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㉖ 最後の夜叉通信

伯母からの衝撃的な告白で自分の出生の秘密を知った瑞生ですが、夜叉やサニ、本永のお蔭で心折れずに前を向くことができました。その翌日、遂に最後の夜叉通信の収録が始まります。

【 二〇一五年六月二七日 前篇 】


 カレーの匂いがする。クミンの香りがピンと立ってる感じはガンタのカレーだ。カレー? 朝からカレーはないな。じゃ今は昼?夜?


「瑞生、起きろよ。そこで寝てると邪魔だろ」

湧き上がった笑い声を耳にするにつれ、意識がはっきりしてきた。がばっと起き上がると、食堂の壁際にある荷物置きのソファに寝ていた。

「あれ?」

「あれ?じゃないよ。面会室のテーブルに突っ伏してテキスト枕に寝てたらしいぞ。サニが見つけてソファまで運んでくれたんだって。勉強し過ぎはよくないぞ、…お前、真っ白いパジャマなんてよく着るな。色白だから幽霊みたいで怖い怖い。早く着替えて来いよ、昼飯だ」

ガンタに急かされて裸足のまま自分の控室に行った。何も変わりなく世の中は動いているようだ。洗面所で恐る恐る鏡を見たが、変化は見つけられなかった。どこも蒼くないし、注射痕もない。ただ、生成りのパジャマが昨晩の事を物語っている。

「“生成り”って表現をガンタは知らないんだな。大人の癖に」

そう言う鏡の中の瑞生の姿がイグアナだったりもしなかった。


 「そう言えば、もう東京のスタジオにいなくていいの? この所行ったり来たりだけど」慎重にカレーを一口味わってみる。

「美味しい…」

 ガンタがガハハと笑った。「五臓六腑に沁み渡るってか? 遭難救助されたわけでもないのに、変な奴だな」


 卓上のスマホがブルって、ガンタの顔から笑みが消えた。

瑞生ははっとして思わず立ち上がった。

瑞生にウィルスを渡したから夜叉は具合が悪化した? ウィルスは夜叉の生命維持に欠かせないもので、それを放出したから命が尽きそうなのか? もしかして夜叉の入院を今日に決めたのは、前日の金曜日に引き継ぐと決めていたから?

 黙って座り直すとカレーを食べ続けた。もう味覚が麻痺し咀嚼するだけだったが、ともかく食べ終えて夜叉の寝室に向かった。

 

「よぉ分身。よく来たな」一段と小さな声で夜叉が出迎えてくれた。「体調、どうだ?」

「夜叉、僕の事より自分でしょ? 僕に引き継いだせいで力が無くなったの? 色がまた薄くなってるね…」言いながら瑞生は動悸がしていた。

 「気にするな。単に寿命だ」いつもの夜叉節だけど声に力が無い。全体の蒼さが薄れ、髪だか鬣だかは銀色の枯れすすきみたいで、猟師に追い詰められ倒れ込んだ野生動物のようだ。

 瑞生は思わず夜叉の手を握った。言葉より先に涙が出た。

 夜叉は優しく髪を撫でてくれた。瑞生は涙に暮れながらぽってりした指の感触を味わっていたのだが、いつもは静かな部屋の外で人の動き回る音がするので顔を上げてサニを見た。


 サニは残念そうに、「今日はヤシャ通信を先に撮るんだ」と教えてくれた。ざわついているのはスタッフが準備しているからだったのだ。

 「残念ながら最終回の夜叉通信は録画になる…」

この容態では夜叉通信をライブでやるのは難しいからか。なんとか最終回をやらせてあげようとみんな急いでいるんだ。


サニに退席を促されて、なんとか涙を呑みこみ言葉にした。

「夜叉、死んじゃ嫌だ…もっと、もっと一緒にいたいよ」

「俺もそうしたいが、いつまで俺を保っていられるのかわからない。誰でもそうだが人生の終わり方は選べないからな。最期の最期は会えないかもしれない。だが言ったろう、灰になっても傍にいるって。きっと灰になってからの方が俺を傍に感じるだろう」

