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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
空中都市ロガロナ
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2.魔王観察日記

状況を整理しよう。


僕は元々図書館に居たんだ。

学校の図書室の本は全部読んでしまったから、授業が終わり次第、早足で。


それから…着替えて市の図書館に行って、座って本を読んでいた。


で、揺れて踏ん張ろうとしたら、本に埋もれていた。


なんで?


スライムも首をかしげている。


僕がわかんないなら、お前もわからんよな。

撫でると柔らかくて、ひんやりしていて気持ちいい。


マシュマロの柔らかさと、ビーズクッションのさわり心地…


もっと大きくなって、そこに沈ませてくれ。


頷いてくれた…ような気がする。


そういえばメタきちは…


『ぷるぷるぷるぷる!!!』


メタルスライムの猛抗議である。

ごめんて。


お前さんは喋れないのか?

いや、生まれてすぐだし、喋れないか。


おーけー。

取り敢えず、ここの本で色々調べてみるか…


『天空都市ロガロナの歩き方』

『自称勇者、称号を得るまでの道のり』

『発掘!居る居る魔物大図鑑~ロガロナ編~』

『これであなたも一流マスター!ファミリア育成術』

etc.etc.…


徐に一冊手に取る。


『まおーさまかんさつにっき』


ハードカバーのしっかりした作りの本だが、表紙にはガタガタの文字。


子供の文字だろうけれど、魔王が居たと言うことなのか、ファンタジー小説なのか。


前者なら自称勇者は勇者になれそうだ。

後者なら異世界で異世界ものを読むことになる。


パラリと開くとページの上に絵、下に文字が書いてある。


ーーーーーーーーーー

1■■年○月×日

きょうも、にんげんのおうがこうげきしてきたと、まおーさまがおこっていた。

「ゆうしゃをしょうかんしたら、まおーなんかいちころだぞー」とおどされた?らしい。


まおうさまはしょんぼりしていた。


ろーなはまおーさまに「あたしたちもゆうしゃをしょうかんしたらいいじゃない!」っていってあげたら、まおーさまよろこんでた。

まおーさま、おおいそぎでしょこ?にいっちゃった。

ろーなもてつだってきます!

ーーーーーーーーーー


年号はぐちゃぐちゃっと書いてあり読めない。

魔王は夏休みの宿題にされていたのだろうか。


王様と異世界から召喚された勇者、後、ローナちゃん?がこの時には居たと。


なんとなくだけれど、なんだか嫌な予感がする。

まぁまだ序盤だ。

続きを読み進めよう。

情報は欲しい。

僕の指先をツンツンし、ページをめくれ、とスライムも催促している。



ーーーーーーーーーー

1■■年6月×日



ゆうしゃがおしろにきた。

あたしはまおーさまにいわれて、しょこにきました。

まおーさまは「おれもしょうかんしたのにこないじゃないか!おまえらはどうやってきたんだー!」ってさけんでた。


ゆうしゃも「おうさまからは、おまえたちは30ねんまえによんだんだぞー!っておこられた!」っておおごえでいいかえしてた。


ゆうしゃのことばがほんとなら、まおーさまがよんだゆうしゃがくるのは30ねんあとみたい。


かなしい。

ーーーーーーーーーー



…なんだとぉ。

絵日記に出てくる『ゆうしゃ』が僕であるとすれば呼ばれたのは30年前で、更に魔王に呼ばれたということになる。


後、ローナちゃんの一人称が変わってて成長を感じる。

ほっこりする。

絵日記の内容は殺伐としているけれど。

スライムは変わらず僕の指先をツンツンしている。

こっちのペースで読ませて欲しい。



ーーーーーーーーーー

1■■年9月■日


もうだめだ。

ゆうしゃにみつけられた。

まおーさまとまたあうために、あたしのはんぶんを■■■■にいれた。


かなしい。



さよならいえなかった。

わたしのみかたのゆうしゃさま。

ちかに

ーーーーーーーーーー



文字は途切れていた。


僕はバタンと本を閉じる。

…勇者は子供にまで手をかけたのか。


スライムが心配するようにこちらを見ている…気がする。


撫でつつ大丈夫と伝えるけれど、気分の悪さは残っている。


この日記の話だと、30年前に王様に召喚された勇者により、僕を召喚した魔王は滅ぼされ、世界が平和になったのだろう。


で、次世代の魔王になるかもしれない因子も消して、一安心、と言ったところだろうか。


30年前なら、まだ勇者は生きているはず。

ただ、ローナちゃんは何かに半分入ってる?と書いてある。

最後も何かを書こうとしていたんだろう。最後の文字が横に伸びている。



まずはローナちゃんの半分…半ローナちゃんを見つけよう。

なんかに入ってるって書いてたけど。

スライムさんはどう思う?


え?外?書庫の?

いやいや、すっごい魔物多いのよ。

僕の身長より大きな剣引きずって歩いている大きな鬼みたいなやつとか、キリキリカタカタ鳴らしながら徘徊している人形とか、いっぱいいるんだよ。


スライムさんがなんとかできる?

おおー頼もしい。

さっき生まれたばっかりなのに。

まだ指先痛いのに。


あぁ、でももう少し金属欲しい?

うーん、あるかな。


机の引き出しを端から開けていく。

あ、これは?

封筒の口を蝋で止める……シーリングスタンプって言ったかな?


おお、いける口か。

良かった良かった。


え?まだ欲しい?

うーん…



僕はバタバタと書庫の中の金属を探し回るのだった。

もちろん、スライムにも調達してもらいつつ。

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