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エピローグ1 その後の世界

本編終了後のエピローグ・エレイン編です。

「……もう、そろそろ起きてもいいはずです」


 なんだか回りが騒がしい。

 寝ている人の隣でそんなにうるさくしないでほしい。


「傷は、完全に治すことができませんでした。未知の呪いがかけられているようで……」

「むしろ、命が助かったことが奇跡ですよ」

「そういってもらえるとありがたい」

「流石は、モーガン従医長です」


 本当にうるさい。

 そろそろ、注意をしても問題ないだろう。

 うっすらと目を開ける。


「静かにしてください」


 私が目を開けると、そこは知らない天井だった。


「おお、起きたか!? 騎士団長ぉ! 目を覚ましましたよ!」


 私が起きた先にいたのは、黄金獅子魔導騎士団の入団同期のガレス・ボーマンと皇帝陛下の従医、序列第1位のモーガン従医長だ。


「目を覚ましたか、エレイン」


 呼ばれてやってきたのは、黄金獅子魔導騎士団の頭脳、ペレディル・パーシヴァル副団長だ。


「ボーマン、ペレディル副団長は騎士団長じゃないぞ!」


 ボーマンが副団長から叱責を受ける前に注意する。


「……? ああ、そうか。お前は、まだ知らないんだったな」


 ボーマンがしたり顔で私を覗き込んでくる。


「先月、ペレディル副団長が騎士団長に任命されたのだ」

「何を言っているのだ」

「覚えていないのか?」


 確か、騎士団長の後を追って森に入って……。


「……騎士団長は、騎士団長は大丈夫なのか!?」


 そうだ! 騎士団長がジャックに倒されて、それから私はジャックと相打ちになったはずだ。

 ボーマンに代わって副団長が首を振る。


「残念ながらランスロット騎士団長は、衛兵が着いた時には既に……」

「……そんなっっ! それなら、私以外に誰か倒れていませんでしたか?」

「いや、周囲は捜索したが倒れているエレインしか発見できなかったらしい」

「そんなはず……っっ!」


 体をベッドから起こそうとすると全身に電流が走るかのように激痛が走る。


「無理をせんでもいい。まだ、起き上がるのは難しいだろう」


 モーガン従医長が優しく語りかけてくる。


「おぬしは、1カ月も寝たままになるほどの重傷だったのだ。特に右目は……」


 私は、ゆっくりと手を動かすと右身を触る。そこには、皮膚の感触はなく、包帯が幾重にも巻かれていた。


「右目だけは、どうしても治すことができんかったのだ。多分だが、何らかの呪いがかけられているのだろう」

「ここからは、お前の知らない例の事件の顛末だ」


 副団長が真剣なまなざしで口を開く。


「衛兵によってお前がここに運び込まれた後、我々騎士団主力は勅令によって前線から帝都に戻され、ことの終息にあたったのだ」


 副団長は一呼吸開けて話を続ける。


「緊急の御前会議が開催され、ランスロット騎士団長は今回の事件の責任を取って自害されたことになった」

「っっ何を言っているのですか! 騎士団長は、勇敢に戦われ戦死なされたのです」


 騎士の名誉を踏みにじる行為が皇帝陛下自らの手によって下されたのだ。信じられるわけがない。


「本当のことだ。帝国最強の騎士がただの刀鍛冶見習いに殺されたなど発表できるはずがない。たちまち帝国は周辺諸国からなめられてしまう」


 副団長の言っていることも理解できるが、それとこれは別だ。


「さらに、エレイン。お前は、グネヴィア卿と悪魔を倒した英雄として受勲される手はずになっている」

「待って下さい。それは、私だけではないはずです。魔導科学研究所のリュネート研究員の功績も大きいはずです」


 実際には、ジャックの働きが最も大きいはずだが、それはできないだろう。


「魔導科学研究所は今回の事件の首魁であり、取り潰しになった。もちろん、その研究員が受勲されることはない」


 副団長を見れば、苦虫を噛み潰したかのような顔だ。モーガン従医長もボーマンも同じような顔だ。


「しかし!」

「分かっている。お前の言いたいことは、皆思っていることだ。しかし、これは決定事項だ。お前の意識が回復するとともに式典が開かれることも決定済みなのだ。もう覆ることはない」


 それだけ言うと、副団長は部屋を足早に出て行く。


 私の中で何かが壊れる音がした。

お読みいただきありがとうございます。

本日は3話更新します。

そして完結です!

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