スタッフがサニに催促している。ドアが開けられた。

 「嫌だ。夜叉、行かないで、一人にしないで、死なないで…」縋り付いて出た言葉は情けない事に懇願ばかりだった。思いがけないことに倍の力で夜叉が腕を掴み瑞生を引き寄せた。

「…いいか。瞳の中にイグアナを見ろ。そいつと相談して決めていくんだ」

耳元に囁くとそのまま夜叉は瑞生の唇に唇を重ねた。その瞬間、夜叉の隅々まで行き渡っているウィルスと自分の中のウィルスが繋がっていると感じた。瑞生の身体に潜んだウィルスは今は表に出ていないだけで、夜叉のウィルスと同種同株である証しのように、波長がシンクロしたのだ。


 瑞生は目を見開いた。たった今この瞬間を瑞生のためにだけ生きていてくれる夜叉を、目に焼き付けておきたかった。瞳の中にイグアナが潜んでいるのなら、イグアナにも見せたかったのだ。かつて自分が共存していた宿主の姿を。こんなにも美しい姿と美しい声の持ち主だったのだという事を。


今までなかったことだが、夜叉の寝室にスタッフがどっと入ってきて慎重に夜叉を車椅子に移しスタジオへ運んでいく。一人ポツンと座ったまま時が過ぎていく。夜叉通信最終回のために大きな物を運び込む音が聞こえた。


 どのくらい経ってからなのかわからないが、呼ばれて、瑞生はスタジオに入った。昔から気配を殺すことには長けているので、入れても邪魔をする心配がないからだろう。一番後ろの壁際にいると、久しぶりに見る門根がすっと近づいて、瑞生を一番前に連れ出した。「夜叉の望みだ。だが夜叉にはテイク2がないから、よろしくな」と念を押すと離れていった。

瑞生は邪魔にならないよう、戸惑いながら遮るもののない最前列で夜叉と向かい合った。



 :こんばんは。夜叉通信、今夜で最終夜だ。ライブで伝えられなくて残念だ…。ファンの皆にお礼を言いたい。世話になった人にも…一人一人名を挙げて礼を言いたい所だが、時間切れなんだ。…エネルギーを…。最後に…みんなに、一曲でいいから、歌を、贈りたい:

夜叉の横にはウッドベースのキリノ、グロッケンシュピールのガンタ、コンガのトドロキがいる。コンガの合図でThe Axe最後の演奏が始まった。


 木製の柔らかな音の中で異質な鉄琴の音が、氷点下になる砂漠の夜に響く星々の瞬きのようだ。夜叉の歌声は小さくて囁きに近かった。だが次第に声は艶を持ち、ビブラートが響き、砂漠の夜明けのように美しい唯一無二の声がスタジオ中を引きこんだ。


光だ!


シャウトに近い高音を響かせた時、夜叉の目は遙か彼方を見ていた。そのまま海老反った身体が車椅子に崩れ落ちて、スタンドマイクが倒れると、キリノが信じられない程大声で「夜叉!」と叫んだ。


皆が我に返り一斉に駆け寄った時、キリノは目を閉じて夜叉を抱いていた。蒼く光る銀色の鬣の生き物を愛おしげに抱きしめていた。



 瀕死の状態で行く予定ではなかったはずだが、冷静なサニの指示で、夜叉はストレッチャーで運ばれていった。

バンドのメンバーと瑞生はスタジオに取り残された。ガンタは声を上げて泣き出し、トドロキは静かにコンガを濡らしていた。キリノは床に座って目を閉じたままだ。まるで身も心も夜叉と一緒に搬送車に乗っていくかのように。

