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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
王族国家ラピスグラス
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40.闇夜の一幕

「という感じで、主従契約をしたウェアウルフの三人です。」


「リュカです。」

「ルガル…。」

「おいらはライカ。」


三人は三様に哨戒から帰ってきたレティシアさんとレイナさんに挨拶していた。

側には一緒に哨戒に出ていたフェリスさんとフランシスカさんも居る。

フェリスさんはその場に何故か崩れ落ちていた。


三人はウェアウルフらしく、フード付きのローブからは青い耳と尻尾が出ている。

顔は人なのだが、身体などは青い体毛で覆われている。

モサモサしているので、気持ち良さそうだ。

一人ずつ若干毛色が異なるようで、並んでいるとよくわかった。

リュカは薄めの紺色、ルガルは黒っぽい青、ライカは少し黒が混ざったマーブルみたいである。


「主従契約とはなかなか珍しい…。」

フランシスカさんが呟く。


「そうなんですか?」

「最近はとんと見なくなったな。それに亜人と人間の契約ともなれば尚更だ。余程、規格外の力がない限り従者になろうとは思わん。」


そうなんだ。

問題ないのだろうかとリュカ達の方をみると、視線に気づいたのか、リュカはにへらと笑顔を見せている。


「まぁ、当人同士が良いなら良いがな。」


言いつつフランシスカさんは手を振りつつ、早足で去っていく。

何か用事があるのだろうな。


さっきまで崩れ落ちていたフェリスさんが口を開く。


「うぅ、またお兄さんに新しい女が…。」

「人聞きが悪すぎる。」

「でも、フェリというものがありながら…。」

「フェリスさんとはなんの関係もないですよね。」

「やー。お兄さん、冷たいー!」


フェリスさんがじたばたしている。

レティシアさんはナツミと何か話し込んでいるし…。


「私もっとアピールしないと、忘れられてしまいそうで…。」

「実はあたしも最近影薄いんじゃないかなとか…。」

「また、女子会しましょう。」

「作戦会議ですね。」


グッと固い握手を交わすナツミとレティシアさん。

仲良さそうで何よりなんだけどね。


「取り敢えず、三人は後で僕とアニスタさんと哨戒ね。」

「しょーかいってなんだ?」

「襲ってくるやつがいないか見回りましょう、ってことね。」

「わかった!主に付いてく。」


ブンブンと尻尾を振っているリュカ以下三名。

素直に言うこと聞いてくれるのはありがたいけど、契約の効果って訳では…ないんだよな。


「アニスタ!フェリと哨戒変わってくれてもーーー」

「変わったら朝ふらふらになるのは目に見えてる。ゆっくり休みなさい。」

「ゆっくりなんて出来ないよ!もしもアニスタがお兄さんと…はっ、まさかアニスタもお兄さんを狙って…」

「んなわけないでしょうが。」


あちらは大変そうだ。

アニスタはとてもめんどくさそうな顔をしていた。


ーーー


「あの三人の様子はどうですか。」

「思いの外、素直であるようです。」


人影は三つ。

小さな影と大きい影が二つあり、一人はお腹が、一人は胸がふくよかであった。


依頼主とその横に居た少女と『太陽の盾』のフランシスカである。


「すみません、フランシスカ。本来なら彼女らは太陽の盾におまかせする予定だったのですが。そのためにわざわざ護衛まで指名させてもらったのに。」

「問題ありません。最終的に亜人が、人と同じように暮らせる事が最終目的…ですので。ただ主従契約を行えるとは…。」

「私が提案したのです。彼は一方的だった…。いったい何者なのでしょう。」


少女は先ほどとはうって変わって、落ち着いた口調で思案する。

言葉の端々で漏れるのは未知の力に対する恐怖。

それは敵味方関係なく猜疑心を煽るものである。

少女の隣の老人もそれは変わらぬらしく、少女と同様に恐怖を口にする。


「確かにあの男は凄まじい力だった。まるであの時の勇者のよう…。」

「あなた、止めてください。あの異世界の傀儡を勇者などと。」

「すまんな。マルティナ。どうしてもあの時の戦が頭から離れん。30年近くたった今でも。」


夫婦のように話をする幼女と老人。

見た目はまるで祖父と孫である。


「大丈夫です、ベルナール。私が必ず、亜人の国を作り、もう一度魔王を、亜人の盾と成りうる人物を作り出すのです。」


マルティナと呼ばれた幼女とフランシスカのちらりと覗く耳は尖っていた。


「報告ありがとう、フランシスカ。そうだ、アルテイルくんとはどうなんですか?彼はまだ小さいですが…。」

「マルティナ様、部下の恋愛が気になるのですか?」

「それはもちろん。私たちでも子供は数人しか出来ませんでしたもの。それに、私達長命種(エルフ)にとっては、80年ほどしか生きられぬ人は皆幼児のようなもの。幼児を愛することが出来る同胞は貴重なのです。」

「あまり幼児と連呼するのは、止めてくれんかのう。」

「うふふ、私にかわいいと言われないために髭を伸ばし始めたのは知ってますよ。それでもかわいいものはかわいいのです。貴方の何倍生きていると思っているのですか。」


二人がいちゃつき始めたのをみて、フランシスカは報告を切り上げる。


「では、引き続き監視、報告を続けさせて頂きます。あの男の情報も含めて。」

「そうですね。お願いします。くれぐれも私たちの敵に回らぬように。」

「承知。」


フランシスカは闇に紛れていく。


「ベルナール、必ず貴方を再び玉座に戻します。だからもう少し…生きていてください。」

「マルティナが無理することはない。これは人同士の話なんじゃから。」

「私だって、人の王の妃です。他人事のように言わないで、と何度も言ってますよ。」

「…すまない。」

少女は老人の頭を抱きしめる。


「かわいい私のベルナール。貴方が命尽きるその時まで、私は貴方の傍に居ます。だから、凛として居なさいな。魔王を討伐した罪を背負い続ける唯一の王よ…。」


その声は子供をあやすように、優しかった。

人が多い。

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