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エピローグ2 妹の決意

本編後のエピローグ・ジェーン編です。

「お師匠様! 朝ごはん出来ましたよ」

「おう。分かった! ジェーン、今行く」


 鍛冶場の方から元気のよい声が返ってくる。

 私は、2人分の朝食が並べられたテーブルの前に椅子を引いて座る。


 お師匠様は、言葉通りすぐに鍛冶場での作業を中断して席に着いた。


「それじゃ、主に感謝して。いただきます」


 お師匠様は、並べられた朝食を勢いよく食べ始める。その光景を見ると私もなんだか嬉しくなってくる。

 お兄ちゃんは、いつもこんな気持ちだったんだろうと思うと自然に笑みがこぼれる。


「なんじゃ? 儂の顔に何かついとるか?」

「いえ、何でもないです」


 どうして私が朝食を作っているのかと言うと、お兄ちゃんがお星さまになってしまったからだ。

 約3カ月前の朝、朝日と共に起きた私の所にいつも来てくれるお兄ちゃんはどれだけ待っても来てくれなくて、代わりに唐突に訪れた若い騎士にお兄ちゃんが何者かに殺されたと事務的に伝えられた。


 私は、あまりの衝撃に涙ではなく、逆流してきた胃液が口から滝のように流れ出た。

 若い騎士は、私やお師匠様が何を聞いても「捜査中につきお答えできません」と言うだけで詳しいことは何も言ってくれなかった。


 そして、お兄ちゃんが天に召されてしまった日の朝から私はベッドから起き上がれるようになった。それどころか、普通に生活をすることができるようになった。それまでは、ベッドから出ることすらできなかったというのに……。


 お医者様の話では、私の体は別人になったのかと言うほど健康体にいきなりなってしまったらしい。お医者様にも理解できないらしく『()()()()』ではないかと言っていた。


「騎士団からは何か連絡ありましたか?」


 お師匠様の食事の手が止まる。


「……いや、なにも返って来んのじゃ。……すまない」


 現在、お師匠様が昔のツテを使ってお兄ちゃんに関する事件を聞いてくれているのだが、いまだに何の返答もない。


「謝らないでください。お師匠様のせいではありませんから」


 そう。悪いのは、私からお兄ちゃんを奪った奴だ。

 あんなに優しくてかっこよくて頼りになる、私にはもったいないスーパーお兄ちゃんを奪った奴だ。


「お師匠様、今日もお願いできますか?」

「儂は問題ないが、ジェーンこそ大丈夫なのか?」

「はい! 問題ないです! それどころか体中から力がみなぎってきます!」


 今、私がお師匠様にお願いしているのは、剣と魔導の修行だ。

 いつの日かお兄ちゃんを奪っていった奴を見つけた時に、自らの手でお兄ちゃんの仇をとれるようにするためだ。


「それならいいんじゃが……」


 いままでは転移魔法も使えないほどの魔力しかなかったのに今では、お師匠様も驚くほどの魔力が私の体を駆け巡っているのだ。


「今日も攻撃系魔導を教えてください」

「いや、今日は防御系魔導を覚えた方がいいじゃろ」

「いえ、攻撃系魔導がいいです」


 守る必要なんてない。守らなくても誰かを殺すことはできるし、その方が効率がいいはずだ。


「……しかし……」

「攻撃系魔導をお願いします!」


 私は、お師匠様の瞳を力強く見つめる。


「……分かった。今日も攻撃系魔導の修練じゃ」

「ありがとうございます!」


 私は残りの朝食をかきこむと、修練用木剣を持って家の外に出た。


 

お読みいただきありがとうございます!


次は、22時ごろに更新しようと思っています!


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