表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
原初のヒーロー  作者: 七星北斗
修正前
12/117

目的のための手段

 彼方はバスを降りると、自宅に向かって歩き始めた。


 今日はなんだか長い一日だったな~。疲れたし、早く帰って寝よう。


 ふぁーっと欠伸をすると、彼方は住宅街に入る。


 住宅街に入り、しばらく歩いて曲がり角を曲がると。


「あーした天気になーれ」


 そんな掛け声とともに靴が飛んできた!?


「クオッ」


 短い悲鳴を上げると、靴が顔にめり込んだ。鈍痛な痛みとともに彼方は後ろへ倒れる。


 うし、顔面で受け止めてやったぜ~?…痛い。


 全力で靴飛ばしをする少女、弾丸が飛んできたかと思った。


「ごめんなさい、彼方お兄さん大丈夫です?」


 慌てた少女は片足跳びで駆け寄って、心配そうな面持ちで、彼方の目を見つめた。


「やあ、粟井(あわい)ちゃん。遊び方が相変わらず過激だね」


「過激だなんて、もう、彼方お兄さんのえっち」


 粟井ちゃんの本名は粟井七葉(あわいななは)、中学2年生。


挿絵(By みてみん)


 黒髪ロングで、まだ幼さの残る美少女。


 ヒーロー好き女子であり、粟井ちゃんとは幼い頃からヒーローごっこをしてよく遊んだ。


 粟井ちゃんは家が隣同士で、両親同士が仲が良い。


 彼方にぶつけてしまった靴を粟井ちゃんは拾い、前屈みになり、靴を履いた。


 靴をぶつけられた痛みを表情に出さないように、彼方は心配する粟井ちゃんに笑いかけた。


「粟井ちゃんも大人になったんだね」


「私はもう大人なんだよ、難しい言葉も知ってるんだから」


 彼方はしみじみと、うんうんと頷く。


 下着に関しては、確かに大人だ。


 スカートで全力で靴飛ばしをすれば、下着も見えるよね。


 魅惑的な黒いヒモの下着。


 僕にとって粟井ちゃんは妹のような存在である。


 よし、今見たことは忘れよう。彼方は心の中で固く誓う。


 そして靴飛ばしは、スカートを穿いている時は絶対にしないように注意しなければ。


「今日は彼方お兄さんの勝負の日だから、お兄さんを応援するために、私も勝負下着を穿いているんだよ」


 粟井ちゃんはどや顔でそう告げる。


「ブッ」


 彼方は思わず吹き出した。


「女の子がそんなこと言っちゃいけません」


「ふっ、私は大人だからね」


 早くこの勘違い少女の間違いを正さねば。


 粟井ちゃんは、どうやら大人という言葉にリスペクトを感じているようだ。


 背伸びをしたいお年頃なのだろう。


「それより彼方お兄さん、今日の面接試験どうだったの?」


 彼方は悲しげに俯く。


「聞きたい?」


「え!まさかお兄さん、うるうる」


 粟井ちゃんは今にも泣き出してしまいそうだ。


「ごめんごめん、無事に一次審査通過したよ」


「お兄さん、グッジョブ」


 勢いよく粟井ちゃんが抱きついてきた。


「お兄さーん、むぎゅー」


「粟井ちゃん、元気だね」


「彼方お兄さん、あの約束覚えてる?」


「あの約束?」


「ブー、忘れちゃったの?」


 粟井ちゃんは可愛らしく頬を膨らませる。


 約束?何の約束だっけ?彼方の反応を見て粟井ちゃんは寂しそうに遠くを見つめた。


「まあ、いっか。彼方お兄さん、またね」


 粟井ちゃんはそう言い残して、自宅へと帰って行った。


 もしかして粟井ちゃんは、僕が帰って来るのを待ってくれていた?


 そんなわけないか、僕も自宅に帰ろう。


 彼方は玄関のドアを開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