光陰流水8
万利の選んだ拠点場所は、確かにキャンプ地として、高物件だった。
適度な広さがあり、水捌けがいい。
富士山には、特別保護地区という区域が存在する。
その区域内では、動植物を採取してはいけないのである。
富士の樹海も、本来は動植物の採取はNGなのだが、ヒーロー試験のためだけに、採取を許可されている。
ヒーロー試験終了後の、ヒーロー協会による、富士の樹海へのアフターケアもバッチリだ。
そもそも青木ヶ原樹海とは、山梨県側の富士山の麓、富士箱根伊豆国立公園内に広がる森林地帯のことだ。
「キャンプ設営と食料調達に、二手に分かれた方が効率いいかな?」
彼方は妙案だと、万利に発案した。
「止めた方がいいと思うよ。樹海は迷いやすいからさ、彼方は迷子さんになっちゃうよ」
万利の意見に彼方は頷いた。確かに少し歩いただけで、現在地がわからなくなる。
富士の樹海は迷いやすいので、彼方と万利は、別行動をするのは危険だと判断をした。
つくづく思うに、万利とチームを組んで良かったと、彼方は思う。
キャンプ設営に必要な資材を集めながら、食材になりそうなモノを探す。
見つかった野草は、たんぽぽ・ドクダミ・つくし・だった。
オマケにクサイチゴを見つけることができた。
弓切り式で彼方が火を起こすと、野草に火を通すことにした。
もちろん、鉄板や鍋はないため、岩盤焼を試してみた。
うん、なんか普通に焦げた…苦い。
万利も野草を口に入れた瞬間、渋い表情をしていた。
オマケのクサイチゴは甘くて、口の中の苦味が中和された。
万利はクサイチゴを口に入れると、ほわわわーんといった幸福な表情をする。
もう夕方だ。急いでキャンプ設営しないと、すぐに夜になってしまう。
彼方はキャンプ設営をしながら、万利に疑問を問いかける。
「キャンプ設営しないの?」
万利は、キャンプ設営に必要な資材を拾うこともなく、まさか土の上で寝るんじゃ?と心配する彼方。
そんな彼方を他所に、万利は地面に腰を下ろし、体育座りをしている。
「気にしないで、大丈夫だから」
と万利は言葉を繰り返す。
彼方のキャンプ設営が終わった頃、万利はあっち向いててと、彼方にお願いをする。
彼方は不審に思いながらも、万利と逆の方を向く。
すると衣擦れの音がして、彼方、自らの鼓動が速くなるのを感じた。
十数分すると、もう大丈夫と、万利は彼方に感謝を述べる。
彼方が振り返れば、驚くことに、立派なテントが!
地面には藁のようなものが敷き詰められ、万利はちょこんと、テントから顔だけを出している。
こんな立派なテント、どうやって作ったんだと、彼方は疑問を感じた。




