔を青ざめてとても心配してくれた
お風呂に入ってスッキリした私は夜ご飯まで寝てしまった
私にお紅茶をかけた5人のご令嬢の家は、貴族の地位を2つ引き下げることになった
ファンはそんなことが出来るほど貴族の中でも高い地位にいるらしい