 瑞生はバンドと向かい合った位置のまま、立っていた。やがて、その場に頭を抱えてうずくまった。どうしたらいいのかわからなかった。キリノですら自分の気持ちだけでいっぱいなのだ。一五歳の瑞生に最善の行動がとれるわけがない。だが、胸が押し潰されるような感覚に突き動かされて駆け出した。

「サニ! 僕も夜叉と行く!」



 神山県警警備部コスモスミライ村警備本部は、夜叉の移送が午前中に完了する計画を歓迎していた。夜叉通信の最終回予告は成されていないので夕方の放送時に視聴者やメディアの反響は大きいと想定される。人々が村目指して殺到しても、ひさご亭に駆け付ける住人がいたとしても、邸は空っぽで警備上の不安はない。

そして村内の近距離移動にリスクはないと判断し、形ばかり前後に警備会社の車をつけただけだった。

前島が発したテロに対する警告は県警本部から村の警備本部に伝えられていたのだが、現場では重視されなかった。ゲートがある以上侵入は不可能と踏んでいた。

「テロなんて、こんな山の中で起こるわけないだろ。本部は机上の危機に酔ってるだけだ」


 その頃、村のゲートには例によって本永と朏巡査部長がいた。朏は前島のお膳立てで警察庁に引き抜かれることが決定的で、村の警備本部長(警備本部の長であって本当は係長)から冷遇され、夜叉の警備でも蚊帳の外扱いされていた。


 ゲートの警備員に「ビジター申請数は先週プラス三〇人」と報告を受け、険しい顔つきでくねくね道を登っていく。

「朏さん、いつも気になってたんだけど、あの建物と休耕地みたいなのは何なんですか?」本永が指すのは坂道の途中にある平屋の白い建物と周辺だけ樹木が伐採された草地だ。

朏はちらりと目をやると慎重にハンドルを切りながら、「資料によると、建村時鳴り物入りでスタートした“夜間ペットマンション”だ。鳴き声による近隣トラブルの発生を防ぐ目的で、夜間や不在時はあそこに預けるという規則があったんだ。あの草地はドッグランだった。常軌を逸した餌の指示や勝手に連れ帰るとかトラブル続出でものの数カ月で閉鎖された。『ペットは自己責任で、世話も自分で』と規則は改められた。その途端、ペット数が激減したそうだよ」と説明した。

「なるほど。そう言えばペットらしきものを見た記憶がないもんな」

「今では、家の中で十分飼えるペットしかいないようだ。当時は互いに訴えあう訴訟合戦になるところだったのを、田沼が一件ずつ間に入って、脅したりすかしたりで訴訟を回避させたのだと」

「あの爺さん、あくまでも村のためにはよく動いていたんだな」本永は珍しく感心した。



 ビジターセンターに着くと部下から「夜叉通信効果なのか、親戚・遠縁などこじつけのビジターが多いです。僕が巡回した所では『観光客風な人が多い』印象でした。浮ついたお祭り気分ですね。ちょっと危険なほど」と報告されると、朏の警戒モードがバリバリになった。

「それって明確な目的が無い他人にビジター申請をしてやった住人が多数いるって事か?」本永は注意を喚起しようと瑞生に電話した。

「ち、電源オフってる」


  夜叉邸の異変をリアルタイムで捕捉し村外に発進していたのは八重樫宗太郎だ。常時村内の防犯カメラをハックしているので、搬送用救急車が夜叉邸前に到着した時点で、ほくそ笑みながら行動を開始した。

:夜叉邸に異変! 救急車で夜叉を搬送か?:

これを見た多くのファンと記者がコスモスミライ村目指して動き始めた。


村内に入り込んでいたビジターは、宗太郎の発信を見たり友人から連絡を受けたりして、我先に夜叉邸に向かっていた。夜叉邸の位置は非公開なので、以前ロハスが公開した写真などを基に居住地を右往左往していた。



