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#6 瀕死の似た者同士。ダンジョンパーティー

『ぅっ・・・』






激痛で眠りの中を無理矢理起こされる。


瞼をゆっくりと開ける・・・


身体が濡れてる・・・


俺、何があったんだっけ・・・?







『確か・・・空港に朝に着くから夜にパーティーを組んでダンジョン攻略しようって・・・』






痛みと疲労で記憶が曖昧だ。






『そしたらめっちゃ強い敵がいてパーティーが全滅して・・・あれ・・?いや、違うな・・』






川に落ちた後、流されている時にあちこち岩か何かにぶつけたのだろう。


激しく身体の一部を損傷し、腕や足は折れている。


自己再生がゆっくりゆっくり身体を修復してくれている。






『あぁ・・そうか。俺ヴァンパイアロードに生まれ変わって、消臭ビーズを見つけて喜んで・・・ビーズは・・あぁ、よかった・・この感覚は落っことしてないな・・・』






ヴァンパイアの秘宝は落としていなかった。


アイテムボックスみたいな便利な物は、この世界にあるのかもしれないが今は持ってない。


腰に巻いてあったシーツのようなものをギュウッ!!っと思いっきり縛り、ビーズをある”場所”に落ちないように固定していた。







『玉が・・3つあるこの感触・・あぁ、川に流されなくて良かった・・』







命と同じぐらい大事な玉を失っていない事にホッとしつつ現状を把握していく。


川に落ちた時に気絶して、身体の力が抜けた為 上手く浮いたみたいで溺死はしなかったようだ。


ここは洞窟のような、いや遺跡のようにも感じる。





『もうちょっとだけ血液貯蔵量残しておけばよかったかなぁ・・・出血が酷くて身体が冷えてるから寒いよ・・・』





後先考えずに浪費する癖は、転生しても変わらないらしい。





『自己再生で身体が治る前に出血死しちゃいそうだ・・・んん?』





何やら奥の方から喧騒のような、慌ててるような声が聞こえてくる。





ク「早く!セーフポイントに早くっ!」


レ「くそっ!リディア死ぬなよ!! ゼファー!回復魔法が使えないなら薬草はないのか!?」


ゼ「もう薬草も使い切ったよ!魔力もしばらくは戻らないし・・」


ク「レオン!あんたの回復薬はっ!?」


レ「もう使った!だが傷口が深すぎる上に回復薬はあくまで体力と小さい傷を回復させる薬だ!上薬草でもなきゃこの傷は防げないっ・・!このままじゃ出血が多すぎて・・くそ!!」


ク「そんな・・!リディア!!」


レ「とにかくオーク共が去ったらすぐに街に戻るぞ!クリスは毒袋を作っておいてくれ!ゼファー!お前は応急処置でもなんでもいいからリディアの傷を塞ぐ方法を考えろ!」


ゼ「わかってるよ・・!僕もクレリックの鍛錬時に何か使える施術はなかったか今必死で考えてるんだ!!」






おぉ・・・やっと人に巡り合えた・・・まだ会ってないけど・・


あれがいわゆる”ダンジョンパーティー”ってやつなのかな・・?


15,6歳の女の子が着てるローブが真っ赤に染まってる・・


お互い出血死しかけてるとは気が合いますね・・・


いや、そんな事言ってる場合じゃないか・・







『大丈夫かい・・?』







気が動転しているのだろう・・


全く俺に気付いていない4人組の3人に声をかけてみた。






レ「だっ誰だっ!?」


ク「今の声はっ!?」


ゼ「・・ヒッ!!」





ゼファーと呼ばれていた男の子が俺に気付いた。


他のメンバーも俺を見つけた。






レ「な、なんだお前はっ!?」


ゼ「ヴァ、ヴァ、ヴァ・・・ヴァンパイア・・!?」


ク「・・っ!!!」





随分警戒しているなぁ・・・


クリスって呼ばれてた女の子は口を両手で塞いで絶句してる。





ク「みんなっ!鼻と口を塞いで!! ヴァンパイアの匂いを嗅いだら最後、死ぬまで眷属にされるわよっ!!」


レ「うっ・・!!」


ゼ「コクコクッ・・!」






マジかよ、ヴァンパイアの匂いを嗅いだら死ぬまで眷属になっちゃうの?


