七転八倒2
太陽が南中している。
二人の腹の虫が鳴く、流石にもう限界だ。
一度休息を取ろう。現在地は富士山八合目である。
空気が薄いし、何だか寒い。
休憩スペースを見つけて、二人は腰を下ろす。
万利は体をぶるぶると震わせる。
僕はジャージの上着を脱ぐと、万利に手渡した。
「僕のジャージで良ければ、羽織りなよ」
「そんなの悪いよ」
「僕は平気だから」
「…ありがと」
万利はこちらをチラチラと様子を窺うと、少し申し訳なさそうな表情をした。
「お腹空いたから、木の実を食べようよ」
「うん」
手持ちの木の実を分けて食べる、疲れた体に甘いものは嬉しい。
空腹なのは変わらないが、休んだことで体が軽くなった。
「万利、大丈夫?」
「うん、休んで少し疲れが取れた」
「もう少し休む?」
「大丈夫、早く山を登らないとさ、下山ができなくなっちゃう」
「無理はしないでね」
「わかってる」
そう言って万利は立ち上がると、登山を再開した。
それからしばらくして、富士山九合目付近に到達したところで、ギャリッと刃物と刃物が擦れ合うような音が聞こえた。
ただ事ではないと、音のする富士山の頂上へ、僕らは向かった。
頂上に近づくにつれて、焦げ臭い匂いが強くなってくる。
誰かが戦っている!これも今回の試験の一つだろうか?
二人が山頂に到着すると、黒いドレスの少女?が鹿ノ谷に一歩一歩近づき。
鈍色な赤色の鉤爪を地面に擦らせながら、鹿ノ谷との距離を一瞬で縮めて、下から掬い上げるように切り裂こうとする。
鹿ノ谷はそれを上体を反らして、紙一重で躱す。
少女の両手による大振りな攻撃には、一瞬の隙ができたのを鹿ノ谷は見逃さなかった。
少女の側腹部へ、鹿ノ谷は渾身の右ストレートを繰り出す。
しかし、少女は腰を捻ると、先ほどの、下から上の攻撃の反動を生かし、上段から鉤爪が鹿ノ谷に迫る。
鹿ノ谷の右ストレートを少女は受けるが、鉤爪は止まらない。
死ぬ。
鹿ノ谷の中で、死を予感させた。
彼方や万利は、鹿ノ谷を助けるために走り出したが、これは間に合わないと、頭が理解してしまっていた。
「滾るわ」
しかし、この場で、鹿ノ谷だけは諦めていなかった。
鹿ノ谷は気を集中する。そして息を吸い、一瞬息を止め、一気に息を吐き出した。
その一瞬で、黒い少女が吹き飛ばされた。
鹿ノ谷は力を溜めて、八極拳による突きを繰り出したのだ。
黒い少女は後方へ吹き飛ばされながら、ザザーと足で踏ん張り、十メートル後方で止まった。
吹き飛ばされても、倒れないどころか、戦意喪失しない。
これでも倒れないのなら、打つ手がない。
化物か!この女は、鹿ノ谷は黒い少女の異常さに思わず舌打ちをする。




