リバイス1
つまりツギハギゾンビは、ヒーロー側にある程度名が知れ渡っている犯罪者ということか。
「奴はブラックリストとして名前が挙がっているんだけど、なにぶん逃げ足が速くてね」
先ほどの戦闘を見る限り、それは納得だ。
しかし、それよりも気になるのは、先ほどから窓ガラス越しにこっちを凝視している女性は誰なのだろうか?
まだ3月なので暖房の入った店内、石さんは汗がだらだらと凄いことになっているが。
だが、この女性はまつ毛が長く、強い眼差しをしており、とても綺麗な顔立ちをしていた。黒い髪は光沢を帯びて、光加減で青く見えている。
女性は店内に入ってくると、ビシッと石さんを指差しこう言った。
「貴様はまた甘いものを食べているのか!」
石さんは、猫に威嚇された鼠のように動けなくなった。
しかし唐突にフォークをパンケーキに刺して、驚く僕を気にした様子もなく、パクッと一口。
「パンケーキ美味しいね」
女性をスルーして、何事もなかったかの如くパンケーキを咀嚼する。
「おいっ」
女性は石さんの胸ぐらを掴んで、往復ビンタをかました。
うひゃぁー、痛そう。
今起きたことは、ほんの数十秒の出来事でした。
「無視すんなし」
「いや、決して無視したわけでは」
「言い訳するな」
更なる往復ビンタが石さんを襲う。容赦がない。
女性は満足したのか、石さんの胸ぐらを離し、視線は僕の方へ向いた。
「哲学とは何だかわかるか少年」
えっ!?今のやり取りからこの話題。
女性のハスキーな声に驚きながらも、少し考えて答える。
「えーっと、難しいことはわかりませんが、真理への追求ではないですか?」
「半分正解だよ。だけど足りない」
「足りない?」
「そうそれが答えだよ。哲学とは疑問を持つことだ」
「疑問?」
「そうだよ。たくさんの疑問から、一つの答えへ導くのさ。例えば…そうだね、常識を否定することから哲学は生まれる」
「つまりは、疑問を追求した先にあるものが、現在ある常識の否定ということですか?」
「うん、正解。君、なかなか賢いね」
女性は朗らかに笑うと、彼方の頭をわしゃわしゃと撫でた。
先ほどからの疑問なのだが、この人誰?石さんの上司だろうか。
「ところで貴女は誰ですか?」
彼方はスッキリしない頭で問いかける。
「私か、私は雨蘭。日の丸の社長だ」
「しゃ…社長!?」
「うん、石が気になる奴がいるって言うから、直接見たくなってな」
そう言って、石さんの隣に雨蘭さんは腰掛けた。
ふむふむと、雨蘭さんは、僕の目をジッと凝視する。




