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1年生 秋

 夏休みが明けてからか私の取り巻きの様子がおかしい。マスラでは、私の家柄や成績を狙って数人の取り巻きがいた。


 入学当初は多少はいたんだが、アーサーのやつをぶん殴ってから誰1人いなくなった。


 別に、ヨシエやセレナがいたから別に気にしてはなかったんだけど、夏休みが明けてからは異常に増えて困ってる。


 私が朝、学校に着くと


「おはようございます」


 と80人近い人間が挨拶してくる。


 正直なんか怖い、そんな謎の取り巻きに怯えてると


「おはよう、エリちゃん」


 とセレナが近づいてくる。癒しだ。


 私が校内に入ってくると取り巻き達も付いてくるので大名行列みたいになる。


「エリザはなんになる気なの?」


 とヨシエに聞かれたが、私に言われても困る。


「ししょう、きっとこの国のおうさまになる」


 とどこからか現れたモルドレッドが呟く。


「えっ、なんであなたここにいるんですか?エリちゃんのストーカーですか。気持ち悪いです、さっさとどっかいってください」

「でしはししょうについてくもの」


 とセレナとモルドレッドがケンカをはじめたが、いつものことだし喧嘩するほど仲がいいというやつだろう、ほっとこう。


「エリザ、蹴ってくれ!」


 と前からド変態ドM王子がきたので、さっそく私は笛を鳴らす。


「アストロン!最近鳴らす回数が多いぞ」

「文句なら、アーサーに言いなさい」

「ランスロットくん、さっさと変態王子を持っていって。エリちゃんと同じ空間にいて欲しくないから」

「おい、ホーリナー。お前も王子への口の利き方を考えろ」

「ランスロット君、あなたとも同じ空間にいたくないんだけど」


 セレナの口撃にランスロットは泣きそうになり、アーサーを連れて逃げていった。


 そんなやり取りは日常茶飯事になってきたので、もうどうでもいいが後ろの取り巻き達がちょっと多いよねみたいな事をセレナに話した。


 すると翌日、取り巻きが10人ほどに減っていた。


「当番制にしたから、もう大丈夫だよエリちゃん」


 とセレナが言ってた。当番制とは、どういうことかと疑問に思ったが、私の本能がこれ以上は聞いてはいけないといっていたのでやめた。


 ✩


 10月になると、ファンタジー世界にはけしからんことに学園祭というものが存在する。クラスで展示したり、劇をやったり、模擬店だしたりするまんま日本のあれだ。


 1年生は、4つに分けられそれぞれのグループで決めた何かをするということだ。


 マスラでは、セレナと攻略対象全員が所属するグループが劇をやり、私のグループもセレナに対抗して劇をやり、そして惨敗するという話だったんだが、


「やったね、エリちゃん同じグループだよ」


 おっと、私とセレナは同じグループのようだ。


 攻略対象共は全員私たちとは違うグループに固まっているぞ。


「エリザ」

「アストロン」

「ししょう」

「エリザベート嬢」

「脳筋令嬢」


 うるせぇ、攻略対象全員で私になんの用だよ?


「話しかけるのは、1人にして貰えます」

「それじゃあ、俺が」


 とアーサーがでる。


「お前には、負けない。あとけって……」


 突然アーサーが倒れた。


「はい、エリちゃんは今から準備で忙しいのであなた達と話してる時間はありません!シッシ」


 とセレナがアーサーをつき倒して、攻略対象達を置いて私を引っ張っていった。


「もう、エリちゃんは可愛いんだから、油断するとすぐ男の人にからまれちゃうんだから気をつけてよね!」


 その言葉そのままお返ししますよセレナさん。


 さて、私達の発表の内容だが、マスラと同じように劇に決まった。内容もマスラと同じで龍に捕まった少女を王子が助け出すという前世で言うとロミオとジュリエットと同じくらい有名な劇だ。


 配役は、姫の役はゲームと同じでセレナなのだが、王子の役は本来は攻略対象から選べるのだが、奴らはいないからか私になった。


 「エリちゃんならきっと王子様が本物より似合うから頑張って」


 とセレナは目を輝かして私にそう言った。

 まぁ、たしかに私でもあの変態王子より王子できる自信あるわ。


 私はやりきった。2週間の準備期間、夜遅くまで毎日ヘトヘトになるまで練習した。


 文化祭の間は劇の間の時間は休憩に当てていたため他グループの催しはほとんど見れなかった。ゲームでは、デートイベントなんてものがあったけど、私の体力では外を回る余裕なんてなかった。アイツらどんな体力してるんだよ。


 そんな奴らの劇だけど、凄かった。父を殺した罪で故郷を追い出された龍の王子が、追い出した真犯人の叔父を倒して国に平和にするという話なのだが、人気声優の声帯を持つ奴らにミュージカル形式はピッタリで見た人は劇に飲み込まれていった。


 しかし、どこか近似感は否めなかった。なんだろうなーと思ったら、ラ●オンキングだった。ずるいよ、ディ●●ーなんて勝てるわけないよ。そんな訳で最優秀賞は奴らのライ●ンキングに決まった。


 一日中働き詰めだった私に同じ班の人達は気を効かせてくれたらしく片付けはしなくていいということで、私は屋上で一休み中である。


 下の校庭を見ると他の生徒達がせっせと後片付けをしているのを見ると文化祭が終わったんだなという実感がでてくる。もう少し遊びたかったとか優勝したかった……なんて別に思ってなんかないんだからね。1人ツンデレムーブをしていたら、セレナがやってきた。


 「エリちゃん、おつかれ。はい、これ他のクラスから貰った模擬店の焼きそば」

 「ありがとう、セレナ」


 私は思っていたよりもお腹が空いていたらしくセレナから貰った焼きそばをペロリと平らげてしまった。


 「ねぇ、エリちゃん」

 「なぁに、セレナ?」


 セレナはちょっと神妙な面持ちで私を見る。


 「エリちゃん実は、とっても悔しかったんじゃない?」

 「そんなことないわ、あの王子達パクリとはいえ文句の付けようのない完璧な演技だったわ」


 はい、嘘です。本当は、めちゃくちゃ優勝したかったです。


 「ふーん、そう。でも、私はとっても悔しかったよ」

 「……!」

「追い詰めたぞ、邪悪なる龍め。彼女を返せ!」


 突然セレナが劇中の王子のセリフを再現した。


「王子様、私のために無茶はしないでください」


 私もセレナに乗っかって少女のセリフを言う。

 私達は、屋上の上でひっそりと役を交換して劇の再現をしたのだった。


 「お嬢さん、もう大丈夫ですよ」


 という最後のセリフまでやり切った。


「どうしたの、セレナ?」

「エリちゃん、もう泣いてもいいんだよ」


 ダメだった。劇の王子様レベルで優しいセレナの声に私の涙腺は限界を迎え泣き出してしまった。


「うわあああ、勝ちたかったよ。沢山練習したもん。ぐやしいよ」


 そう言って泣きわめき私が泣き止むまでセレナは私をずっと抱きしめてくれた。


 その時のセレナがちょっと王子様みたいでキュンとしたのは秘密。

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[良い点] きゃあああ!ありがとう、ありがとう!
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