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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
王族国家ラピスグラス
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60.吸引力の変わらない

壁面から現れたゴーレムは「ガーディアン」と言って、トリアリンブルダンジョン特有のトラップなのだそうだ。


薄い魔力が充満しているダンジョンで、人が通ることで魔力の指向性に乱れが生じ、補正する力が働くことで、トラップになるそうだ。


初見殺しだろ、と思っていたが話を聞くとダンジョンのトラップは全体的に同様の動きを見せるらしい。

回避方法は幾つかあるそうで、例えば長時間同じダンジョンに籠り続ける。

そうすれば、自身の魔力の流れとダンジョンの指向性が近しくなるため、トラップが発生しにくくなる。


例えば、先に周囲の魔力を吸収し、別の形で放出してしまう。

それなら指向性のある魔力の乱れは最小限に抑えられる。


ただ前者はどれだけ籠れば適応するかに個人差があり、後者の吸収と放出の魔力結晶は希少なもので、ダンジョン攻略に持ち出すのはなかなか難しいのだそうだ。


「だから、トラップを身構えながら進むしかないの。まぁ即死トラップは余程濃密な魔力じゃないと発生しないから割と安心よ。」


大体魔物の発生も魔力の淀みからだからトラップみたいなものよ、とアニスタさんは言っていた。


魔力を吸収、放出すれば、トラップを気にせず進める…?

つまり、魔力の操作だ。


もしかしたら出来るかも知れない。


「一帯の魔力を薄く出来ればいいんですよね。」

「え、うん。それが出来れば、トラップの発生は抑えられると思う。」

魔眼で見ると、周囲には魔力が漂っている。

その魔力はどこも均一で、腕を振るうと空気の流れが見える。


『魔力吸収』


金属の表面から常に魔力を吸収しているらしく、過去に意識したのは一度だけ。

魔王城地下でリビングナイトの魔力を回収したときだけだ。


肩口から、金属を操り給仕に使うシルバートレイのようにある程度の大きさに広げる。

操っている金属を自身の体の一部のように感じながら、意識を集中し、息をするように周囲の魔力を吸収する。


改めて魔眼で視ると、自分の周辺にあった魔力がきれいさっぱり消え去っていると同時に、さらに外から魔力が流れ込んでくるのも見える。


「キリがないけど、金属を出しながら進めば、トラップは出なさそうだね。」

「ご主人様、後ろ後ろ。」


言われるままに後ろを振り向くと、フェリとアニスタさんが呆然としている。

そう言えば言ってなかったな…。


「お兄さん、それ…。」

「ちょっと色々あってね。」

「そんな説明で納得いくわけ無いでしょ!」

「まぁ道すがら話するよ。まずは広いところに出よう。」


陣形は崩さず、一塊になって進んでいく。

僕が魔力を吸収する役を担っているため、リュカとナツミに周囲を警戒を任せることにする。


もちろん、ナツミには小刀を渡している。


二人に戦闘を任せながら、フェリとアニスタさんに、自分が一度死に、生き永らえるために自分の使い魔であったメタルスライムが命を懸けてくれたこと、お陰でこうやって生きていられることをざっくりと説明する。


「…ごめんね。ちょっと突飛すぎて頭追い付かない。」

アニスタは頭を抱えている。


「わかります。私も未だによく分かっていません。」

レティもあははと笑う。

まぁ僕もよく分かってないんだけどね。


スライムさんが僕を助けてくれた事実だけが残っているのだ。


「ご主人様!下に続く階段がありますよ!」

「主!オレが見つけた!」

「ナツミもリュカもありがとう。みんなで降りよう。」


その後も、ダンジョンは魔力を吸っているからか、元々湧いていた魔物以外と戦うことはなく、さらにはギルドで貰った冊子にある地図がことのほか正確だったため、すんなりと地下四階層まで降り立つことが出来た。


地下四階層に降り立つと、通路の向こうが随分と開けているように見えた。


「主!早く早く!」

「ツムギさん早く行きますよ!」


リュカとアニスタさんがバタバタと走っていく。


「あぁ!先行くと危ないですよ!」

「お兄さん。この先はなんと書いてるんですかぁ?」


ギルドで貰った冊子を再び眺める。


「広い空間があるらしい。レティの実家みたいな感じかな?」

「なんか落ち着くなと思ったら…そう言われればそうですね。」


折角オーガの里から離れられたのに、と小言を言いつつリュカとアニスタさんを追い掛けて行くレティ。


「僕らも行こうか、フェリ。」

「行きましょうかぁ。…なんか夫婦見たいですねぇ。」


フェリが妄想に入る前に合流してしまおう。


ーーー


しくじった…。

ソフィアの眼前には今まで歩いていた道はなく、また追跡していた人影もない。


「…そもそも一人で入るもんじゃないんだよな、ダンジョンって…。」


一人ぼやくが時既に遅し、ここがどこかも分からなくなってしまった。


原因は数分前に遡る。


ソフィアはトラップのゴーレムを、手甲の一撃で核ごと砕いて進んでいた。

条件が同じはずなのに監視対象のツムギ一行から、どんどん距離を離されることに焦りを覚えたソフィアは作戦を切り替え、ゴーレムを避けて進むことにしたのである。


その結果、ソフィアの移動スピードは上がるが、同時にダンジョン内の魔力の指向性が大幅に乱れることになった。

その結果起きた現象が、『転移』である。


魔力によるワームホールが発生し、ダンジョン内のどこかに強制転移するトラップで、高濃度の魔力が乱れた時か、魔力が激しく乱れた時に発生する。


上記のトラップは高速でダンジョン内を移動出来る腕利きか、または下層での探索かでしか発生することはない。


上層階でのソフィアの焦りは失敗だったと言えるだろう。


暗殺などで焦ることは殆どなかったソフィアだが、ここにきて…と言うよりツムギに関わり始めてから状況が悪化することが多い。


「…まぁ不運を嘆いてても仕方ないかぁ…。」


幸い、長期間ダンジョン内で生きる術、所謂サバイバル術も、ソフィアは持ち合わせている。


まずダンジョンのセーフティゾーンを探しだす所からである。


「アイツらはどうしてるんだろう。」


入れ違いになったら困るけれど、接触するわけにはいかない。

取り敢えずはダンジョンからの脱出かと、ソフィアは改めて腹を括ることにする。

彼らの監視が失敗せずに済むことを祈りながら。

レティ「ここで刀は振りにくいですね。窮屈です。」

リュカ「オレも動きづらいから窮屈!」

フェリ「狭いのは好きですねぇ。」


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