#8 脱出
ク「しっかし不思議な体験しちょる人やね~それに普通ヴァンパイアに生まれ変わろうと思う?」
本当はエルフに生まれ変わりたかったんです...まさか俺も来世がヴァンパイアになるとは思わなかったよ。
レ「だよなぁ!俺もヴァンパイアだけはごめんだな。あっレオニーは良い奴だと思うぜ!リディアを救ってくれたし、なにより臭くないしな!」
ヴァンパイアの良い奴=臭くないやつなのか?まぁ俺も別種族に生まれ変わってて、この体臭を放つ奴が近くに居たら、嫌な顔をしてしまうかもしれんな。
ゼ「しかし本当に驚きましたよ。まだお聞きした内容を信じれない所もありますが、創造神様を疑うわけにはいきませんから。それにレオニーさんが家族を救ってくれたのは事実ですからね」
リ「私は種族なんて気にしないよ!本当に危ない所を助けてくれたのは嬉しかったし、それにレオニーさんが只者じゃないとは思ったよ!強者のオーラをビンビンに感じて、私ワックワックしたよ!」
リディア本当に戦闘民族じゃないよな?野菜の星から転生してきたとかだったらビックリすんぞ・・
ただ俺もこの子はなんか変わってるというか、表現が難しいんだけど距離が近い感じはするんだよな。まぁ懐いてくれてるのは俺も嬉しい。
4人には俺がこの世界に転生してきてからの経緯を伝えた。
ヴァンパイアは夜の世界でしか生きれない、それが定めと創造神に言われ、そんな定めを覆してやる、朝の世界でもヴァンパイアは生きていけると証明する為に外の世界に飛び出した事。
飛び出した森の中で、アンデッドモンスターの大群を見つけてその中でも”リッチ”ってバケモンに瀕死の重傷を負わされ、命からがら逃げ延び、川に落ちて流された先に4人がココに逃げ込んで来たから出逢えた事。
ちなみにココは銀級ダンジョンらしく、元々は鉱山だったが、オーク達が住み着いた事でダンジョン化してしまったみたいだ。
冒険者ランクをゴールドにランクアップする試練として、オーク討伐クエストを受けて順調に進んでたものの、最奥でオークの上位種である”オークジェネラル”が変異で生まれているのを見つけてしまった。
すぐ撤退しようとした所を、リディアが「いけるいける☆」ってノリで攻撃魔法を放ってしまったらしい。なんとか”オークジェネラル”を倒せたが、リディアが不意を突かれて致命傷を負い、この場所まで逃げ込んだとのこと。...リディアこえーよ。
また、この場所は”セーフポイント”と言われる安全地帯らしくオーク達が入ってこない。
理由はオーク達は水が苦手で、鉱山で水場がある場所にはオーク達も近寄らないらしい。
崖から川に落ちた俺は、鉱山の中を通る川のルートに入り、運良く水分を吸ったマントが岩に引っ掛かり、この”セーフポイント”の水場で気絶してたみたいだ。ちなみにこの流れの先は滝つぼらしく、落ちてたらと思うと少しゾッとした。
あと、ついでにこの世界では生後1日以上2日未満である事を伝えると、 えーーー!!と全員に驚かれ
ヴァンパイアなのになんで臭くないの?と聞かれたので、ヴァンパイアの秘宝を見せるためにマントをバッと開いたら、キャーーー!!と3人に叫ばれた。
時間は少しかかったが、お互いに何が起きたかの経緯を把握し、共有した。
『それじゃあ、とりあえずこのダンジョンを出て街に戻る事が先決だね』
ゼ「ええ、このダンジョンに”オークジェネラル”が居たことを報告しなければなりません。それにレオニーさんのアンデットモンスターの大群と”リッチ”の件。これが本当なら相当マズい事態です。早急にギルドマスターに報告する必要があるでしょう」
レ「クリス、オークの大群はまだ近くにいるのか?」
ク「ちょっと待ってね。・・・そうね、近くにいるのだけで7匹いるわ。ダンジョンの入り口までここから約2時間程だから、ざっと3,4倍の数は遭遇する事になると思う」
リ「大丈夫だよ!レオニーさんもいるし、余裕余裕☆」
『そのノリはフラグが経つからやめときな。てか俺オークと戦った事ないから余裕か分からんよ?』
レ「ポジティブ過ぎる妹を持つと兄は苦労するぜ・・」
オークは銀級クラスのモンスターで、一対一ならそんなに苦労はしないらしいが、耐久力が高く、数も多い為、ダンジョンではかなり厄介なモンスターらしい。
確かに耐久力が高いと1匹倒すまでに時間がかかると大変だな。ダンジョンでは質も怖いのがたまにいるが、何より数で攻めてくるのが恐ろしい。
ク「あたしが先導するからついてきて!トラップはあらかた解除したとは思うけど、気を付けてね!」
レ「おうよ!」
『トラップに引っ掛かったらごめんね』
リ「大丈夫だよ!レオニーさんなら!」
ゼ「後ろの警戒は僕が担当します」
みんなと打ち解けてる間に身体の再生も完了し、ほぼ回復した。
セーフポイント付近に多くのオークが待ち構えているからすぐに戦闘になるだろうけど、ソロプレイと違って今はパーティープレイだ。やはり安心感が全然違うな。
ク「くるよっ!!」
セーフポイントを出てすぐに、待ってました!!とばかりに1匹のオークが向かってきた!
