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#16 誓った言葉

デカイ......!!



離れていてもオーガロードの体長が馬鹿みたいに大きいとは思っていたが、近付くとシャレにならん迫力だな……



これ鬼の形をしている3階建ての家じゃないよな??



オーガの倍以上、9m近くはある......!!



俺を見下ろし、不気味にニヤリッ...と笑ってる顔にゾッとした。



悪寒が止まらない……背中のスノウのせいか?



ただ、デカいだけに鈍足だろう。腕のリーチと大剣にだけは意しておこう。




『俊足ッ!!』




瞬足で後ろに回り込もうとした瞬間、





「ゴォゥァァァァ!!⦅アイスフィールド!!⦆」





オーガロードが肩で担いでいた大剣を地面に突き刺した途端、地面があっという間に凍て付く氷の大地に変化した!





『な、なんだ!? うぉ!?足が......!!』





足の裏が氷でへばりついて動けない......!!


いきなり俺の”スピード”を殺しに来やがった......!!


こいつ、ピンポイントで俺を一瞬で捕まえた?いや、違う!


走り疲れて大岩に腰掛けて、休憩してたんじゃない。


配下のモンスター達と、俺の戦いをジッと観察して……




俺の瞬足スキルの”対処法”を模索してやがったのか!





『瞬...足...!!』





動かねぇ...!まるで氷が意思を持って、足を引っ張っているような感覚に襲われる。




「ガラァァァァーーー!!(フェイタルクラッシュ!!)」




『ガフッッッ......!!?』




足に意識をとられている間に、オーガロードの大剣が俺の横っ腹に直撃した!



痛みを通り越して、麻痺しているような自分の身体じゃないようなこの感覚……!!



凍っていて身動きが取れない足ごと思いっきり吹き飛ばされる......!!



意識が一瞬飛んだ後に、空と地面が交互に視界を切り替え、舌が土の味を知る。



上を向くとオーガロードが見える……



50mは飛ばされたのだろうか……立ち上がろうとすると、




『ご、ごぅぉぇぁぁ......!』




息ができない......!先ほどの一撃で胃が破裂したかもしれない......!



血反吐と吐瀉物が一緒になって出てくる。先ほどの麻痺してた感覚が戻り、凄まじい激痛で視界が霞む……!!



オーガの知性が皆無に対し、やっぱ”ロード”だけあるな……



信じられないぐらい強いのは分かっていたが、に頭の回転が早いのは誤算だった……!




リ「レオニー!!」




『……!!』




腹を片手で抑えながら、もう片方の手をリディアに向けた。




来るなっ……!!




声が出ない...!やばい、苦しい...!!




リ「……!!サラちゃん!レオニーを助けて!!」




イフリートのサラちゃんが「御意」と言ったかのように、軽く首を縦に振ってからオーガロードに突撃した!



イフリートがオーガロードに飛び掛かる! 体格差はおそよ3倍。



イフリートが頭突きを繰り出し、オーガロードの顔面に穿つ。



少し痛かったのかオーガロードは目を瞑りながらも、大剣でイフリートを薙ぎ払う。



イフリートが1回転し、着地する。



イフリート「ファイアーボール!!」



イフリートが初級火魔法を放った。ゴブリンやブロンズ級メイジが放つファイアーボールは、直径約30cm程度の大きさだ。



だが、火の精霊のファイアーボールの大きさはその5倍もの大きさを誇る!



自身の体長の半分にも及ぶファイアーボールを”連続”で放つ!



無詠唱で繰り出されるファイアーボールにオーガロードも焦った。



オーガロード「ゴルルル!!⦅ブリザード!!⦆」



幾つも飛んでくるファイアーボールを、オーガロードの吹雪が凍らせていく。



イフリートは考えた。



先ほどの”インフェルノ”で一気に魔力を消費し、ファイアーボールなら少ない魔力で確実にダメージを与えれるはずが、オーガロードの氷魔法は自身の魔力に匹敵する威力だ。



ならば!と、接近戦を選択する!



先ほどと同様、オーガロードに突撃し、今度はタックルをかました!



