表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
空中都市ロガロナ
20/386

20.魔王城地下探索中

結論から言おう。

圧勝だった。


真ん中、左、右と時間差で僕へと飛び蹴りをしようとしてきたグリムラビットに対して、

まず穿雷(レールガン)で中央を狙い打つ。

狙われた真ん中のグリムラビットは宙を蹴り、左へ避けた。

しかし、雷を受けているので筋肉が弛緩し、足が縺れて左の兎と衝突した。


その間に雷により目と耳が潰された右の兎へと、小刀で切り裂く。

マンティコアと比べるのは申し訳ないくらい、あっさりと首を落とす事が出来た。


逆方向へと跳んでいった二羽に、牽制で圧縮した槍を数本投擲する。

大雑把に投げ左右の動きを制限した上で、再度、穿雷(レールガン)を放つ。

一度目に喰らったグリムラビットは躱すが、追随していた兎にヒットする。


左右に動きづらくしたため、回避した兎は上へ跳ぶ。

そこへ小刀を振るう。

少しずれたが、刃は兎を二つに切り分ける。

これで二羽。


その小刀の軌道を確保しつつ、雷で弛緩している最後の一羽の首と胴体を泣き別れさせる。


「すごいです、ご主人様!シーフみたいでした!」


イメージトレーニングの賜物である。

兎は聴覚が優れているイメージがあったので、雷の音で撹乱できないかと考えたのだ。


…うまくいって良かった。


棒を転写して、金属支配で三羽の兎の足を絡めとり、宙吊りにする。

血を抜くのだ。


食べられるものは大事にしないとな。

…マンティコアって食べられたのかな?


「マンティコアは毒性があるはずですし、筋張っていると聞きます。食べない方が良いと思います。」


なら良かった。


地下一階の広場は実験場として作られていたらしく、特にめぼしいものはなかった。


どんどん降りていこう。

地下二階までの階段は、一階層分挟めるのではないかと思うくらい長かった。

地面に降り立つと、やはり大きな扉が目に入る。

ここが食糧庫。


少し重い金属製の扉を開くと、大きな倉庫を彷彿とさせる高い天井と棚だらけの空間。

その棚の上には殆どの何も残っていなかった。


地面には足跡があり、定期的にここへ誰かが来ていたと思われる。


「誰が出入りしていたのでしょう。」

「んー…。警備兵さんとか、城で勤務していた人の服装とか、教えてくれないかな。」

「はい。」


どうもおかしい。

城に勤務していた人はブーツや甲冑を着けていたらしいのだが、この足跡は足袋のようなものである。

それに30年前に付いたような足跡ではなく、もっと最近の…数年前に付けられた足跡のように感じる。


…誰かが出入りしてたってこと?

この魔王城地下に?

もしかして城下町は機能している?


いや、ダンジョン化している城の前で生活なんて、余程自警団が強いか、冒険者で賑わっているかでないと、無理だろう。


じゃあ誰だ。


敵じゃなきゃいいか。

そもそも、足跡も数年前に食糧庫に入った以降は誰も足を踏み入れてない。

今考えても仕方なさそうだ。


「取り敢えず、吸収できそうなものを探して、宝物庫へ向かおう。」

「いいんですか?足跡…」

「いいよ。多分今から調べても分からないことが多すぎるからね。もう少し歩き回ってから、侵入者が誰かを煮詰めよう。」


食糧庫を練り歩く。

城の食糧を賄っていただけあって、とてもデカイ。

フォークリフトで運搬されていても違和感はない。


棚も備品も殆ど木材と石で作られている。

あまり吸収できるものはない。


魔物の気配もないので、防護の魔方陣が機能しているのだろう。


「何もないですね。」

「ね。」


干しに干された干し肉と、水だけでは流石に飽きる。

そろそろなにかちゃんとしたものが食べたいのだけど。

食糧庫がこの様子だと、しばらくお預けだろう。


一通り見て回り、食糧庫を出る。

吸収できるものも食べられるものも何もなかった。


肩透かしを喰らった気分だけど、次は宝物庫だ。

宝物庫は更に下の階らしいので、階段を降りる。

地下の施設は一つ一つが広大なため、階段が長い。


「ご主人様。食糧庫の侵入者なんですが…誰か生き残りが居たのではないでしょうか。」


長い階段の最中、ナツミは続ける。


「あそこには、あたしたちの部屋と同じく、防護の魔方陣が組まれています。魔物は入れないはずです。30年前に勇者に襲われずに生き残った人がいるなら、食糧庫に入ることが出来てもおかしくありません。」

「確かに。でも、襲われずに済んだ人が居たとして、ダンジョン化した魔王城に居続けるかな。」


ナツミの言う通り、防護の魔方陣が張られていた部屋はダンジョン内でのセーフティゾーンになっている。

魔王やローナちゃんの部屋然り、ラッチさんが使っていた客間然り。


その場に居座り続ける程度の実力なら、外に出られず、食糧庫で息絶えて、何かしらの遺体があるはずだが、それもない。

足跡も数年前に付けられて以降、途絶えていたように見えた。


誰かがダンジョンになった魔王城へ探索へ来て、地下に出入りしていたとしか考えられない。

しかし、地下の探索を優先して上の階、即ち僕が居た書庫や魔王の部屋の前がそのままになっていた理由がわからない。


魔王城の間取りが分かっている人物で、食糧のみ必要な人物。


…オーガの里?


「ラッチさんの言っていたオーガの里の人かもしれないね。」

「無くもないとは思いますが…防護の魔方陣で弾かれると思うのです。」

「え?そうなの?」

「はい。ラッチさんが書庫にもあたしの部屋にも入れなかったみたいに、オーガであれば魔物と判断され弾かれると思います。」


そうなのか。


「ナツミは今、メタルスライムで魔物だよね。何で食糧庫に入れるの?」

「それはもちろん人化出来るか…ら…。まさか!」

「ラッチさんが人化出来るか知らないけど、人化出来るオーガなら入れるってことだよね。」


多分間違いない。

魔王城地下にオーガの里から人化したオーガが食糧を取りに来ていたんだ。


しばらくは来ていない様だし、鉢合わせる事もないと思うけど、魔物以外にも気にしなきゃいけないことが増えたように感じた。


敵であれ味方であれ、突然の遭遇は混乱以外生まない。


下階に降り立ち、食糧庫同様大きな扉が待ち受ける。

「ここが、宝物庫です。」


食糧庫と比べ豪奢な扉で、それでいて厳重である。


「…鍵?」

「はい!鍵が必要です。」

「…鍵ってどこにあるんだろ?」

「え?…そういえば…」


鍵なんて持ってないよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