体長は1,8m程だろうか。丸い肥満体のようなお腹に緑色の身体。頭は豚のような顔をしており、お腹で前が見えないはずなのに、器用に棍棒を持ってズシズシと近づいてくる。
【種族:オーク 】
【属性:悪 】
【レベル:17 】
【戦闘力:3,700 】
【スキル: 強撃 体力アップ 】
【弱点:水 】
【特徴:常に食べ物を探しており、口に入る物はなんでも食べてしまう悪食家。時折ヒューマン等を食料にしたり種族繁栄の為に攫って行く。集落を作る本能あり。動きは鈍く知性も低いが、耐久力が高く力も強い為、正面から戦うのは危険。水が大の苦手であり、水系統の魔法、スキルが有効 】
レベルは俺より高いが戦闘力で言えば10分の1以下だな。スキルにある体力アップってのが気になるが、あれも吸血で奪えるのかな?
あれっ?そういえば戦闘力が全部見える。
”リッチ”や”ヘルハウンド”は殆ど見えなかったけど、もしかしてレベル差がありすぎると表示されないのか?
鑑定でモンスターの能力を分析している間に戦闘が始まる
ゼ「レオン、補助魔法をかけるよ!エンチャントパワー!、エンチャントプロテクト!」
レ「サンキュー!おら来いよ!こっち向け豚野郎!!」
ゼファーが支援魔法で前衛のレオンの能力を向上させ、レオンがオークの気を引く。その間に
ク「後ろがガラ空きだよ!ハッ!!」
クリスが後ろに回り込み、二刀の短剣でオークを切り裂く!
「グモォォォーーー!!」
背中を切られたオークが怒りでクリスを棍棒で叩き潰そうとする!
しかしクリスの素早い動きに、鈍いオークの攻撃が当たるわけもなく空振りする
そのスキにレオンとゼファーがオークに斬撃と突刺でダメージを与えていく!
オークもターゲットをレオンに切り替え攻撃を繰り出すも、盾で滑るように弾かれる!
ほとんど攻撃を喰らう事なくオークはどんどんダメージを重ね、もう瀕死になっているが、リディアの水魔法でトドメをさされる!
リ「アクアスプラッシュ!!」
水のマシンガンのような魔法でオークの身体を穴だらけにした。オーバーキルだな・・
連携が上手く取れている為、危なげなくオークを撃破した。だが、それも一対一ならの話だ
ク「奥から3匹来てるよ!」
ゼ「右の通路から2匹!左も1匹見える!」
今戦ってる場所は広い長方形のような広場になっていた。
セーフポイントの通路が南側だとすれば丁度この広場は十字路のような通路にもなっている。
通路で戦うには狭い為、開けた場所に出てパーティーで戦うにはいいが、三方向から同時にオークの増援が来た。
ゼ「僕が左の1匹を対応する!レオン!クリス!右側の2匹をお願い!リディアは水魔法で援護だ!」
レ「了解!」
ク「わかった!」
リ「二人とも!水魔法を撃つ時は声をかけるから通路から離れてね!」
三方向から合計6匹のオークが来ている。
ゼファーが1匹、レオンとクリスとリディアが2匹対応するようだ。
『・・・えっ?俺一人で3匹相手にするの?』
リ「レオニーさん、そっち片づけたらゼファーおじさんを援護してあげて!」
しかも一番最初に倒す事前提!?
初パーティープレイにしてはなかなか鬼畜プレイをさせてくれるなぁ
俺がオーク3匹相手でも絶対倒せると信じてくれてるリディアなりの信頼の証なんだろうか。なんでそんなに信頼してくれてるんだろ?