体格差があるとはいえ、パワーもあるイフリートのタックルに、オーガロードは少し苦しそうな顔を浮かべながら……また不気味にニヤリッと笑った。



イフリートがタックルをぶちかました後に、吹き飛んだオーガロードを見ると



オーガロードは”こちら”を見ていなかった。



顔を向けている先に、炎の精霊を召喚した”少女”がいたのだ。




イフリート「……!! フ、フレイムロック!!」




イフリートは焦った。いや、焦ってしまった。



オーガロードをタックルで吹き飛ばした方角に、なぜか我が主がいる。



少しでも主とレオニーとやらの男から離そうと距離を置いて戦っていたのに。



……!! 違う!オーガロードはタックルで吹き飛ばされた”フリ”をして



炎の精霊を召喚した少女の近くに”跳んだ”のだ!



早く矛先をこちらに仕向けようとオーガロードに”燃え盛る大岩”を放った!




オーガロード「ゴォォォァァァ!!⦅アイスウォール!!⦆」




イフリートの”燃え盛る大岩”とオーガロードの”氷結の大壁”が激突する!



魔法のぶつかり合いの結果、フレイムロックとアイスウォールが飛び散り相殺!!......したかと思った……




オーガロード「ガルゥァアアアア!!⦅アイシクルランス!!⦆」




空中に飛び散る大岩と氷の塊が、オーガロードの姿を隠してしまい、焦りもあったイフリートがスキを作ってしまった。



一瞬の瞬きの間に、イフリートの額に氷の角が生えていた。



”氷結の大槍”アイシクルランスがイフリートの頭を貫いていた。




イフリートがリディアを見ながら「申し訳ありません......マスター......」と言ってるように体が燃え尽きたように消えていく。




リ「あっ......!!」




自らの想いがこもっていた精霊が負けた……



頭が真っ白になり、リディアは両手で口元を抑えながら両膝を折った。



オーガロードは炎の精霊を召喚した主に、改めて狙いを定めた。




オーガロード「ゴォォォォォォォ!!⦅フリーズバイト!!⦆」




オーガロードの氷で出来た大蛇のような牙が、リディアを噛み殺そうと襲い掛かる!





リ「レオニー……!!」





目を閉じてヴァンパイアの名前を呼ぶ。あぁ、死ぬ前に言っておけば良かったかな~……。





⦅ガリッ!!! グチュゥ……!⦆





鈍い音と共に血飛沫が舞った。





リ「……?」





目を閉じ、祈っていた。


痛くてもいい。死んでもいい。


ただ、名前とカッコ付けようと見せてくれた背中だけは忘れたくなかった。





『こらこら……!せっかく俺が絶対にリディアを死なせないし、絶対に守る!って言ったんだから諦めるなよ……!!』





そこには自然と敬語をやめて呼んでいた名前の男がいた。


そこにはカッコよく見せようとしてくれた背中があった。


そこには忘れちゃいけないセリフを忘れそうになり、諦めかけていた事を叱咤してくれるヴァンパイアがいた。





リ「レオニー!!! ……レオニー?」





確かに絶対に”リディア”は死なせない。絶対に守る!そう誓ったヴァンパイアの男はそこに居た。



だが......



彼は瀕死だった。死にかけの一歩手前でリディアの前に立っていた。



氷の牙が彼の心臓を貫き、リディアに小さい氷の破片が顔にあたる程度、で牙は止まっていた。





『ヒュー……ヒュー……ぁ、リディア……?無事だったか……?ケ、ケガして……ないか……?』





もはや風前の灯火のレオニーが、リディアにケガしてないか?と声をかける。


前世の時は誤って命を消された。今回は絶対に死なせない!と想っていた少女を守って、命の灯が消えそうになっている。


人って凄いなぁ……まだ出会って2日ぐらいなのに、意識をすると急に想いの丈が膨れがある。時間とかそんなの関係ないな……あ、そういや俺は人じゃなくてヴァンパイアだったな……


そんな事を考えながら、ゆっくりと後ろに倒れた。


地面にぶつかる寸前に、リディアに支えられる。





リ「レオニー!? いや!!うそでしょ!? 死んじゃダメ!!!!」





リディアが叫ぶ!涙は出ていない。リディアは怒っているのだ。


守ってくれた事は本当に嬉しかった。絶対に死なせない、絶対守る!その言葉を忘れかけていた自分にも、”私”を守る為に死にそうになっているレオニーにも怒っている。


感情が怒りに満ち溢れた瞬間、入れ替わるように悲しみと涙が溢れてきた。





『ヒュー……あんのハゲじいさんめ……鮮血魔法の説明も下手くそだったし……ヴァンパイアの属性:不死ってやっぱ詐欺じゃねぇか……ったく……ゲボッ!』





何度も死にかけたが、今回は本当にダメかもしれないなと、少し創造神デウスに新しい人生をくれたのに、すぐ死んじゃったら申し訳ないなぁと、言葉と思いは別の事を考えながら少しだけニヤっとしてしまった。




