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短めですが。
キリのいい所でいい長さで区切るのは意外と難しいものです。
目を開けると見知らぬ天井だった……というのは、創作だとよく見かけるシチュエーションなのですが、本当に自分が体験することになるとは思いませんでした。まあ、キャラクターPVの最後のシーンの続きから、ということなのでしょうが。
何とか体を起き上がらせ……そう言えば何度も言ったような気がしますが、VRは初めてなのですよね。体を動かすというのはこういう感じですか。さて、まずはキャラクターブックを確認しましょう。フェルエさんに食ってかかっていて、実はすっかり見るのを忘れていました。
「《キャラクターブック》」
命令をする、という意志をこめてキーワードを口にすると、コマンドは実行されます。
【キャラクター名】ノエル
【家名】なし
【種族】竜化人
【生年月日/年齢/寿命】大陸暦1013年 空の月 24日/38/999
【言語】
[会話]大陸共通語・西域人間語・ドラゴン語
[読解]大陸共通語・西域人間語
【HP】57/57 【SP】35/35 【MP】54/54
【空腹度】0/100【渇水度】 0/100
【ステータス】
[体力]7
[生命]21
[器用]16
[敏捷]6
[知性]12
[精神]15
[魔力]24
[幸運]14
【スキルとアーツ】
〈竜闘術〉LV1 〈状態異常耐性〉LV1 〈礼儀作法〉LV4
〈園芸〉LV1 〈調教〉LV1 〈動植物知識〉LV1
【装備品】
[頭]
[顔]
[上半身]ロスフェラード国のドレス
[下半身]ロスフェラード国のドレス
[手]
[足]
[アクセサリー1]ロスフェラードの指輪
[アクセサリー2]
[アクセサリー3]
[アクセサリー4]
【所持品】
なし
とりあえず1ページ目です。各項目については凝視することで詳しい内容が見れるようです。試しに【種族】から見てみます。
【種族】竜化人
竜の魔力の影響を受け、あるいは自ら魔力を竜に近づけたことにより、体内の魔力が竜に近づいた人間。分類ではまだ人間だが、体の一部に竜の特徴が現れ、ごく限定的にだが、竜の能力を扱うことができるようになる。
体の一部に竜の特徴が現れ……と言うのは目の部分のことでしょうね。何か変な種族になっているのは今も周囲を漂っている黒い靄のようなもののせいなのでしょう。これが竜の魔力と言うやつですかね?
生年月日と年齢、寿命ですが、現在のゲーム内時間は【大陸暦1052年 氷の月 17日】と表記されています。時間の区切りは現実と変わらないですが、ゲーム内では現実の3倍の速さで時間が流れており(VR内の時間加速は脳科学と連動した研究の盛んな分野ですが、脳に負担をかけないレベルでは現実の3倍が限度というのが現在の通説です)、現実世界で1日すぎると「アナザーアース・クロニクル」の中では3日が経過します。
ゲーム内の暦は現実と同じ1年12ヶ月ですが、月の名前はこの世界の守護神の女神にちなんでそれぞれ戦・時・海・輝・命・闇・死・炎・氷・雷・土・空と名がつけられています。つまり、氷の月17日とは9月17日、ということですね。
年齢が38歳というのはどういうことだ……と思いましたが、サービス開始が大陸暦1050年から、ベータテストがそれより20年前の大陸暦1030年の時代を扱っていたそうで、その当時のNPCの私が17歳だったそうですから、理には適っている年齢ですね。適っているけど受け入れられませんが。見た目変わってないので、まあよしとしましょう。
そういえば誕生日が12月24日、クリスマスイブですね。
ステータスは確か普通の人間のプレイヤーキャラクターの初期値の平均が15くらいのはずでしたので、【生命】【魔力】は優秀です……天才の姉と妹に挟まれた一般人という設定だったはずですが、これも種族が変わった影響でしょうか。ただ【体力】【敏捷】がえらく低いので、簡潔に言ってしまうと運動神経と体力は赤子レベル、という感じです。
スキルについては〈礼儀作法〉〈園芸〉〈調教〉〈動植物知識〉はお姫さま時代に覚えたものでしょう。確かガーデニングと動物の世話が趣味で王女らしくないとか言われていたはずです。〈竜闘術〉〈状態異常耐性〉は竜化人という種族ゆえでしょうか。それぞれのスキルの説明を見るとこんな感じです。
〈竜闘術〉
〈竜魔術〉とも言う。〈人化〉した竜が戦うための技術、あるいは竜に成ることを目指す他種族が習得する技術。魔力を変質させ、竜の肉体を再現して扱う。
【アーツ】 〈ドラゴンクロー〉LV1 〈ドラゴンスケイル〉LV1
〈状態異常耐性〉
あらゆる肉体的・精神的な状態異常になりにくくなる。
〈竜闘術〉はまさしくこれで戦えと言わんばかりのスキルです。【アーツ】というのはいわゆる必殺技のような、宣言して発動させると多大な効果を発する技のことです。2つ覚えていますが今は試しに使ってみるのはやめておきましょう。
〈状態異常耐性〉は言葉の通り、ですね。確かゲームにおいては状態異常とは大変強力で警戒すべきものらしいので、それになりにくくなるならありがたいです。
服装はさらわれた時のままでいわゆるところのお姫様のドレスです。このゲームでは服や武器、防具と言った装備品は実際に身につけたうえでそれをシステムが判断をし、システム的な装備個所に反映されるそうです。今、着ているドレスは上半身と下半身を覆う防具と判断されているようです。
あと装備品の欄を見ていて気づきましたが、左手の中指に銀色のシンプルな意匠の指輪がはめられているのと、裸足で靴をはいてないですね。
とりあえず現在の自分の状態はおおむね確認できました。では、これからどうすればいいか……と、考えていると、部屋の扉が開いて1人の男性が中に入ってきました。
黒髪を長く伸ばし、褐色の肌、黒尽くめの服。切れ長の目の、現実にいればまあ、かなりの美男子と言えるでしょう。確かキャラクターPVで眠っている私を見守っていた人ですね。目が合うと、その金色に輝く目が、瞳孔が縦に割れており、明らかに人間の目ではないことに気づきました。
そして、私はその目に、見覚えがありました。
「……黒竜グリムレット?」
「私のことに気づくのかノエルリージュ……いや、今はノエル、か」
……何かいきなり大ボスぽいのが来ちゃったんですけど?