2年生 秋
私が国家転覆罪で捕まってから約三日ようやく取り調べらしい。この3日間は暴れない代わりに高待遇でお城の客まで軟禁されていた。まぁ、貴族のお嬢様だしそこはラッキーだったな。
「取調べの時間だ付いてこい」
と無愛想な兵士に連れられ取調べ室元い謁見の間にやってきたなんで?
「きたか、エリザベート・アストロン」
そう言って私を出迎えたのは髭面のジジイ、この国の王様だ。
「どういう目的で私を捕まえたのかしら?」
「しらばっくれても無駄だ。お前が余の計画を無駄にしたのは調べがついてる」
理解が追いつかない、この王の目的が私にはさっぱり分からない。
「私は何もしてないわ」
「なにを言ってる、魔術教団を潰したのも戦争の計画を台無しにしたのもお主だろ」
王のその言葉で私は理解した。こいつは私の敵だ。おそらく、マスラのストーリーの裏にある戦争は、こいつが仕組んでいたのだ。魔術教団を使って、強力な魔法を作ろうとし、隣国との仲は最悪な状態。セルギウスが起こそうとしたクーデターもこいつの手のひらの上に置いておき、攻撃する理由を作るためか。
「戦争は起こらない方がいい事だわ」
そう私が言うと王は、
「絶対に負けない戦争があるなら、そっちの方が利益になる」
「そんなん……あるわけが」
「あるんだよ。一番近くにいたのに気づかなかったのか?」
「一番近く……?セレナのこと?」
そう私が呟くと、王は邪悪な笑みで答える。
「そうだよ……セレナ・ホーリナーの事だ。あいつの魔法は光属性ではない、祝福属性だ。絶対勝利の魔法を使える、最高の道具だ」
そう王が言った瞬間私の中のナニカがブチ切れた。気づいた時には、王の顔面をぶん殴っていた。
「セレナを道具扱いするな!ふざけるな、そんなん絶対に私は許さないわかったか!」
私の周りに兵士が集まってくる。
そんな兵士をお構い無しに私は怒りで無意識にゴーレムを作り始める。
「て、敵襲です!」
と謁見の間のドアを兵士が勢いよく開けてそう言った。
「なに……!」
「アーサー様とモルドレッド様を筆頭にエリザベート様の解放を求めています。アストロン家及びその他貴族も加担してる模様です」
「あのバカ息子、余を愚弄するつもりか!いやもしかして……」
と私の方を見てきたので私はなんとなく意味深に笑ってみた。
「やれ!あの女狐が王子達を唆したのだ」
おいおい私に罪を擦り付けないでくれよバカ王、しかし並の兵士の攻撃は私特製超巨大ゴーレムによって全て防がれた。
しかも、10分後には、アーサー達の軍が城の内部まで突入してきたので、王はビビって大臣の空間移動の魔法で逃げていった。
「エリちゃーん」
とセレナが抱き着いてきた。
「よかったよー、エリちゃんがいてよかったよ。エリちゃんがどこか行っちゃうかもしれなくて、とても怖かったんだからね」
とセレナは泣きついてきた。とても可愛い。
「大丈夫よ、私はどこにも行かないわ」
とセレナに言ったのだが、当の本人は
「はぁはぁ、三日ぶりのエリちゃんの匂い」
と私の匂いを嗅ぐのに夢中になって聞いてなかった。まぁでも、そういう所も嫌いではない、むしろ好きなくらいだ。
「待たせたなエリザ、ちょっと準備に手こずってしまった」
と後から現れたアーサーは私に頭を下げる、
「顔をあげなさい、私は別に酷いことは何もされてないから」
「もし、不満なら俺を殴ってもいいからな」
「それは、あんたがされたいだけでしょ」
やはり、このド変態ドM王子と話してると調子が狂う。
「でも、ししょうかなりおこってるね」
「そんなことな……」
私は真横に作ったゴーレムを見た。そのサイズは城とさほど変わらなかった。実際、城の天井を突き破って城の中から青空が見えるほど巨大なゴーレムがいるのだから城サイズで間違いないだろう。
「やりすぎちゃった、テヘペロ」
「やりすぎだー!この、脳筋令嬢!」
ゴーレム恐怖症のセルギウスが恐怖を誤魔化すように怒ってきたので、もう一度立場を分からせるために土のナイフをスレスレに投げてやった。
「ふはぁ、エリちゃん成分補給完了!アーサー、次のステップに進んでいいよね!」
「あぁ」
と私に抱きついてたセレナは立ち上がる。
「さぁ、みんな準備して!」
「ねぇ、セレナ次のステップてなぁに?」
私がそう聞くと、セレナは笑顔で、
「今の王様を追い出して、私とエリちゃんを主体とした理想の国家をつくるの!」
おいおい、それ大丈夫なのだろうか。