七転八倒7
何故だろう、何だかとても嫌な予感がする。
ピリッと空気が張り詰めた感覚がした。
コンクリート詰めでもされたかのように、体が重く感じる。
どこからか、荒々しいプレッシャーや、心臓を締め付けるような殺気の気配がする。
「彼方、隠れよう」
万利は小声で、彼方に耳打ちをする。
彼方は頷くと、近くの茂みに身を隠し、気配を断った。
しばらく茂みに隠れていると、話し声が聞こえる。
「いやー、羽薬缶様は流石ですな。まさに剛力無双とはこのことかと」
灼冥之木の幹部である、白星の筆頭委員長羽薬缶。
その羽薬缶に胡麻を擂るっているのが、同じ白星の委員長ヤンその人だった。
ヤンはアロハシャツにジーンズ。両手をポケットに入れて歩く。
羽薬缶は細身で、紺色の着物を身に付けている。
「ヤン殿、素直に言って下され。私は血を見ると暴走する化物だと」
「そんなことはないですよ。仕事をサボれて、ホントに楽で助かってます」
ヤンはにこやかに、気にするなと、羽薬缶の肩をバシバシと叩く。
「痛いで御座るよ。ヤン殿」
ヤンは高笑いをする。羽薬缶もヤンにつられて、声高らかに笑った。
「あ、鳩だ」
ヤンの言葉の単語に羽薬缶は、顔が真っ青になり、ガタガタと震え出す。
そして羽薬缶は、近くにある木にしがみつき、顔が木に埋まるのではないかという風に木へ密着する。
「う、そ」
ヤンはニヤニヤしながら、飄々(ひょうひょう)と言ってのける。
羽薬缶は顔を真っ赤にして、抗議の言葉を述べる。
「…酷いで御座る。私が鳥全般が苦手であることを知ってるで御座ろう」
「まあまあ、怒らないでよ。ほら、羊羮があるからお食べ」
そう言って、ポケットから羊羮の包みを取り出す。
しかし羽薬缶は、食べ物では誤魔化されないぞといった表情で、ヤンの次の動きを観察する。
ヤンがポケットから取り出されたのは?芋羊羹と定番の小豆羊羮だった。
「そ、それは甘味処キンモクテイの芋と小豆羊羮では御座らんか」
それぞれ黄色と、小豆色の包装用紙に包まれている。そして、老舗を感じさせる地味めで、金木犀柄の半透明な刺繍。
「…この二人は何者何だろう?」
彼方の中で疑問符が浮かび上がった。
この余裕そうな、この場に相応しくない雰囲気の二人。
もしかして、試験官ではないだろうかと?彼方は結論を出した。
とりあえず、情報屋である万利に聞いてみることにした。
隣を見ると、口を手で覆い、息遣いすらも漏れないように、万利は必死だった。
「え!?」
彼方は、思わず声を上げそうになる。




