1年生 冬2
2月と言えば、バレンタインだ。例に漏れずこのファンタジーな世界でも、女の子が好きな男の子にチョコを渡す日として存在している。この謎の風習が500年続いてるのがおかしい。前世の日本でようやく、半世紀前後つづいたのに対して500年である。とても歴史の重みを感じるよ。
私は、渡す相手なんていなかったので存在自体忘れてたが、なんだかんだイケメンが多いこの学校では一大イベントのようだ。
「エリちゃん、これあげる」
とセレナが渡してきたのは、いかにも本命だなと思えるような、ハートの箱に入ったハート型のチョコだった。はしたないが、一口つまみ食いをしたら美味しかったので、その事をセレナに伝えたら、
「そう、えへへ。嬉しいな」
とデレデレした、可愛い。
放課後セレナと一緒に帰ろうとセレナを探してると行列を見つけた。なんの行列かと思い、先頭を見るとセレナがいた。
「チョコレートオンリーの方は、こっちの箱に。それ以外のものがついてる方はこっちの箱に入れてください。無記名のチョコレートは禁止です」
「セレナ、なにやってんの?」
私がセレナに話しかけると列がとても騒がしくなった。
「本物よ」
「神々しい」
「拝んでおこう」
なんて声があちこちから聞こえてきた。
「それで、この列とこの人達はなんなの?」
「えっとね……」
簡単に説明するとこの人達は、私のファンクラブの会員らしい。そこに並んでいたのは、私に渡すチョコをセレナに渡していたらしい。
「なんで、セレナに渡す必要があるの?」
「私が説明します」
と、横から女の子が出てきて話し始めた。
「セレナさんは、ファンクラブの会長です。そのお仕事の一環としてチョコレートを回収してるのです」
「セレナ、私そんなん全然聞いてないんだけど」
「だって、言ったら。エリちゃんがどっか行っちゃう気がしたもん」
「安心して、私はどこもいかないよ」
「ほんとう?」
と首を傾げるセレナ、可愛い。今すぐ抱きしめたい。
「うん」
そしたら、セレナが抱きついてきた。やったぜ。
結局私は、チョコレートはセレナに回収してもらうことにした。量が多すぎたのが主な理由だった。せっかくなので、その隣で握手会も実施した。たまにはファンサービスも大事だよね。
「エリザ、俺にチョコはないのか?それと蹴ってくれ」
チョコレートを全て受け取り、セレナと帰ろうとするとアーサーが現れた。ものすごいウザイ。
「エリちゃんが、変態王子に渡すわけないじゃん。身の程をわきまえろ」
とセレナが私の気持ちを代弁してくれた。でも、ちょっと口が悪くないかな。ほら、そばにいたランスロットがプルプルしてるよ。
「そういえば、アーサー。あんたチョコ何個貰った?」
「聞いて、驚くなよ45個だ。あと、蹴ってくれ」
「蹴らない、そして残念だったな私は100個だ」
「「なっ!」」
どうやら、この数値は校内最高らしく。影で聞いてた男達にショックを与えたらしい。ドMのアーサーもこれはショックだったらしくなにも言わず帰っていった。
✩
3月のホワイトデーも、もちろん500年前から存在する。この風習が長続きするのは、絶対おかしい。
それは、そうとお返しは大変だった。可愛いファン達へのでお返しなのだから、完璧美少女の名にかけて、それなりのものでなくてはいけない。市販品というのももってのほかなので、100人分を手作りのチョコをまとめて作った。個別にメッセージカードも添えた。それを貰ったファン達は、五体投地をした。私の人気は、宗教レベルなのかもしれない。
「ししょう、でしにもチョコ渡すべき」
「なにも貰ってないのに渡すわけないでしょ」
と突然現れたモルドレッドの提案を断った。モルドレッドは3分後、
「はい」
と購買で買ってきたチョコを渡してきた。
「まぁ、交換条件というやつね。仕方ないから、ひとつあげるわ」
「ありがとう、ししょう」
そう言って、モルドレッドは去っていった。
「見てたよ、エリちゃん。モルドレッドに甘くない」
とセレナは、ほっぺたを膨らませて怒っていた。可愛い。
「はい、セレナ」
と私は、セレナにプレゼントを渡す。
「これは?」
「セレナには、感謝してるから。日頃のお礼もかねてのプレゼント」
私は、照れくさくて顔を逸らした。
「エリちゃん!大大だーい好きだよ」
といつもの様に抱きついてきた。