でもまぁ、年下の女の子に信頼されるのは悪くない!
いっちょぶちかましてきますか!
「グオオオーー!!」
「ブフォォーー!!」
「ギュルルルルッ・・!!」
3匹が俺にターゲットを定めたみたいで威嚇の咆哮をしてくる!
1匹だけ腹の音が鳴ってるように聞こえるのは気のせいか?
『能力を鑑定したからってのもあるんだろうけど』
こういっちゃなんだが、ぶっちゃけ全然怖くない。”リッチ”や”ヘルハウンド”に比べたら、ただの緑色のでかい豚に見えるし、それに加えて
『俺も空腹なんだよ!3匹まとめて吸い尽くしてやるぜっ!!』
メシの時間だ!と俺も笑顔で威嚇の叫び返しをすると、向かってきた3匹のオークが突如急ブレーキで足を止め、反転して逃げ出そうとする。
逃がすか!!お前らは3匹の子ブタだ!! 例えレンガの家に隠れてもムダだぜ!!
腹ペコの狼になった気分で3匹のオークに襲い掛かる!
1匹目!飛び掛かった際にオークの首に腕を回し、スリーパーホールドをかける!
「ゴキッ!」
あら?首の骨が折れたみたいだ。意外とモロいな
2匹目!逃げ足が遅いから前に回り込んだ。オークが驚愕の顔をし、手に持っていた棍棒を振りかざしてくる。遅いっ!棍棒を避け、そのままラリアットを顔にぶちかます!
「ブチッ!!」
げっ!顔が半分取れた・・
頭部を半分失ったオークはよろよろと動き続け、しばらくしたら倒れて動かなくなった。
「グモァァァァァーーー!!!」
兄弟?をやられて激怒した3匹目のオークが、鉱山の壁に刺さっていた火のついた棍棒のような松明を手に取り、乱暴に殴りかかってきた!
ヴァカめ!俺が火傷を負ったら逃げるとでも思っているのか!
怒りで我を忘れているような、がむしゃらに松明を振り回しているオークの後ろに回り込み、鉱山の壁を蹴ってオークの後頭部めがけてジャンプした!
『よいしょーーー!!』
「グモォォ!?」
某国民的プロレスアニメの技の1つ カーフ・ブランディング をオークにかける!
やり方がほとんど分からなかった為、単純に力任せに押し倒した!
「ボゴォッ!!」
地面に顔面ごとめり込み、痙攣している身体が少しずつ動かなくなっていく
『ふぅ・・・いや、これはなんというか』
苦戦する事なく、3匹まとめて倒したことで確信する。
『俺めっちゃ強いじゃないか!!』
戦闘力が10倍以上の差があったから3匹相手でも勝てるとは思ったが、想像以上に自分が強い事にビックリした!
特に素人同然のプロレス技でも身体能力の差が圧倒的なのか、耐久力の高いオークをほぼ一撃で倒した事に歓喜した!同時に体臭以外でも勝てる事に自信がついた!
まだ経験は全然ないけどこれから積んでいけばいい。
いつか俺を一方的に追い詰めた”リッチ”にも勝てる日が絶対に来る!
喜びとちょっとばかりの怒りを少し抑え
『さて、お食事タイムといきますか!』
前世の時も豚肉は大好物だった!
若干見た目が前世の豚と違う、加工前の肉、色も緑色と普通なら食べようとすら思わないんだろうが
『やっぱりこの身体になって、血の匂いを嗅ぐとどうも食欲が湧くんだよな・・では、いただきます!』
ガブリッ!!
おぉ、血が濃厚で美味い!ソーセージの原液のような味がする!
無我夢中でオークにかぶりつき、3匹ともあっという間に干からびていった。
『ふぅ、ごちそうさまでした・・ヘルハウンドの時より冷静に血を吸えたから、量はめっちゃ吸ったのに気分は悪くならないな』
結構お腹が膨れた所で、ステータス画面を出して見てみる
【名前:レオニー 】
【年齢:15歳 】
【種族:ヴァンパイアロード 】
【属性:不死 】
【クラス: 】
【レベル:10 】
【戦闘力:40,800 】
【能力値:筋力:D 体力:E+F 魔力:B 敏捷:F 技量:F 耐性:F 特殊:B 幸運:なし 】
【スキル:吸血 腐敗臭 自己再生 鮮血魔法 鑑定 】
【強奪スキル:瞬足 】
【特殊スキル:神頼み1日1回 】
【血液貯蓄量: 21,000ml 】
お!レベルが上がってる!2桁台に乗った!