 聞き慣れない鳥の鳴き声が響く、それが続いている事に、屋外にいた住人は首を捻った。AAセンター内で夜叉一行の到着を待っていた森山の耳にも違和感のある連続音は届いた。「何の音だ…?」


「これは…アラームじゃないか?」居住地にいた警備員が呟いた。

「どこの家だ? こんな…カモメが大群で襲ってきたみたいなアラームは大手警備会社じゃないな」同僚は本部に問い合わせている。


 「ヒッチコックの映画みたいだ。カモメに襲われるのは願い下げだなぁ」と苔田は自宅兼事務所の窓から海を見た。

妻に呼ばれて窓辺に来た自治会長の藤森も怪訝な顔で空を探した。「カモメどころか海鳥だって見えないが…」


 ポンと手を打ち田沼は体を起こした。「海だ!」


 夜叉を乗せた搬送車の前を行く警備車両(一号車)が急ブレーキをかけた。目の前に田沼が飛び出してきたからだ。

「海だ!」

「お爺さん危ないじゃないか! 下がって!」助手席の警備員が田沼を睨みつけた。

ところが田沼は警備車両のボンネットを叩きながら、「聞こえないのか? アラームだ。海からの侵入警報だ。あの切り立った断崖絶壁を登ってきた奴がいるぞ!」と叫んだ。


 村の警備本部は居住地に借り上げた住宅に半分、ビジターセンター半分に分かれている。居住地の本部ではカモメの大群に襲われた音がアラームであると気づいたものの、出所がわからず自治会長の藤森に問い合わせた。

 藤森は引継ぎ書類の中には覚えがなかったので、慌ててビジターセンター内の自治会長室にそれらしき資料を求めて家を出た。居住地はすり鉢状になっている上に海からの風が回るので、音源がどこか、さっぱり見当がつかない。「アラームアラーム、カモメ…ときたら、海じゃないか? でも海は断崖絶壁だからあり得ないか。こりゃぁ田沼の爺さんに訊くのも已む無しか?」藤森は近くの警備本部に飛び込んだ。


田沼をどかせようと車外に出た警備員にもアラームの方が忌々しい事態に思われた。

サニの目から獣じみて神経を尖らせているオーラが伝わってくる。瑞生は、夜叉と自分の中のウィルスを何が何でも守ろうと、心に誓った。


 一号車のドライバーが本部に問い合わせても埒が明かない。田沼がマイクをひったくって話し出した時、運よく本部に藤森が到着した。誰相手に話しているのか不明のまま、田沼は話し出した。

「あれはアラームだ。海側の断崖絶壁を攻略した者が出た時鳴るよう仕掛けておいたんだ。建村以来一度たりとも鳴ったことがなかったので、私もすぐにはピンとこなかった。あんな絶壁を登りきり、センサーが作動する緑地帯に侵入したとなると、プロだ。テロリストだ。住人に家から一歩も外に出るなと緊急放送しろ。警察、外事4課、どこでもいいから闘える部隊を呼べ!」


 田沼の声に驚きながらも藤森が質問した。

:何故テロリストと? 何故今まで侵入が皆無だったのですか?:

一瞬、藤森の声に沈黙の間があったが田沼は続けた。

「いい質問だ! 海沿いの断崖は“神山県後世に残したい名勝百選”にも選ばれた名所だ。居住地から海を見渡す眺望は村の“売り”だ、損なうわけにはいかない。だが建村当時多数いた子供の転落防止も必須命題だ。更に私は侵入防止をも兼ねる秘策を思いついたのだ。クイズにして答えさせたいが残念だ…答えは“棘”だ。サルトリイバラとトキワサンザシを崖沿いに植えた。密生して獣すら通り抜けられないし飛び越えられない程の緑地帯が有刺鉄線代わりになっている」

:植物の棘ですか? 薙ぎ払ってしまえば突破できるのでは?:

「あんた、崖沿いを歩いたことがないだろう。野生化して藪になったトキワサンザシは手が付けられないぞ。ボールが飛んで行ったら破裂して終わりだ。すぐに子供たちは近づかなくなった。冬に赤い実をつける姿は一興なんだがな。それはともかく、ここは岩礁のため船では近づけないから潜って近づき僅かな足場に上陸することになる。崖を登るにも道具が要る。あの藪を切り拓くハードカッターを背負ってくるとは思えないが、周到な準備と重装備を運ぶ体力が必要だ。テロリストが侵入しようとしているんだ。非常事態だ!」


瑞生は口をへの字に結んだ。

ふいに夜叉が手を持ち上げた。言われるまでもなく、瑞生は耳を夜叉の口元に寄せた。

「…」

だが瑞生には微かな息遣い以外聞こえなかった。涙目でサニを見ると、小さく首を横に振る。歌ったことで喉のウィルスがやられてしまったのだろう。

 瑞生は夜叉の手を握った。柔らかくて冷たい手だった。


無線で一号車に連絡を取った搬送車のドライバーが、「爺さんが言うには、このアラームは海からの侵入者に仕掛けたもので、『テロリストだから警戒しろ』って」と伝えてきた。

「だったら、停まってないで発進しろ!」

サニの剣幕にドライバーはあわあわしながら一号車に伝えた。


 「鳥の大群とは違うな?」朏は眉を顰めた。二人は夜叉邸の警備員から、夜叉一行が急遽AAセンターに移動した旨を知らされた。

「タイミングが悪いな。本永君、すぐに追おう」

「八重樫が連絡なしに一緒に行ったということは、夜叉の容態が余程悪くて動揺したまま動いたってことだな」


 田沼に足止めを喰っている間に、夜叉邸から追ってきたビジターが搬送車に追いついてしまった。手に手にスマホを掲げ駆けてくる不審者を見て警備員は一号車に飛び乗り発進した。搬送車も続いた。後続の二号車にビジター数名が飛びつき急停車させた。

 搬送車のドライバーはビビッて本部に喚きたてた。

「襲われてる! 俺たち襲われてるんだよ! あいつらゾンビみたいだ。冗談じゃない。ただの搬送車でゾンビから守れるわけないだろう!」


 サニは座席から降りて床で身を低くするよう瑞生に指示した。反対手でこめかみを押さえる。「なんてボリュームのアラームなんだ」


 近道で搬送車に追いついた朏が絶句した。二号車はフロントガラスが割られて、警備員が籠城していた。

「何だ? 暴徒化してるじゃないか!」

「このアラーム、デカくなる一方だ。思考力を奪って人を短絡的にしているのじゃないか?」と本永。


「住人の皆さん、自治会長の藤森です。このアラームは海からの侵入に対する警報です。自宅に戻り鍵を掛けて身を守って下さい! 決して外に出ないでください!」


響き渡る異常音と負けないくらいの音量の放送で、単にツテを使って物見遊山に村を訪れていた者はパニックになった。屋内に避難しようと手近な住宅に入り込む者や、耳を塞いで物陰に隠れる者もいた。


 「本永君、まず夜叉をセンターに送り届けよう」と朏が言った時、低速だが動いている覆面パトカー前に田沼が立ちはだかった。

「あいつらがゾンビなら爺さんは妖怪だな、まさに」この手の事に心躍る本永は全く怯まない。

「私を乗せて行け。アラームの解除をしないともっと大きな音になる」アラームに負けじと田沼は怒鳴った。ビジターがこちらにも向かって来たので、朏は田沼を乗せ急発進した。


 村のあらゆる道路を網羅する防犯カメラ映像を16分割でモニターに映し出して、宗太郎は高笑いが止まらなかった。

「こんなことするより、私が直接夜叉の息の根を止める方が手っ取り早いと思いますけどねぇ」曽我光代はステンレス包丁の手入れをしながら呟いた。「この耳障りな音も旦那様ですか?」



              【 六月二七日 中篇に続く 】

 


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