2年生 夏
アーサー主催のダンスパーティーから約3ヶ月が経ち、校内魔術戦の日が来た。この間何も無い事はさすがになかったが、どれも大したことないので省略する。
今回の校内魔術戦は歴代最高の盛り上がりらしい。その理由は当然、優勝者は私の婚約者になれるみたいだ。
は?
理解が追いつかない。自分で言うのもなんだが、私はいい女だ。記憶を取り戻した際に気付いたように文武両道、容姿端麗、さらに性格もいい。悪い所がひとつもない最高の女だ。そんな私を、妻にしたい人間なんて大勢いる。なので、みんな私を求めるために頑張ってやがる。
ふざけるな、私の意思はどこにあるんだ。
そんな感じのことをアーサーの所まで苦情を言いに行ったら、いい感じに誤魔化されて気づいたら家に帰っていた。あの男、良く考えれば腹黒キャラだったわ。ド変態ドM野郎すぎてすっかり忘れてた。
そんな王子は、開会前に私の所にやってきた
「俺が優勝する」
どっかのヒーロー漫画のライバルキャラみたいなことを言い出した。
「残念ですが、あなたは優勝できません。だって私が優勝するのだから」
横から突然現れたセレナはそう言って、アーサーにつっかかった。
「いや、優勝するのはぼく、にいさんにもまけない」
と今度はモルドレッドまで現れた。
その後もセルギウスやら、ランスロットなどが現れてさわがしくなった。
「エリザ、モテモテね」
「まぁ……」
ヨシエの一言に私は納得のいかない顔しかできなかった。
「あのさ、誰が優勝するのか争っているみたいだけど、前回優勝者の私が簡単に負けるわけないから倒せるものなら倒してみなさい」
私がそう言うと周りの奴らは黙って、去って行った。
☆
大会はスムーズに進行してベスト8による決勝トーナメントが始まった。前回のベスト4である、私にアーサー、モルドレッドとタナカ・アンジャスティス・マサルだ。誰だよ、タナカ以下略。初めて聞いたんだけど。
そんな事をセレナに話すと、
「有名だよ、タナカ君」
と衝撃の事実を私は知った。
ちなみに後の4人は、セレナにランスロット、セルギウス。あとスタンという、マスラメンバーオールスターだ。
私の初戦の相手はセルギウスだ。
「お前には、感謝はあるが負けてやらないからな」
と息巻いていたが、私が始まってすぐにゴーレムを大量召喚したら即降参した。
「降参とは、情けないわね」
と少し煽ってみると、
「そんなこと言うなら、すこしくらい手加減をしてくれ」
とこぼした。どうやら魔術教団潰した際にゴーレムがトラウマになったらしい。
モルドレッド対スタンはモルドレッドの圧勝だった。まぁ、私の弟子があんな軟派野郎に負けるわけないもんね。別になにか教えた事もないんだけどね。
ランスロット対セレナは熱戦だった。始まる前から両者には重い雰囲気があった。
「エリちゃんを貶める悪人覚悟!」
「アーサー様を罵る大罪人覚悟!」
両者ほぼ互角の戦いだった。セレナが魔法を放ちランスロットは、自らを強化して殴るの繰り返し。何十回もそのやり取りを繰り返し、両者満身創痍の状態になって最後まで立っていられたのは、セレナだけだった。
「エリちゃん、勝ったよ!」
そう言って倒れ込むセレナに私は膝枕をしてあげた。
「えへへ、エリちゃんいい匂い」
☆
タナカ対アーサーはアーサーの圧勝だ。始まってすぐに概念領域を利用して巨大な剣を呼び出しタナカは降参した。そういえばタナカはとても地味な顔をしていた。ごく平凡な人という感想しかなかった。もうすでに顔を忘れそうだ。
さて、次は私対モルドレッドである。
「ししょう、負けないから」
「師匠を超えることなど不可能と教えてあげるわ」
始まってすぐにに私はゴーレムを展開する、しかしすぐにゴーレムは消えてしまった
「ホーリーアローレイン」
とモルドレッドは呟いた。そういえばこの子弓の魔法を使うんだっけ。
「やるね、じゃあこれはどう?」
と私は前回モルドレッドを倒した重力魔法を発動させる。
「マッハ」
と重力がモルドレッドに掛かる前にモルドレッドは私に音速で弓を打ったようだ、とっさに土壁を作りガードするが、重力魔法の方は解けてしまったようだ。
「アース・スフィア」
モルドレッドの周りを球状の土壁で埋め尽くされる、モルドレッドは壊そうとするが次から次へと新しい壁が出ていきさらに壁が迫ってくるのでモルドレッドは逆転の手段がないことを悟り、リタイアした。
「さすがししょう、てもあしも出なかった」
