残響8
彼方の微細な表情を読み取り、石は苦笑いをする。
「今聞いたことない会社だと思ったでしょ?」
えっ!!また心を読まれた?慌てる彼方を見て、石はクスクスと笑った。
「すいません」
「いいよいいよ。本当のことだから」
彼方が頭を下げるが、石は気にした様子もなかった。
「知らなくて当然だよ。私たちの会社は国の諜報機関であり、暗部だからね」
「暗部?」
「そう、暗部。私たちは表のヒーロー会社とは違って、あまり表面的に出るわけにはいかないんだ」
「その暗部がどうして僕に関わるんですか?」
「簡単な話だよ。君をスカウトにきたのさ」
「僕を!何故?」
「それこそ愚問だよ。どこの会社でも、優秀な人材は喉から手が出るほど欲しいものでしょ?」
「だけど僕は…優秀なんかじゃ」
「ヒーローになる資格がない。君はそう思っているんだよね?」
「…はい」
「私は君を否定しない。だから、話を聞くだけ聞いてくれないかい?」
「…わかりました」
「じゃあ、場所を移そうか。近くに美味しいスイーツ店があるんだ」
顔に似合わず甘い物好きなのだろうか?
石の後に続いて歩き始めた彼方の前に、黒のライダースーツの人物が道を塞ぐように立っていた。
「お前の首はいくらだ?」
驚く彼方に中性的な声で告げる。見れば、金属製の輪をつなぎ合わせた大きく長い鎖を左手に握っていた。
誰っ?
体の露出した部分全てに包帯が巻かれており、表情は読み取れない。
石は、ライダースーツの人物を遮るように彼方の前に立つとこう言った。
「あなたは化物ですか?」
と。石さんと僕では、見えているものが違うのだろうか?
ライダースーツは無言で何も答えなかった。
「もしかして、あなたがツギハギゾンビですか?」
石は警戒色を強めて更に問いかけた。
「だったらどうだというのだ?」
包帯で表情はわからないが、その人物は笑った気がした。
「もちろん、拘束させていただきますよ」
「拒否する。それにお前に用はない。私はそのガキに用があるんだ」
「生憎だけど、見過ごす筈がないでしょ?」
ツギハギゾンビと呼ばれる人物は、グォン、グォンと円を描くように鎖の先を振り回し始めた。
「やれやれ、私は非戦闘員なんだけど」
見えない速度の鎖の殴打が石を襲う。しかし石は、ツギハギゾンビの攻撃の初期動作よりも速く、回避が終わっている。
だが、ツギハギゾンビは鎖の手元を器用に操作すると、回避した筈の鎖が石を追撃する。
しかし、その攻撃も石には初動で躱された。
ツギハギゾンビは煩わしいといった風に苛立ちを態度に出しながらも、冷静な対応を取る。
「…時間をかけすぎた。これ以上は面倒な羽虫が集まる」
「鎖天嵐」
鎖を大きく振り回すと、強烈な風を生み出す。その中では動くこともできないし、視界も遮られてしまう。
風が治まったときには、ツギハギゾンビの姿はなかった。
侮れない、石は内心冷や汗をかいた。