ゲ「……ハッッ!!みなのもの!!オーガロードとオークキングを討ち取るぞ!!リディアとレオニー君を助けるんじゃ!!」




ゲオルグはまるで止まっていた時間を呼び覚ますように、全員に叫んだ!!


門を死守していたシルバー級やブロンズ級の冒険者や、さっきまで城壁で震えていた一般兵も戦場に出てきて、リディアとレオニーを救おうと、オーガロードに向かって走る!


オーガロードはオークキングに、「俺に殺らせろよ?」と目で威圧し、群がってくる人間を叩き潰してグチャグチャにする、楽しい!!と歓喜の笑顔を見せる。



セ「毒だ!オーガ族は毒が有効だ!ポイズン系の魔法とスキルを使え!!」



タ「エンチャントディヴァインプロテクト!!」



セスがシルバー級以下全ての冒険者や一般兵に弱点の毒を使えと指示を飛ばす!


タイガーは戦場に駆り出てきた者達に、上位防御魔法を次々とかけていく!



ゲ「おぉぉぉ!!!」



ゲオルグはチャージでスキルの威力を上げていた。


フルチャージまで貯め、一気にオーガロードに叩き込むつもりだ。



2匹のモンスターに、今度は防衛側が数の暴力を仕掛ける!


そんな獲物達に、オーガロードは怯む様子もなく、口を大きく裂け、笑っていた......!









次々とオーガロードに仕掛ける冒険者と一般兵が、肉片となって宙を舞う。


数の暴力は確かに脅威だ。


だが、圧倒的強者のオーガロードに成す統べなく、まるで冒険者達は、ボウリングのピンがストライクで吹き飛ぶような、一度の攻撃でグチャグチャにされて空に舞い散っていく。


波状の攻撃を仕掛けている間に、タイガーはリディアの元に着く。



タ「大丈夫か!?」



リ「……」



すでに呼吸すら殆ど聞こえなくなったレオニーの頭を両膝に乗せ、リディアはうつむいたまま動かない。



タ「レオニー、無茶しやがって……!キュアハイヒーリング!!」



タイガーが上位回復魔法をレオニーにかける。


だが、レオニーに回復魔法は効かない。いや、効き目がないんだ……


”ヴァンパイア”のレオニーが体力、傷を回復する手段は”血を吸う事”



タ「えっ!?なんで傷が塞がらないんだべ……!?」



リ「……もういいの。あなたも逃げて」



タ「何を言ってるだ!あんたとレオニーを助けに、みんな戦場に駆け付けたんだぞ!」



すでにオーガロードにかなりの人数がやられている。


オーガロードとオークキングを倒さない限り、この戦いは終わらない。


もちろん、リディアとレオニーを助けに来たのもあるが、オーガロードを倒そうとみな躍起になっていた。




ゲ「ソニックバスター!!」




すでにフルチャージ”4回目”のゲオルグの攻撃が、僅かではあるがオーガロードに傷をつけている。


相手は不死身ではない!必ず倒せる! オーガロードの小さい傷が増えている事に、希望を持ち包囲戦を仕掛けている。だが、戦死者も負傷者の数もすさまじいスピードで増えていく。



タ「くっ……!!リディア!オラはここを離れるだ!そのバカを叩き起こすの任せたぞ……!!」



タイガーが戦場に復帰しに行った。




リ「ほんとバカだよね……私……」




もう既に息絶えてるかもしれないレオニーに、涙をこぼしながら呟いている。




リ「あなたと出会ってまだたったの2日程度なのに……3回も助けてもらっちゃったね……」





想いは何処で生まれるか分からない。



想いなんてそんなわけないない。と思い込む。



想いに気付いて世界が凝縮していく。



想いをゆっくりと育てていくのも良い。



想いがいきなりMAX近くになっても良い。 だが……






”想いに上限なんてものはない”





リ「レオニー……」





リディアはソッと唇を、想い人の唇に重ねた。

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