「私に勝てるなんて思わないことね。まぁでもモルドレッド強くなったわね」
私はどこのツンデレだと思わなくはないが、まぁいいよね。
「うん。やっぱししょう結婚しよう」
こいつは何を言ってるんだ。と思っていると
「「ちょっと待った!」」
とセレナとアーサーが魔法をモルドレッドに打ちながら現れた。
。⌫
「エリちゃんと結婚できるのは、優勝者だけだからね!ねぇ、アーサー」
「まったくもってそのとおりだ。モルドレッド、それだけは許されない。それと、エリザ蹴ってくれ」
「いやよ」
「はい、変態王子。だまろうね」
なんかこの二人実は仲がいいんじゃないかと思えてきたな。
「それじゃあ、セレナ。エリザと結婚するのは誰か決めようじゃないか」
「ええ。エリちゃん優勝するから見ててね」
おいおい私を忘れるな。
そうして二人の戦いは始まった。この戦いはアーサーに分があると思う。アーサーはレアな剣属性でかつ概念領域を扱える。それに対してセレナは珍しい光属性だが概念領域ではない。
概念領域を使える人間と使えない人間には、大きな差がある。少なからず相性というのはあるがそんなのが関係ないほどだ。例えば火は水に弱い、しかし概念領域ならば水を燃やす火を作るなど容易いことなのだ。弱点を覆す力が概念領域なのかもしれない。
アーサーは剣をセレナに飛ばすどこかの英雄王みたいな戦い方をしているがセレナは光の盾でそれを防ぐ。
「セレナ終わりにしよう」
そう言ってアーサーは神々しい剣を取り出した。
「それは……」
セレナがアーサーに尋ねる。
「これはエクスカリバー」
いやいや去年と形が全然違うんだけど。マスラ最強の剣のエクスカリバーはそんなかたちじゃないよ。
「このエクスカリバーは別世界のとある王が使った、絶対に勝つという剣だ。君の負けだよ、セレナ」
悪人ぽい顔でセレナに降参を進めるアーサー。しかしセレナは、
「私は絶対にエリちゃんと結婚するんだから」
とアーサーに立ち向かう。セレナその言葉は少し私が恥ずかしいよ。
アーサーとセレナの戦いは進んでいく。無傷なアーサーに対してボロボロのセレナ、こうなると周りはセレナを応援したくなって、
、⌫
「頑張れ、セレナ」
と私も応援してしまった。私を起点にたくさんの人がセレナにエールを送る。応援されたセレナは光り輝き、某少年漫画のスーパー戦闘民族みたいになってしまった。この土壇場で強化とかどこの主人公だよ。いや、この子忘れてたけど主人公だったわ。
そうなったセレナはとても強く、がちのエクスカリバーを持ったアーサーに引けを取らない強さだった。
「セレナお前の勝ちだ」
そう言って、アーサーは倒れた。その数秒後にセレナも倒れた。
「エリちゃん、私勝ったよ」
「そうね」
そういうセレナの笑顔は、とても輝いていた。
1時間後決勝戦が行われた、回復魔法で回復したセレナだったが、
「エリちゃん、負けないよ」
と言い再び倒れてしまった。
こうして私は校内魔術戦2連覇を果たし、私は婚約者を自由に決める権利を得た。
☆
「エリザベート嬢の2連覇を祝福して乾杯!」
おい、スタン。なぜ貴様が仕切る。どうやら、2年生の校内魔術戦の後は、パーティーを開くのが通例らしい。
「エリちゃん、おめでとう」
「ありがとう」
セレナも立ち続けることはきついみたいだが、無事にパーティーに参加することはできた。
パーティーもそろそろお開きかなと思ったところアーサーが私のところに来て、
「それで、エリザ誰と結婚するんだ?」
その一言で会場の雰囲気がガラリと変わった。
「ちなみに面倒な手続きがないので、俺がおすすめだ」
「寝言は寝てから言ってね」
「はぁ……言葉責めも悪くない。俺と結婚しよう」
この男めんどくせぇ!
「うん、準優勝だし。セレナと結婚しようかな」
「えっ……」
セレナは驚いた顔をした後とてもうれしそうな顔をした。可愛い。
「うちの国は同性婚は許可してないんだがな」
セレナは今度はこの世の終わりみたいな顔をした。
「それはあんたが頑張りなさい」
「ああ、善処する」
久しぶりにアーサーの本気で不快そうな顔を見た。
「エリちゃん、私と結婚してくれるの?」
セレナが抱きついて質問してきた。
「うん、セレナがいいなら」
「私はエリちゃんじゃなきゃ、やだ」
なんだ~こいつ可愛すぎるぞ。
「エリザ、桃色空間作っているところ悪いけど周りを見なさい」
ヨシエの一言で周りを見回す、なぜか大勢の兵士が私を囲んでいた。
「エリザベート・アストロン、国家転覆罪で逮捕する」
えっ?