ん?体力Eの横に+Fってついてる・・?もしかしてオークの【体力アップ】のスキルを吸収して能力値が上がったのか?
それならオークの血を吸いまくったら体力めっちゃ上がるんじゃ!?
自分のスキルや敵のスキル、1人でブツブツと分析してると・・・
リ「コラ!レオニーさん!倒したらゼファーおじさんの援護に行ってってゆったのに!」
頭をロッドでポカッと叩かれてリディアに怒られた。
『あっ!うっかりしてた!ごめんごめん、すぐに駆け付けるよ!』
リ「もう私が倒したよ!」
レオンとクリスとリディアがオーク2匹を片付けた後、俺がゼファーの援護に行っていない事にご立腹のようだ。
リ「心配したよ。レオニーさんがオーク3匹程度に負けるわけが絶対ない!って思ってたし、私達より倒すのも早いと思ってたから、こっちが片付いてゼファーおじさんの所に行ったら、レオニーさんがいなかったから」
あ、違った。心配してくれてたのか。
戦闘狂だし、性格もバーサーカーみたいなものだと思ってしまってたけど
女の子らしい一面もあるんだな。疑ってごめんよ。
リ「でもさすがだね!オークの死骸が干からびてて分かりづらかったけど、外傷が全然なくて、どうやって倒したんだろうと思ってよく見たら首の骨が折れてた!やっぱレオニーさん凄く強いね!ほぼ一撃でオークを倒したんでしょ?私も早くオークを一撃で倒せるようにならなくちゃ!☆」
やっぱこの子サ〇ヤ人の生まれ変わりで間違いないんじゃね?
見た目が華奢で可憐な女の子なのに、言動がえぐい・・
レ「おーい!二人とも!早くダンジョン脱出するぞ!」
ゼ「まだまだオークはいます。気を抜かないで進みますよ!」
おっと、そうだった。まだダンジョンの中なんだから分析や考えるのは後にしよう。
それからはオークに遭遇するものの苦戦する事なく進むことが出来た。
途中で5,6匹エンカウントすることもちょくちょくあったけど、俺1人で2,3匹相手にする事で他のメンバーの負担を減らせた。
何より血を吸ってる所はあんまり見られたくない。
ゼファーの時と違って、モンスターを干からびるまで吸うシーンは他人から見れば、なかなかグロテスクだろう
クリスが正確なルートを迷う事なく進んでくれる上にトラップ解除までしてくれるから、ダンジョンってこんな簡単なのか?って錯覚してしまいそうになる
あと分かったのは、オークの血を何度吸っても体力+Fのランクは上がらなかった。もっと上位のモンスターに付いているスキルを奪えば上がるのかもしれない。
血は吸い過ぎるとちょっと気持ち悪くもなった。
昔、ピザの上に乗ってるサラミを丸ごと一本食べた時のような感覚だ・・
適度な運動でお腹を空かせた時に血を吸って、貯蔵量に貯めていく方がいいな・・・
そしてついに
『・・・・』
ダンジョンの出口に着いた。外は昼下がりのような明るさだ。
ク「外だーーー!あーお日様の光が気持ち良い~」
レ「まったく、一時はどうなるかとヒヤヒヤしたぜ!」
ゼ「鉱山の暗くジメジメしたとこに長く居たせいで、太陽の光がとても気持ち良く感じますね」
リ「う~ん!気持ち良い!ポカポカするね! あれ、レオニーさん?・・そうだ!」
太陽の光が眩しくて見えないが、リディアが何か踊ってるようにも見える
リ「ほらっ!レオニーさんも早くこっちにおいでよ!」
夜まで俺だけここで待ってようかと考えてると、ニヤついた顔をしてるリディアがこっちに来た。
ダンジョンの出入口で立ち止まっている俺の腕を引っ張り、外に連れ出そうとする。
『え?ちょっ!待て待て待て!消滅しちまうから!』
リディアには俺が太陽の光を浴びると消滅する事は伝えてある。
にも拘わらず、強引に腕を引っ張り外に連れ出そうとする!
ちょっ!! 何してんのリディア!? マジでやばいから!!
てか腕力つえーー!?15歳の女の子の力じゃないぞ!?
リ「大丈夫っっ!だからっっ!!」
ちょっっ!!やめーーーーーーーーーー!!