1 俺の幼なじみは可愛い
幼なじみを愛でるだけのお話(つまりいつも通りですw)
「はぁ?うるさい死ね」
女子のグループが教室で楽しく雑談してるところに無謀な告白をした男子生徒への返答がそれだった。水無月紗夜。俺、天ノ川暁斗の幼なじみだ。
そして、今現在告られた幼なじみの美少女は所謂アルビノと呼ばれそうな程に真っ白な綺麗な髪と、どこか妖艶な赤い瞳を持つことで校内で知らない者はいないほどに有名である。その容姿に群がる男は数しれず、しかし誰からの告白も受けないので”白銀の令嬢”とか影では呼ばれてるらしい。
「おうおう、相変わらずお前の幼なじみは人気だねぇ」
涙目で教室から出ていく男子生徒を面白そうに見つめながらそんなこと言う親友の山口。そう、これはある意味日常の光景なのだ。
「しっかし、本当にあんな美少女なのに誰からも告白受けないのは謎だよな。本当はお前が付き合ってるとか?」
「どうかな」
「ま、お前はないわな。幼なじみって言っても、あの手の怖い美少女よりも地味系とかが合いそうだしな」
反論しようか迷ってから俺は止めておくことにした。やぶ蛇はごめんだ。チラッと紗夜の方を見ると先程までと変わらずにクラスメイトの女子と楽しそうに話していたが………
(あー、これは今日もあれかなぁ)
内心で苦笑してしまう。俺だけが知ってる純然たる事実。それは決して知られることはないだろう事実だが、まあ、それでいい。
なんてことなく家に帰って部屋で寛いでいると、誰かが家に入ってきた音が聞こえてくる。俺の家は父親が早くに亡くなってから所謂母子家庭なのだが………母親は仕事でほとんど帰って来ないというか、知り合いの所謂男装喫茶みたいなところで働いてるのだが、そこで女の子をお持ち帰りして自宅に招かれることが多いらしくて全く帰って来ないのだ。
そしてこの家の鍵を持つのは母親以外には1人しかいない。
ガチャっと部屋のドアが開く。と、そこには幼なじみの紗夜が立っていて俺の顔を見ると抱きついてきて。
「うぅ………あっくーん!」
「はいはい。よしよし、よく頑張ったね」
「うぅぅ…………ついつい男の子だと口調がキツくなるよぅ………それにあっくん以外を好きになるわけないのにぃ………」
「うんうん、俺も紗夜しか好きになれないよ」
スリスリと甘えてくる紗夜。学校でも凛とした姿から想像もつかない人が多いだろうが………これが本来の紗夜なのだ。口下手でコミ障で俺にベッタリ。
「もうやだぁ………友達も皆彼氏の話して………私はあっくんとのこと話せないのに………」
「別に紗夜が良ければ話してもいいんだよ?」
「だめ!恥ずかしいもん………それに」
ぎゅーっと抱きついてきてから紗夜は嬉しそうに言った。
「あっくんのこと私だけが独り占めしたいもん」
はぁ………本当に狡いなぁ。まあ、今までの説明で察しはつくだろうけど………俺と紗夜は男女の付き合いをしている。そしてまあ、紗夜は自分で言うのもあれだけど俺にベタ惚れなのだ。まあ、俺もだけど。そして俺の前だとポンコツ可愛くなる幼なじみ………それが水無月紗夜なのだ。