私に専属のメイドがついた
「うん!いいね〜 可愛いよクロル♡」
と言いながらファンは私の両脇に手を回し、ひょいっと軽く持ち上げて高い高ーいをしてきた
不幸中の幸いと言うべきか、身体が小さくなったから着てた服が布団みたいになってファンに裸を見られると思ったが、服ごと持ち上げたのでギリギリセーフだった
「何するんですか!!元に戻してくださいよー!」
私の声は子どもになりきっていた マジかよ…と思った瞬間
ファンが頬をスリスリしてきた
こいつは猫か!!
かわいいでちゅね〜♡と言いながらスリスリしまくってくる
なんと鬱陶しい・・・
「……いい加減にしてくださいぃぃぃぃ」
と無理やり顔を押しのけると我に返ったファンは ごめんごめん〜と謝ってきた
絶対悪いと思ってないだろこの人…
私はファンに抱っこされたまま『メイド室』という部屋に連れていかれた
ノックもせず扉を開けたため、メイドたちがかなり驚く
3回ノックしろとうるさいくせに…自分はノーノックかよ
ガチめに引いていると1人のメイドがこちらへ走ってきた
若くて可愛い子だった 肩まであるフワッとした黒髪で女の私でも惚れそう…
「ファン様! そちらが例のお嬢様でしょうか?」
ん?例のお嬢様?もしかしなくても私の事・・・?
「あぁ、そうだ 18歳の女性ということだったけど 俺の独断で3歳児にした! 中身は18歳だからそこんところ気をつけてお世話しろ」
なんと!!ファンは私に専属のメイドをつけてくれるらしい
メイドにお世話してもらうの密かな憧れだったから嬉しい…
「かしこまりました。アヤ・ラザーナと申します。本日よりお嬢様のお世話を専属でさせて頂きます」
と、丁寧に説明してくれた
「私は黒瑠です。よろしくお願いします」
と、抱っこされているが頭をペコっと下げる
するとアヤさんは頬を赤らめて私を見つめる
母性でちゃったのかな…と思った
「あ!そうだ クロルの名前なんだけど、ここで住むことになったから次からはクロル・アスランと名乗るんだよ」
おぉ・・・そっか 私の新しい名前はクロル・アスランか…
なんだか、新しい人生が始まるって実感が湧いてきてワクワクするなぁ
ワクワクしてる私はファンからアヤさんに抱っこされ、5分かけて自室に戻った
服どうしよう…これしかないのにサイズがあぁあ!
私がどんよりしているとアヤさんが部屋のクローゼットからサイズが合いそうな服を持ってきてくれた
貴族っぽい服だ 可愛い♡
アヤさんが出してくれた沢山の中からピンクのドレスを選んだ
アヤさんが着させてくれて、全身鏡で見てみると自分じゃないと思うくらいキラキラしていて心の底から嬉しくなった
「アヤさん!ドレス着せてくれてありがとうございます!」
と満面の笑みで言うと、アヤさんはまた頬を赤らめて優しい眼差しで私を見つめる
「さん付けは不要です。敬語も不要です。気軽に話してください」
はーい!ありがとう!アヤ!!と言って私は部屋中を走り回った
この世界に来て、意味が分からないまま話がトントン拍子に進んで正直ガックリしてたけど今は来て良かったと心の底から思う!
うざいと思ってたファンがありがたい神様に思えてきた
3歳児に変えられた時は ふざけんな! って思ったけどよくよく考えるともう1度3歳から人生を歩めるんだから感謝すべきことなんだ!!
全てはイワナガヒメ様のおかげ…
ありがとうございます!私の守護神様!!
ウキウキした気持ちで過ごしていたらあっという間に外は暗くなっていた
そういえばお腹すいたな〜と思った時、扉がコンコンとノックされた
私がどうぞーと答えると扉は開けずにただ一言。
「お嬢様 お夕飯の時間です。ご主人様がお待ちですので食堂へお越しくださいませ」
ほお!夜ご飯かーー!異世界だから見たことないもの出るのかな?
空腹の中アヤと一緒におじいちゃんの後についていくと食堂へ着いた
食堂っていうからバカでかいとこかと思ったけど4人用テーブルに2つの椅子が向き合って置いてあるだけだった
私に気づいたファンはここに座ってー!と促す
座ると、メイドとシェフが出てきてワゴンにのった美味しそうなご飯が運ばれてきた
初めての光景に目をキラキラさせているとファンが
「楽しそうでよかった」
と言った おかげさまで と答えておく
夜ご飯はコンソメスープとステーキとチョコレートパフェだった
不思議な組み合わせだなと思ったが、どれも非常に美味しくてコンソメスープは3杯もおかわりしてしまった
そのあとのパフェは半分も食べられなくて、残りはアヤにあげることにした
「アヤ〜私もう食べられないから残りのパフェ食べて」
私は普通のことを言ったと思うのだが、皆は驚いていた
え?何?私なんかまずいことでも言った?と思っているとファンが教えてくれた
「普通、貴族は自分の食べ物をメイドにあげないんだよ」
なるほど。そこか 確かに貴族が食べ残しをメイドにあげるなんて聞いたことがない
でも、それって偏見じゃない?貴族がメイドに食べ残しをあげちゃいけないなんてルールないのに
「アヤ!私のパフェ食べて!おねがい!!」
お願いならアヤも断れないでしょ〜
アヤはおどおどしながらも、私の食べ残しのパフェを1口食べた
途端に顔の表情がパァァと明るくなった
食べたことないんだろうな〜と、ちょっと複雑な気持ちになった
私は席を立ち、アヤを座らせると自室に戻ることにした
でも…戻れなかった! 私は方向音痴で道を覚えるまでに時間がかかるのだ
屋敷で迷子…どうしようぉぉお