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嫌われ者の公爵令嬢。

嫌われ者の公爵令嬢。

作者: 池中織奈

「――オティーリエ様とは話さない方がいいと言われたの」



 私、オティーリエ・シェフィンコがそんなことを初めて言われたのはいつだったか、鮮明に思い起こす事が出来る。



 それは五歳の、はじめての公のパーティー。

 私は正直言って、公爵家待望の女児だったのもあって我儘に育っていた。その自覚はあった。だけど、甘やかされて育った世界から、飛び出した先で、周りに距離をおかれ、敬遠され、私は驚いた。


 まだ話してもおらず、関わってもいなかった。なのに、私とは誰も話してくれなかった。ううん、話してくれてもよそよそしかった。



 それに傷ついて、最初は我儘を言った。何で私に構ってくれないのかと声をあげた。だけど周りは冷たい目を向けるだけだった。

 それからパーティーなどでどれだけ我儘を言っても、皆私を見てくれなかった。話してくれなかった。



 私はそれに傷ついて、悲しくて、しゃべりたくて―――だから、私は屋敷の者たちに聞き取り調査をした。

 私が悪いのではないか? とそう思ったからこその行動だった。



「ねぇ、私、悪いところある!?」



 突然そんなことを問いかけてきた私に、屋敷の者たちは面食らった顔をした。

 ――今思えば我儘だった私が急にそんなことを言い始めて、何か粗相を犯したら大変なことになるのではないかと不安だったのだと思う。

 最初は答えてくれなかったけれど、何度も問いかけるうちにようやく私の悪い点を教えてくれた。

 そこで私ははじめて自分が我儘で嫌われているということを自覚した。知ったからこそ、私が我儘だから皆、私によそよそしいのだろうかと気づいた。




 だから――私は一生懸命、屋敷の者たちに聞きながら、悪い所を治していったのだ。







 ―――それから、十年。





「シェフィンコ様だわ……」

「まぁ、恐ろしい……」

「ルイーザ様が……」



 私は、嫌われたままだ。



 あの五歳の時と変わらない。パーティーに出ても、遠巻きにされている。

 王侯貴族なんて薄っぺらい関係を築いている例は幾らでもあるが、それでも私のようにパーティーで心を許せる存在が両親以外皆無なのは珍しい。



 ……私が我儘で、嫌われる行動ばかりしていたかといえば、それは違う。

 自分で言っても信じてもらえないかもしれないが、少なくとも屋敷の者たちは私が変わったと、そうちゃんと言ってくれている。それに屋敷の外で出来た、このパーティーにはいない交流のある人達だって私と仲よくしてくれている。


 ……だけど、王侯貴族の世界。私が生きている世界で、私は嫌われている。




 五歳の時に実感した、自分が嫌われているという事実は翻らなかった。




 それは、なぜかといえば、こそこそと話す彼女たちの会話の中に聞こえてきたルイーザという女性が原因である。




 ルイーザ・ミッシェルン。

 この国の王太子の婚約者にして、この国において最も影響力のある女性だ。

 美しい金色の髪を持ち、その美しさはさながら、いつも笑顔をたやさずとても人気のある王太子妃だ。



 その王太子妃は……、なぜか私のことを嫌っている。


 まともに話したことなんてほぼない。だけれども王太子妃は私のことを嫌っている。――五歳の時にあれだけ私が遠巻きにされていたのも、私の我儘が原因なだけではなかった。

 四つほど年上の王太子妃が、私のことを憂いていたのだという。それが原因だった。


 ――彼女はどうしてだか、私がどうしようもないほどひどい女性に見えるらしい。それでいて、私が幾ら我儘を治したとしても、彼女にとってはそれが計算にしか見えないらしい。

 私が幾ら優しく対応しようとも――それでもその心は周りに伝わらない。

 あらゆる行動が誤解され、私という存在は十年経った今も、遠巻きにされ、悪役令嬢だと、信じられない噂が出回っている。



 昔、私はその噂を払拭しようと頑張った。沢山行動して、自分から好かれようとした。けど、それは上手く行かなかった。空回りにしかならず、結果として王侯貴族の中で私と心から親しくしようとする人はいない。


 また王太子妃を溺愛している王太子はもちろん、なぜかその弟の第二王子にも嫌われている。

 私は何もしていなくても、私は第二王子の婚約者の座を狙っている存在らしい。まったくもって意味が分からない。


 そんなわけで昔は色々頑張った私だが、最早最近は諦めている。



 王侯貴族間で嫌われていることは、仕方がないと。王太子妃に嫌われている限りどうしようもないのだと。



 そうやって諦めて過ごしている私は、まもなく王侯貴族の通う学園に入学する。

 王侯貴族たちに嫌われまくっている私には、地獄のような場所だ。……いや、もう、本当に。



 正直ただでさえ、十年間嫌われまくっている私は、学園卒業後の進路についてお母様とお父様にさっさと相談済みである。

 一つの約束をしたのだ。

 ――もし、学園在学中に婚約者が作れなければ、平民として生きさせてほしいと。



 驚くほどに嫌われている私だが、幸いなことに両親は私を可愛がってくれている。

 私が嫌われていることには戸惑っているようだが、ちゃんと私を気にかけてくれているのだ。

 王太子妃と同年代のお兄様は私のことが死ぬほど嫌いらしく、数えられるだけしか顔を合わせたこともない。たまに会っては「ルイーゼ様を~」と謎の糾弾をされるのだ。本当に、意味が分からない。



 これから三年間の学園生活――、私はとても憂鬱だけど、これを乗り越えれば平民として自由に生きられるのだと思うと、希望も抱いている。



「目指せ、平民生活だわ。学園で婚約者を作らずに、平民として悠々と過ごすわよ!!」



 パーティーが終わったあと、私は馬車に揺られながらそんな決意を宣言する。

 そんな私の言葉を聞いて、昔から仕えている侍女は「その意気です!!」と応援してくれるのだった。




 ――嫌われ者の公爵令嬢。

 (公爵令嬢は王侯貴族に嫌われている。なので、いっそのこと自分から平民になろうと決意するのであった)



オティーリエ・シェフィンコ。


公爵令嬢で、見た目も美しい。赤髪で、吊り目の美人さん。

そんな恵まれた立場にいるが、権力があり人気者の王太子妃に驚くほど嫌われていて、その影響で王侯貴族の間では嫌われている。公爵令嬢なのに婚約者もいない。第二王子との婚約話はあったが、幼い頃に第二王子側から断れて破談(本人は知らない)。

王侯貴族に嫌われまくり、諦めている。使用人たちや、屋敷の外の人たちとは仲良しである。王侯貴族の社会は生きにくいので、親と学園で婚約者が出来なければ平民になると約束をした。

目指せ平民!! 自由に生きるぞーという気持ちに満ち溢れている。街に遊びに行ったりしているので結構庶民的。


王太子妃 ルイーゼ・ミッシェルン


美しく、人気者の王太子妃。オティーリエより四つ上。昔からオティーリエになぜか良い感情を抱いていない。

この人が良しといえば、良しとなるという風に影響力が強く、その影響でオティーリエは王侯貴族に嫌われ、誤解されまくっている。

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― 新着の感想 ―
[一言] 続きはないのですか!?
[良い点] テンポ良く、文体が読み易いです( *゜∀゜) 主人公ちゃんが、自ら反省し、改善しようと努力できる良い子。 この国の貴族の坊ちゃんたちには、主人公ちゃんは勿体なさすぎますね! [気になる点…
[一言] え、マジで何が言いたいの?
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