俺の体臭なら眷属になる前に匂いで死んじゃうんじゃないか・・?


まぁとにかく落ち着かせないとな・・・





『皆さん落ち着いて・・俺は確かにヴァンパイアだけど消臭剤のおかげで今は匂わないから・・ほら、嗅いでみ・・?』





激痛が走りながらも折れた腕を3人の方に向かって差し出す。


だが、3人ともかなり警戒しているせいか嗅ぎに来ない。


いや、普通に考えたら当たり前か・・?


さて、どうしたもんか・・・





ク「っ!!ま、まずいよ・・・!レオン、ゼファー!リディアの鼻と口を塞がないと・・!ヴァンパイアになっちゃう・・!」


レ「だ、だがリディアは瀕死だ・・!息をする体力も限界なんだ・・!今呼吸器官を塞いだらリディアは・・!」


ゼ「もうここを離れよう!匂いが充満したら僕らも眷属に・・!」


ク「無茶言わないで!あのオークの群れにリディアを抱えて逃げ切れるワケないでしょう!?」





3人の言い争いをジッと見つめていた・・


若いなぁ・・俺もあのぐらいの歳の頃はよくケンカしてたっけか・・


まぁ今はその女の子を助けるのが最優先なんだから落ち着きなよ・・




自分が原因とはこれっぽっちも思っていない俺は、ふと足元が輝いているのに気付く。


あれ?そいやこれってあの木の皮だよな・・?


足が折れてるのは確実だけど・・足元の傷は完治してないか?



あの時剥がして作った”サファイア色の樹皮サンダル”に鑑定をしてみる。





【霊樹の皮サンダル】

【説明:最上級ポーションの素材になる樹皮。そのまま使うと徐々に傷を癒し、猛毒や止血を治療する。サンダルに変化させられたものの、効果は失われない】






あ~・・・どえらいもんをサンダル代わりに使ってたんだな・・


歩きづらいけど汚れないからいっか!って思って捨てなくて良かった・・


俺は少し動くようになった腕で自分の足からサンダルを脱がし・・


水虫はなかったよな・・?と少しためらったが





『ゼファー君・・だったよね・・? これ・・霊樹で出来ているからその子に使ってあげて・・』




ゼ「れ、霊樹っ!? エリクサーの材料になるって言われてるあの霊樹!?」




思わず両手で塞いでいた鼻と口を開け、叫ぶゼファー




レ「ゼ、ゼファー!霊樹ってなんだ!?」



ゼ「エリクサー、つまり最上級ポーションの材料になる幻の素材だよ・・僕も図鑑では見たことあるけど、まさか存在しているなんて・・」



ク「で、でもヴァンパイアが持ってるものだし、信じないほうがっ・・!」



ゼ「クリス、あれは間違いなく霊樹だと思うよ、多分・・・ ツルみたいなのがくっ付いているのがよく分からないけど、図鑑で見たって以外にも、あの皮から凄い魔力を感じる・・それに今はリディアを救う手段がないんだ。レオンがなんでもいいから傷を塞ぐ方法を考えろって言うのなら・・あのヴァンパイアが持ってる霊樹を僕は受け取る」



ク「しょ、正気なのっ!?ヴァンパイアなの レ「ゼファー、それで本当にリディアが助かるんだな!?」



ゼ「確信はないけど、助かる可能性はあるよ」



レ「なら俺が取ってくる!」



ク「もう・・私はどうなっても知らないよっ!」





話がまとまったみたいだ。


レオンと呼ばれた20歳ぐらいのリーダー格であろう男が近付いてくる。


つかこいつ手で鼻と口を隠してるけどイケメン顔だな・・羨ましいなクソッ


そのまま俺の手に持っている霊樹を片手で乱暴に持っていき、





レ「・・もしこれでリディアが助からなかったら・・絶対お前を殺す」





なかなかひでぇ事を言うぜミスター 


人の好意は素直に受け取ろうぜ?


あとマジで殺さないでね・・?




