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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
空中都市ロガロナ
31/386

30.あれはだれだ?

「レティシアさん!」


小刀を回収するために、朝寝ていた場所へ戻ると、レティシアさんもその場にいた。

どうやら、紅血(クリムゾン)を使うための刀を置いていたようだ。


「ナツミさん!?ツムギさんは?」

「ご主人様は一人で、雪崩れ込んできた兵士を相手にしています。」

「大丈夫なんですか!?」

「話し合ってみる…と言っていました。時間稼ぎをするつもりなんだと思います。」

「なら早く向かわないといけませんね。」


レティシアさんを連れて、里の入り口へと向かう。

そこには、大の大人が手と足を縛られ、ゴロゴロと転がされていた。


「えと…これは?」

「ひ、姫様。これは、姫様が連れてきたお客人が…」

「これを…ツムギさんが?」


大人が転がされているが、よく見ると誰一人傷一つ付いていない。

後ろ手に腕を縛るように大きな腕輪がかけられている。

足にも同じように、両足を縛ってある。


「流石ご主人様ですね!」

「えぇ…。凄まじいですね。」

「うん。僕もちょっとびっくりしたんだよね。」


洞窟から飛んできた声は、事を成した主、あたしのご主人様、白銀紬その人だった。


「お帰りなさい!何かやっていたんですか?」

「うん。ちょっと転がってるのを放置しておくのも問題かなと思ってね。」


ご主人様が肩口から金属の珠を出すと、転写でみるみるうちに、檻へと変化させていく。

その中に適当に大人を放り込んでいく。

流石ご主人様です。

檻に出入口がありません。

攻め込んできた輩を許す気は無いようです!


「あの、ツムギさん。扉が無いようですが…。」

「あ、しまった。」


うっかりさんだったようです。

それはそれで良いのです。

ご主人様なら何とでも出来ますもんね。


「まぁ、扉はまた後で作るよ。そう言えば、レティシアさん。片角のおじさんにも言ったんですが、まだ里に侵入者が居るかもしれません。ちょっと見て回りませんか?」


むむ、レティシアさんが抜け駆けの気配。

「もちろんナツミも一緒に。」

「ですよね!」

「取り敢えず見て回りましょうか。」


「おい!我々をどうするつもりだ。」

檻の中でおじさんが騒いでいる。

むしろどうされるつもりなんだろう。


「なにもしませんよ。そこで無力感に打ちひしがれてください。」

「なっ!そんな、生き恥を晒させるつもりか…」

「当たり前でしょ。上から言われたことを、ただ実行することが生き恥にならないとでも?」

「もちろんだ。王命は絶対なんだからな。」

「…だから、それが恥なんですよ。ちょっとは自分の頭を使え。」


ご主人様はもう兵士に興味が無いようです。


「レティシアさん、レティシアさん。」

「どうしました?ナツミさん。」

「ご主人様は多分、彼らをどうこうするつもりは無さそうなのですが、捕虜はどのような処置をするんですか?」

「捕虜ですか?うーん、罪人は地上へ落としますね。」

「じゃあ、それにしましょう。彼らを地上へ返しましょう。」


チラッと見ると何人かの兵士は聞こえていたらしく、ガタガタと震えている。


「それも良いけど他に誰か侵入してるやつ、知らないかな。」

「貴様に言う言葉は無い!」

「ありがとう。やっぱり誰か居るみたいだ。」

「なっ、貴様なぜそれを。」


兵士は驚愕の色を隠せずにいる。


「目は口ほどに物を言う…ってね。レティシアさん、ここ以外から侵入できる場所はありますか?」

「ここ以外では、外と繋がっている場所は…。」


レティシアさんは首を捻る。

あたしは先ほど教えてもらった所を思い出す。


「あれ?首飾りを返した場所。あそこは外と繋がっているって言ってませんでしたか?」

「え?あ、でもあそこは壁面に水晶も突き出ていて、誰も寄り付かないですし。」

「まぁ一度向かってみましょうか。どちらにせよ、目的は僕だと思いますし。」


さっき戻ってきた道を再び登っていく。

もちろん、兵士は檻の中に放り込んだままで。


道中で訓練所であった人達に出会う。

「お姉さん!どこ行くの?」


ええと確か…ルドくん…だったかな?

「今からもう一度祭壇に向かうんです。ルドくんは見回りどうですか?」

「ばっちりだよ!チアと家の隙間まで見逃さずに見て回ってる!」

「流石です!その調子でお願いします。」


いい感じです。

ご主人様を狙う輩に安息など与えてあげません。


ルドくんに、引き続きよろしくと挨拶して、ずんずん進む。

一度往復したから、道はバッチリです。


祭壇は変わらずキラキラと空からの光を反射している。

上空の穴から入ってくるのでは、と言い出したのはあたしなので、空の穴をじっと見つめる。


「何もいませんね。ご主人様。」

「誰も居ないですね。ツムギさん。」

「もう降りてきているみたい。多分あいつじゃないかな。」


ご主人様の指す先には、真っ黒な装束を纏っている。

黒いマスクに、黒い頭巾。

上の服は前側が一枚の布のようになっており、左の布が上に重ねてある。

ズボンは足首が括れており、動きやすそうな服装である。


「おおー、忍者だ。ナツミ、忍者って知ってる?」

「にんじゃ?とはなんですか?」

「僕の世界のシーフだよ。魔王様、ナツミの父上も好きになったと思うよ。」


あれが父上が喜ぶのですか?

ふむ、よくわかりませんが、今度やってみましょう。

黒装束のあたし。


「ご主人様は喜んでくれますか?」

「僕はナツミが喜んでくれれば嬉しいよ?」


そう言うことじゃないんですー。


「ツムギさん。私も真似たら喜んでくれますか?」

「え?レティシアさんも?う、うん、楽しいならいいと思うよ?」


絶対ご主人様解ってない!

解ってないと思うのに、レティシアさんは嬉しそう!

納得いきません!


レティシアさん、また作戦会議が必要だと思います。

チョロレティシアさんになっている場合ではないはずです。


「おのれ、魔王の勇者。目の前で見せつけてくれやがって。こちとら、王の勅命で仕方なく仕事しに来てるって言うのに…。この妬み晴らさで置くべきか…俺に対する悪魔のごとき所業…万死に値する。」


あれ?

黒装束さんが、ぶつぶつと言っております。

目も血走っております。


「ご主人様何かやりました?」

「僕じゃないと思うよ。」

「じゃあレティシアさん?」

「私でもないと思います。」

「あたしにも心当たりがありません。」


あたしとレティシアさんは首をかしげるばかりでした。

ご主人様は尚も説得を試みるようです。


「これは冤罪では?」

「うるさいリア充爆発しろぉ!!」


交渉は決裂のようです。

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