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メタルスライムと異世界ライフ  作者: 紫宵 春月
空中都市ロガロナ
15/386

15.念願の水

「ギーーーーッッッ」

けたたましい叫び声と共に、兎が跳んでくる。


うさぎってそんな鳴き方する!?


「おい、なに見つかってんだ!」

グッと僕を後ろに引っ張り、入れ替わるようにオーガさんが大剣を振るう。


「ッダラァ!!」

下から振り上げる大剣は轟音と共に兎へと吸い込まれる。

しかし兎は大剣の鎬地を足で蹴り飛ばし、剣の軌道をずらした上で身をそらす。


見入っていると、耳元を何かが通り過ぎる。

投擲された何かは着地しようとした兎に突き刺さった。

当たった勢いで奥に転がりこんだ兎を追随し、オーガさんが先程振り上げた大剣を振り下ろす。


断末魔の悲鳴をあげ、兎は事切れた。


「おー、助かったぜー。」

『いえ、タイミングがよかっただけでございます。』


後ろから何かを投げたのは、オートマトンさんだった。

そうかとは思ったけど、ビビった。


「何を投げたの?」

『これでございます。』


見せてくれたのはフォーク程の大きさの槍。

どうやら、吸収した槍を小さく転写して投擲したそうだ。

応用が効くねぇ。


でも、なんで同じ使い魔なのにステータス見えないんだろ。

投擲とかスキルだよな。

…核を見ることが出来ないってことなのかな。


僕から見えているステータスは僕とメタルスライムだけ…

ナツミのステータスも見えてないのか。


と言うことは…?

僕とメタルスライムが同一個体ということ…?

いや、そんなことないか。

だって、スライムさんにも核があるんだもんな。


「おい、部屋の中見るなら、今のうちだぞ。また湧くからな。」

「え、あ、すみません。」


考え事をしていたら、兎を食えるように絞めていたオーガさんの作業が終わったようだ。


ダンスホールは血の匂いが残っていたので、出来るだけ早く調べて出よう。


椅子とシャンデリアが金属製。

スライムさん、いけそう?


ぷよぷよと頷くスライムさん。

天井のシャンデリアをスライムさんが、地上の椅子をナツミとオートマトンさんが吸収していく。

こんなもんかな。



似たような感じでドアを開けて、魔物が出てきたらオーガさんとオートマトンさんが倒す。

思っていたのと違い、サクサクと探索が進む。

ちなみに、出てきた魔物はさっきの兎と真っ黒な蛇とでっかい鶏と亀


名前はそれぞれ、

グリムラビット

リーパースネーク

ルフ

バロンタートル


と、図鑑には書いてあった。

ついでに、どれも物々しい説明が記されている。

猛毒とか麻痺とか…怖すぎる。

ずっと暮らしてきたオーガさんとオートマトンさんの連携で無傷で確認出来てるけど…。


こんなんで良いのかな…?

探検じゃなくて接待になってない?


「ま、ダンジョン初めてだろうし雰囲気だけ分かればいいんじゃね。」

『ツムギ様を守るのがメイドの役目でございます。』


…厚待遇!!


異世界探検としては、どうかと思うけど。


長い廊下を通り抜けて突き当たる。

外窓の切れ目の奥に降りてきた階段に似た登り階段がある。

向かい側にはドア。


「このドアの向こうが俺の生活スペースだ。一旦休憩にしよう。」


部屋の中は、使用人用の部屋として使われていたのだろう。

ベッドや机、水回りも存在している。

居住スペースとしては申し分ない。


むしろ王族の部屋に水洗がないのはなんでなんだ


「水貰っても良いかな…。」

「おう。道中に水がなかったからな。」


久しぶりの水。

大きな皿の真ん中からチョロチョロと、噴水のように水が湧き出ている。

皿の部分に溜まっている水を手で掬い、一口。

常温より少しひんやりしている。

匂いも味も違和感はない。

おいしい。

喉の乾きが癒えていく。


…どこから来てるんだろう。

お腹壊さない?


「これはあれだよ、水を出す魔法結晶が中に入ってるんだよ。んで、もうひとつ空中に漂う魔力をギュッとする魔法結晶が付いててな、こう、外から中にワーッと魔力を流してるんだとよ。」


そんな便利なものが。

でも、メタルスライムのステータスに魔力吸収とかあったな。

吸収した魔力をどこかに流して、その魔力を使って別の魔法結晶を行使する…。


なるほど。

良く出来てる。


「すげぇだろ。こんなの上流階級の奴しか持ってないんだぜ。」


魔法結晶そのものが珍しいものらしく、更には吸収の魔法結晶はより珍しい。

まぁ魔物からしか出ないのだから、仕方ないか。


ついでにナツミとスライムさんに水を幾分か貯めておいてもらう。

で、のんびりしすぎたため、今日はここでそのまま夜を過ごす。


「お世話になりっぱなしですみません。」

「構わねぇよ。人と話するのも久々だし、楽しいもんだ。」


ガハハと笑うオーガさんは本当に楽しそうだった。


「そういや、大剣なんだけどここに石無かったか?」

「あ、そうだ。すみません。最後に付けようと思って忘れてました。」


石を付けたときの不気味な感覚が、何だったかはわからないけれど、大丈夫だろう。


懐から紫水晶を取り出し、大剣に取り付ける。

カチリと紫水晶が大剣に付いた音。


同時に何かが纏わりつく。

なんでだ。

柄にも触っていないのに。


『ご主人様!そこから離れてください!!』

ナツミの声。

このままじゃヤバい気がする。

けれど、足が動かない。

蛇に睨まれた蛙のように、足がすくんで動けない。


オーガさんの意識は無いように見えるのに、口が動く。

『見つけた…見つけたぞ!てめぇ魔王側の勇者だな!魔王の置き土産、最後の不穏分子!30年前に一族郎党抹殺したが、それだけが心残りだった。はっは!ようやく現れたか、お前をぶちのめせば、やっと安心して眠れる。』


キチキチとオーガさんの筋肉が引き絞られ、大剣が振り下ろされる。

動けない。

息が出来ない。


目を強く瞑り、全身の筋肉が強ばる。



金属と金属が強くぶつかる音。

痛くない。

手も動く。

ゆっくりと目を開くと、眼前には左肩から中央まで大剣が食い込んだオートマトンさんが立っていた。

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