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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
空中都市ロガロナ
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4.空中都市ロガロナ

剣を振ってみてわかった。

僕には無理だ。


よく考えれば僕は喧嘩もしたことがない。

戦うとか、ましてや魔物を殺す何て出来やしない。


でも、徘徊している魔物をなんとかしないと外に出られない。

そろそろお腹が空いてきた。


スライムさん、なんか出せない?

無理か…

そうだよねぇ。

メタルスライムだもんねぇ。


この部屋になんかないかな。

本を片付けながら、周囲を探索する。


本じゃお腹は膨れない。


書庫だから食べるものは無さそう…

ちょっと待てよ…

ローナちゃんはここに匿われていたんだっけ。


もしかしたら何かあるかも。


書庫は机を中心として、シンメトリーに広がっている。

机の正面は開けた空間があり、さっきまでそこで剣をつくったりしていた。

積み上げられた本が、押されて端の方で山になっている。

壁一面が本棚になっていて、上の方の本は踏み台や脚立を使って取る。

両方木製だったので、そのまま残っている。


ん?

スライムが呼んでる。


なんだこれ。

机の背後に積み上げられた本の裏、本棚の一番下に…扉?


開けると眼下には階段が現れた。

ひんやりとした空気が流れ込んでくる。

奥は暗く、見通しが利かない。


行こうって?

どうしよ。


燭台はさっき吸収したから転写出来る。

火をつけるマッチも机に入っていた。

書庫なのにいいのか?と思ったが、灯りが原始的なようだし、仕方ない。


異世界転生定番の中世ヨーロッパ風ってことなのかも。

技術チートとか、出来ないかな。

金持ちになって引きこもり生活。


…いいな。その辺りを目標にしよう。


とはいえ、じっとしていても仕方ない。

スライムさん、転写お願いしていい?


蝋燭立てて、マッチ…

あ、ありがとう。


メタルスライムは身体の一部を燭台に変化させる。

吸収した燭台は壁掛けタイプだったため地面に置けなかったのだが、蝋燭を立てる部分だけを転写してくれたお陰で、安心して灯りを見ることが出来る。


なるほど、そういうことも出来るのね。

ステータスを見ると、FPが50減っている。

転写を工夫すると消費が激しい。

まだ回復もしてないし、注意して使っていこう。


灯りを階段に近づけると、蝋燭の火が揺れる。

風が通ってる。


入り口は小さい。

まるで子供が入るための場所のよう。

半ローナちゃんも見つかってないし、もしかしたらこの奥に…



隠し通路は階段も壁も石造りになっている。

灯りがなければ、何も見えないだろう。


カツンカツンと音を響かせながら降りていく。

メタルスライムはぽよんぽよんと僕の前を跳ねながら進む。


地球にはもちろんだけど、スライムは居ない。

あるけど、生命体ではない。

菌類で似たやつがいるけど、あのスピードで自分で動いたりはしない。


不思議生物だ。


スライムを眺めていると一番下に着いた。

書斎のような場所と頑丈そうな扉。

書斎机の正面についている窓が開いている。


ずっと開きっぱなしだったのだろう。

窓は押しても引いてもびくともしない。


それよりも。

眼下に広がる景色に僕は唖然としていた。


雲が広がっている。

雲の切れ間に広い大地が垣間見える。

僕が今いる場所は多分…本に書いていた『空中都市ロガロナ』だ。


すごい。

広い海。

鬱蒼と繁った森の木々。

いくつか城も見える。

これがこの世界か。


剣と魔法の世界。


僕を呼んだ魔王はもう居ない。

勇者はどうなったんたろう。


これから何があるだろう。


ワクワクしてきた。

スライムも僕のワクワクがわかるかのように跳び跳ねている。


さて、書斎には引き出しが三つ。

書類が横向きに重ねて入れられそうな引き出しが二つと、縦に重ねて入れられそうな大きな引き出しが一つ。



一番上の引き出しに鍵は…かかっていない。

中には、万年筆と鍵。

インクのボトルはガラスのようなもので作られているが、中身は既に乾ききっている。


一応万年筆のペン先と鍵は金属。

メタルスライムに吸収させる。


ステータスに変動はない。

質量が少なすぎるのだろう。


二つ目の引き出しにも鍵はかかっていない。

中には多くの紙が詰まっていた。


『勇者と相対した時の対処法について』

『各国の王族の対応一覧』

『北部山林の保全に関しての報告』


…お役所仕事か。

どこかの役員会議みたいな資料。

王族は勇者を引き連れて、この城にやってくるのに、魔王は周辺環境の整備とかやってる。


どっちが正義かわかんないな。


一番下の引き出し…鍵がかかってる。


スライムさんさっきの鍵になれる?

頷き転写したメタルスライムを鍵穴に差し込む。


結構固い。

元の鍵のまま開けたら鍵が負けて折れてたんじゃないだろうか。


カチャリと乾いた音と共に扉が開く。

そこにはワイングラスと、もうひとつ鍵があった。

ん?

仕事後の一杯…的なやつだろうか。

つまみとか…ないか?30年経ってるもんな。

鍵か…。


ここに入った瞬間に目に入った扉に目をやる。

真ん中に鍵穴のある鋼鉄で重厚に作られた扉。


スライムに吸収してもらってもいいが、保存のために頑丈にしている可能性がある。

引き出しから出した鍵をスライムに吸収してもらう。


そのまま鍵を転写してもらい、鍵穴に鍵を入れる。

引き出しの時より重厚な金属音と共に鍵が開く。


そこにあったのは、樽とチーズと干し肉。

鋼鉄の扉の向こうは想像通り、食料庫だった。

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