答えなき問い5
ガツガツと、凄い勢いで食べ物を口にする魔名。予想に反して箸の使い方下手だな。
こんな話を聞いたことがある。子供を戦闘集団にさせる場合は、最初に飢えさせることで考える能力を奪われる。
従順に命令を遂行した時にだけ、ご褒美としてまともな食事を与えられるとか。
命令を遂行できなかった時や、失敗したときにはペナルティがあるらしい。
【子供は親を選べない】
子供は環境次第で、乾いたスポンジのように綺麗な水だろうが、汚れた水であっても吸水する。
スポンジは一度汚れてしまっては、真っ白になることはできない。
「何ですか?人をじろじろ見て失礼ですね。気持ち悪い」
いかんいかん。考え事をしながら、ついぼーとっと見てしまった。
「美味しそうに食べてくれて嬉しいわ」
「いえ、とても美味しいですけど」
「まあ、とってもいい娘さんね」
お世辞だと勘違いしたまま母は、上機嫌で喜んでいた。
お世辞じゃないんだけどと、魔名の言葉は空を切る。
「優しいお母さんで羨ましいな」
ふと、魔名は呟いた。
頭の中に浮かんだのは、羨むことは浅ましいという常識。しかしそれは人によりけりだと思う。
羨むことそれ自体が悪だと言うのならば、人は何を目標にすれば良いのか?きっとわからなくなるだろう。
自分もそうなりたい、私はあなたよりも、もっと幸せになりたいと。それは原動力になる。
「きっとやり直せるよ」
魔名は、突然の彼方の言葉にポカーンとしていたが、真面目な顔をして不器用に笑った。
「食後のデザートはいかがですか?」
母は苺を小皿に取り分けて持ってきてくれた。
「なにそれ?」
僕が苺に練乳をかけていると、魔名も真似をして練乳をかける。
「甘い!!」
目を星のように輝かせて、パクパクと魔名は苺を頬張る。
ふと、雫がぽろぽろと魔名の瞳から落ちた。
「あれっ!何で?」
母は、あらあらどうしましょうと慌てふためく。
「この家の人やもの、全部なんかあったかくて」
グスンと子供みたいに泣く魔名を、えーいと母は抱きしめた。
優しく抱擁する母は、魔名の頭を昔飼ってた飼い犬の次郎を撫でるようにヨシヨシとする。
あっ、アカン。母が品定めモードに。
「あなた可愛いわね。家の娘にならない?」
魔名の髪を手ぐしで梳く。魔名は驚いた表情ではあるが、満更でもない様子だ。
こうなった母は、しばらく続くだろう。
しかし、魔名は唐突に真面目な表情をすると、断りのフレーズを告げる。
「大変嬉しいですが、遠慮させていただきます」
母は、とても残念そうな表情をした。いやいや、冗談で言ったんだよね!まさか本気?




