目的のための手段4
影月と光莉の双子忍者兄妹は、よさこいポーズを一通りすると、満足した様子で本題に入った。
「話を戻すと、筆記試験の内容についてですが」
光莉は何事もなかったように会話を始める。
「知っていることがあれば教えてほしいな」
彼方は難しい顔で、双子忍者に問いかける。
影月と光莉は顔を見合わせた。そして二人は言葉を重ねる。
「筆記試験の内容を教えるには、条件があります」
「条件?」
「俺ら兄妹は、忍びとして生きる身。主君と仰ぐ者を探しております」
「つまり主君を探せと?」
「いえ、違います。青井彼方殿に主君になってもらいたいのです」
「え!?僕?何故?」
「実は俺達は、面接試験のあの会場に潜んでいました」
「ハッ?あの会場は、人工重力負荷装置の重力負荷があったハズ?」
「あの程度の重力負荷には慣れています」
「あの程度!?」
影月はさらりととんでもないことを言う。
「それよりも会場全体をリボンでラッピングされたときは驚きました」
「それは確かに、突然会場全体がリボンで包まれたから、僕もビックリした」
彼方はうんうんと頷く。
「最初から俺達が潜んでいることはわかっていたんでしょうね」
「…マジか!僕は全然気づかなかった」
「俺達を拘束したリボンが消滅していなければ捕まっていたでしょう」
「うん?リボンで拘束されてたの?」
「はい、俺達二人とも拘束されてました。流石は天才少女えるさんです」
「天才様は違うなー。僕は才能なんてないからさ」
「勘違いされてませんか?天才とは才能ではありませんよ?」
「じゃあ、天才ってなに?」
心を見透かされているようで、彼方は苛立ちを覚える。
「天才を説明するには時間がかかるので、簡略して話しますね」
『まず前提に、一般的な天才は、凡人が器用な人間を天才と呼んでいることが殆どであり』
『それは、凡人から見た天才って奴です』
『その凡人から見た天才達より、格上の存在なんて山程いる』
『才能という原石は、誰もが持っているものだ』
「凡人が1だとすると、器用な人間は足し算やかけ算であり、なら天才を例えるとしたら0から1を生む者だと俺は思います」
「つまり人が作ったモノで満足する人ではなく、自分で新しい世界を作った人ってこと?」
彼方は疑問を投げ掛ける。
「ちょっと惜しいですね。70点、視点はいいと思います」
「うーん?天才って、どれだけ無に価値を見出だしたかだと私は思うな」
「流石、俺の妹。1000点、ご褒美におやつは葛切りにしてやるよ」
「やったー、お兄ちゃん大好き」
光莉はジャンプをして喜んでいた。ジャンプをする度にスカートがふわふわして気になる。