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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
空中都市ロガロナ
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19.獅子のたてがみと蠍の尻尾

マンティコアはたてがみを震わせ、脇目も振らずこちらへ突進してくる。


咄嗟にナツミを抱えたまま横へ避ける。

マンティコアは前足を横凪ぎに振るうのが見えた。

玉座に前足が触れると、静電気が発生したかのようにバチンと弾ける。


あー、玉座だもんな。

防護の魔方陣くらい書き込んでるか。


お前のせいだと言わんばかりにこちらを睨み付けてくる。

いや、僕じゃないですよ。


咆哮と共に再度こちらへ跳んでくる。


左肩に手を当て、金属の珠を取り出す。

「転写!」

形作るのは盾。


形としては逆三角形のカイトシールドと呼ばれる盾である。

吸収した盾がその形しかなかった。

後、衝撃が怖いから肩から腕にかけても鎧を転写する。


盾でマンティコアの攻撃を受け止める。

そこそこの衝撃に腕がしびれる。


「ナツミ、大丈夫?」

「あたしは大丈夫です。お役にたちますよ!」

「よし、じゃあこれを使って。」


僕はナツミへ小刀を手渡す。


「僕が守るから、ナツミは隙をついて攻撃。雷撃でも斬撃でもいい。まず尻尾を切り落とせると良いかも。」

「わかりました!」


正直、甲冑が擦れて痛い。

早く終わらせよう。


僕はもうひとつ転写する。

ラッチさんが使った大剣だ。

錬成は同じ金属量で複製しようとするので、時間がかかる。

転写は同じ形を作るだけなので、錬成よりお手軽である。

作った大剣を圧縮で少し縮めていく。


圧縮することで、大剣はショートソード程の大きさになるが、密度が上がり強く固くなる。

鎧とセットで飾っていた剣を圧縮すると、同様の効果は得られるが、フルーツナイフのようになってしまい、正直戦闘では使い物にならない。


槍を転写、圧縮して投擲するオートマトンさんみたいな方法もあるけど、投擲は当たらなさそうなので止めておく。


盾を左腕に、剣を右手に。


マンティコアの突進。

「一つ覚えだな。」


直線で受け止めてしまうと、さっきのように衝撃を直に受けてしまう。

マンティコア当たるタイミングで、盾で少し左へずらす。

金属の擦れる音、正面でぶつかるより衝撃は抑えられるけど、それでも体がギシギシと痛む。


突進の際の推進力を逸らされ、マンティコアのバランスが崩れる。


「ナツミ!」

「はい!」


僕の後方から飛び出し、小刀を振りかぶる。


たぶん小刀の刃は刺さらない。

それどころか、毛に弾かれる。


なら、マンティコアは次どう動く?

バランスを崩しても、攻撃ができる…


「ナツミ、人化を解いて!」

「へ?あ、はい!」


空中でしゅるんと手足も頭も縮む。

メタルスライムの姿に戻ったナツミ。

直後に、ナツミの頭があったであろう空間にマンティコアの一撃。

尻尾を使用した刺突がメタルスライムの頭上を掠める。


尻尾を振り抜くより先に、ショートソードを尻尾の節へ叩きつける。


火花が散る。

え?金属なの?


…それなら、話は早い。

迫ってくる尻尾の先端を盾で弾く。

突進ほどのパワーは無いが、取り回しが効くようで、ガンガンと盾を凹ませてくる。


ショートソードの柄を一旦、口に加える。

空いた右手をマンティコアの尻尾に添え、金属支配を使う。


パキパキと尻尾の触れたところから順に裂傷が広がっていく。

鮮血を撒き散らしながら、マンティコアが暴れている。


左肩から金属を広げ、尻尾を包む。


貰うね。

口が塞がっているので、『吸収』と念じる。


『ガアァァァアア!!!』

苦悶の叫び。

するりと金属を収納すると、筋や筋肉などの中身のむき出しになった尻尾が露になる。


「ナツミ、雷撃出来る?」

「勿論です!」


ぐにゃりと姿を変え、人の姿に戻る。

小刀を逆手に持ち、魔法結晶に魔力を流す。


穿雷(レールガン)!!」


バシンと弾ける音と共に、狙い違わずマンティコアへと閃光が突き刺さる。


唸り声と全身から煙をあげながら、マンティコアはその場に沈み込む。


息はあるが、雷撃で筋肉が弛緩しているようだ。

尻尾がむき出しだったため、電流が体内にまで伝わったらしい。


ナツミから小刀を返してもらい、重ねて穿雷を撃ち込む。


3回ほど撃ち込み、大きな魔物は沈黙した。


そっと手を合わせ、ショートソードで尻尾を切り落とす。

骨の一部が吸収できるはずだ。

革は硬いが金属ではなさそうだ。


切断面の骨から体内に侵入し、骨を吸収していく。


…よし、こんなもんかな。

バラすことも出来ないため、その場に置いていくことにする。


「ラッチさんは魔王城の地下じゃなくて、ロガロナの地下って言ってたんだよなぁ。」


でも、魔王城の地下に宝物庫があるとも言ってた。


「宝物庫、見てみませんか?吸収できるものは多そうです。」

「確かに。急ぐ訳でもないもんね。宝物庫と、食糧庫を見てから、城下町を探索しようか。」


謁見の間の両脇にはドアがあり、下に降りるための階段があった。

中は雰囲気的には書庫にあった、下り階段と同じ、

石造りの壁と階段。

目を凝らしながら、ゆっくりと降りていく。


下にたどり着くと、謁見の間と同じくらいの大きさの空間が現れる。

なんか出てくるんじゃないだろうか。


身構えつつ進んでいく。


わさわさと白い毛玉が見える。

あれは知ってるぞ。

グリムラビットだ。


毛玉が三匹、こちらを見つめている。


「どうしましょう?ご主人様。」

「僕がやってみるよ。」


ラッチさんを棺へ入れたときや、マンティコアの突進を受けたときに感じた力の充足感。

自分がどこまで戦えるのか確認しておきたい。


小刀を構える。


「「「ギィィィ!!!」」」

グリムラビットの威嚇。


第二ラウンドといこうか。

彼、結構好戦的ですね。

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