レ「ゼファー!」


ゼ「まかせて!」




霊樹の皮サンダルを上手く切り取って、リディアって呼ばれていた女の子の傷口にガーゼのように傷口全体に敷いていく。


霊樹が淡く光り始めたら、みるみるうちに血が止まっていくのが見える。


良かったじゃねぇか・・ほんと良かったよ、これで殺されないで済む・・





レ「ゼファー!」


ゼ「うん、血は止まった!でもまだ・・血が足りないんだ。血を止めれても血の量が足りないんだ・・今のリディアの体力じゃ街までもたないかもしれない・・」


ク「わ、私の血を使うのは!?」


ゼ「ダメなんだクリス。僕とレオンはα型だろ?クリスはΩ型。リディアはβ型だから血が合わないんだ・・」


ク「そ、そんなぁ・・」


レ「くそっ!ここまできたのにっ・・!それなら全力でオーク共を蹴散らしながら街に戻る!それしかもう方法はない!」


ク「レオン・・まだ私の索敵範囲に最低20匹はオークがいる・・」


レ「に・・・」






盛り上がっとるなぁ・・・若いっていいねぇ・・・


ふぅ~俺ももう片方の霊樹とやらの自作サンダルを右横っ腹に当ててたおかげで血は止まった。


まぁ俺も血を流しすぎてフラフラしてるが・・


黙りこくってしまった3人に俺は声をかける






『もしも~し?』





レクゼ「「「・・・・」」」





『しもしも?』




レ「やかましい!ぶっ殺すぞマジで!!」





『お、おう、ごめんよ。いや、さっきから聞こえてたんだけど、その女の子、血が足りないんだろ? 俺は見ての通りヴァンパイアなんだが、鮮血魔法ってのがあってな。その魔法の中に”輸血”ってのがあって、血液型に関係なく血を分け与える事が出来るんだ。ただ、俺も色々あって血がからっぽでね、血液貯蔵量も自分自身も・・もし君達の誰かの血を分けてくれたら鮮血魔法が使えるようになって、”輸血”でその女の子を助けれるよ?』





3人は茫然とした表情でこっちを見ている。





レ「ふ、ふざけるな!!誰がヴァンパイアの言う事を信じろっていうんだ!!」



ク「そ、そうよ!ヴァンパイアは匂いだけでなく、血を吸っても眷属に出来ると聞いた事があるわ!騙されないわよ!」



『でも君達、俺の匂いをもう嗅いでると思うよ?』




3人はいつの間にか手で鼻と口を塞がないといけない事を忘れていた。


もう充分に俺の体臭は嗅いでるはずだろ?


まぁ秘宝が無ければ俺含めて全滅してただろうけど・・・




レ「しっしかし・・!」






ゼ「僕は信じるよ」






レク「「ゼ・ゼファー!?」」




ゼ「多分このヴァンパイアさんは悪い人じゃない・・と思う。普通ヴァンパイアは僕たちチルドやヒューマンをエサとしか思っていないはずなのに、この人はわざわざ声をかけてリディアを助ける方法を教えてくれた。だから僕はこの人を信じたい、いや信じるよ。それでリディアが救えるなら」






やっぱ回復職ってのは仲間想いが多いのかな?このゼファーって子良い子だな。


ところゼファーって子、10歳ぐらいの子供に見えるんだが、この子何歳なんだろう?


こんな小さい子が危険な冒険をするってのは何かワケがあるんだろうな・・・


おじさんこういうのホロっときそうになるんだよ・・・





レ「・・分かったよゼファー。リーダーの判断に俺は委ねるよ。」



ク「そうね・・ここで言い争っても事態は好転しないし・・年長者の言う事は聞かないとね・・任せたわよリーダー!」



ゼ「みんな、ありがとう。 お待たせしましたヴァンパイアさん。僕の血を使って下さい」







『・・・あの、つかぬ事をお伺い致しますがゼファー君はおいくつ何でしょうか?』







ゼ「お恥ずかしながら僕チルド族なんで、見た目に威厳がなくて・・・あっ歳は今年で60歳になります。」








マジかよ!?


俺の前世の倍生きてるじゃないか!!


てか年上だったのか・・・!!





えっ・・?待って、俺今から60歳のおじいちゃんの血を吸う事になるの・・?

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