表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
王族国家ラピスグラス
46/386

45.潜入:レティシアとルガル、ちょっとライカ

至るところに水溜まりがあり、踏み込むとぴちゃりと音が鳴る。


道では、薄汚れ、ヨレヨレの服を着た年寄り数人が身を強張らせながら、身体を強く抱き締めて眠っている。


所謂、貧民街。

この商業区画の裏通りは農業区画と繋がっており、処理される残飯が比較的綺麗なものであるため、貧民の中では一等地のように扱われている箇所である。


「ルガル、大丈夫ですか?ウェアウルフは私たちより嗅覚が鋭いと聞きました。」

「正直に言うと、既に匂いがわからなくなっている。この状態で、襲われでもしたら咄嗟の対処はできない。」


鼻を突く匂いはレティシアでもツラい。

早く制圧して早く戻ろう。


印の付いていた建物は、詰所と言うと聞こえは良いが、柄の悪い者達のたまり場のようになっていた。

数は十そこそこくらいいるだろうか。


中を覗くと、腕に魔方陣を刻んだ男と目があった。


「あ?ねーちゃん、ここはあんたのような、繊細なお嬢さんの来る場所じゃねーんだわ。」

「それとも、今から大人な会議するんだけど、混ざる?ギャハハハ!」


下卑た笑い声。

耳障りで、癪に障る。


「すまない。この辺りで人探しをしている。知っているものは居ないだろうか。」


ルガルは努めて冷静に応対する。


「人探しぃ?ここじゃ人は居なくなるもんだ。精霊ととっかえひっかえだよ。お前はとっとと帰れよぉ?もうすぐ大人の時間なんだからなぁ。」


ヘラヘラと笑う男達。

ルガルが気持ちを抑えて話しかけているのだ。

私も冷静に対処しなければ。


「あぁ、少し情報を貰えれば良いんですが。レオノール=トラーフェを知っていますか?」


レオノール=トラーフェ。

私の母であり、今まさに捜索中の人間である。


「レオノール…。なんだ、あれのお仲間さんかぁ。」

男の一人がたまり場の奥を見遣る。

見知った顔の男が数人踞るように地面に伏している。

彼らは確かレイナの部下だった…。


事実を視認した瞬間、血の沸き立つ音が聞こえた気がした。


紅血(クリムゾン)


鮮血がレティシアを後ろから包み込む。

鮮やかな紅の鎧を身に纏った直後、半身になり、一歩踏み込む。

「彼らを離せえぇぇぇ!!!」


叫びと共に、地面を踏み抜く。

急激な加速と共に、レイナの部下に蹴りを入れていた男を肘打ちで突き飛ばす。


突き飛ばされた男は倒れ込み、口から血を吐き出す。


「あぁ!?何すんだこのガキ!」

間髪入れず、刀を引き抜く。


「ルガル!」

「合わせる。」


一声かけ、部屋を横凪ぎに大きく一閃。

五人ほどの胴体と下半身が泣き別れる。


「後ろががら空きだなぁ!!」

男の一人がナイフをレティシアに突き立てる。


だが、ガチンという音と共に刃は弾かれ、突き立てた男の腕に衝撃が加わる。


「いってぇ、なんだめちゃくちゃ硬ぇ!」

「後ろががら空きだな。」


『刺突』

ルガルは男の後ろから腕を突き立て、容易く貫く。


「主のスキルで、一番俺に合うものがこれでしたが…ちょっと過激すぎる気が。」

「ツムギさんのスキルならそんなものじゃないですか?」


ヒュンと風を切る音と共に、男の首を落とす。

残りは四人。

「ひぃあぁぁぁぁぁー!!」


堪えきれず、一人が逃げ出す。


『硬化』

スキルの発動と共に、ガコンと嫌な音が響く。


「ルガル、遅くなったなー。」

「期待していない。」

「そう言うなよな。おいらはもう終わったんだし、良いだろ?」

「それなら。レティシアさん、少しは頭冷えましたか?」

「…はい。お恥ずかしい所を。」

「大丈夫です。相談なのですが、残り三人は、生け捕りに出来たりしないでしょうか。」

「生け捕り?」


おっとり刀で駆けつけたライカが首をかしげている。


「情報を聞き出すってこと?」

「そう。絞り込まれた拠点のひとつということは何かしらの情報があるはず。縛り上げて吐かせれば、なにか知ってるかもしれない。」

「そうですね…。やってみましょう。」


三人のうち二人は既に、戦意を喪失しているのか、地面に崩れ落ちて動かない。


「へへ、あっという間だなおい。」

残った一人は腕に魔法陣を刻んでいた男。


魔方陣は魔力が通り続けているのか、光を帯びている。


「食らえよ、弾穿(バレット)!」

言葉と共に男は握り締めた拳を開く。


弾けるように何かが飛び出し、レティシアの左肩に直撃し、反動で半歩後退る。


「何!?」

「おぉーし、いけるぞいける、俺ならいけーーー」


調子が上がってきたであろう男の胸からは腕が飛び出していた。


「この…クソガキ…が…。」

「まぁ、二人居るし、お前は要らないだろう。」


ズルズルと倒れ伏せる男。

地面にへばり付いた時には既に事切れていた。


「よし、こんなものですかね。」

「そうだな。でもレティシアさんはもう少し、その鎧を着けたままにしておくべきだ。安全に越したことはない。」

「そう…させていただきます。」

「えぇー、全然活躍できなかった。」


ライカがぶーぶー言っている。


「逃げたやつは居ないし、助かりました。」

「レティシアさん、ありがとー!それに比べてルガルは…。」

「取り敢えず、二人を縛って商会に戻りましょう。ライカ、レイナさんは?」

「先にトラーフェ商会に戻るって。あ、そうそう、おいら達の向かった場所には亜人の子供が何人か鎖で繋がれてたよ。」


「…奴隷商…。」


レティシアは苦虫を噛み潰したような顔をしている。


「レイナさんもそう言ってた気がする。で、そこで助けた子達をトラーフェ商会に一旦匿うんだって。」

「わかりました。一度そちらに戻りましょう。」

「おいらも一回帰るかなー。」


「あれ?ツムギさんの所には行かないんですか?」

「主の足手まといになっちゃうし。」

「…そう。」


ウェアウルフ三人と主従契約したときの話は軽く聞いていたけれど、ここまで言われるとツムギが何をして三人に力を見せたのか、気になるレティシアであった。

魔物は人より魔力の流れが見えています。ツムギの魔眼よりはぼんやりと、ですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