激励
あらすじ
ガーディアンパイロットが集められた会議スペース。
2択を迫られたルークは、ノーティカル隊に入隊することを決意。
彼はアマテラスの正式なパイロットになった。
船体に当たる静かな波の音が聞こえる。
僕は艦橋裏で体中に海風を浴びていた。
さっきまでのことが嘘だったかのように心が落ち着く。
僕の決断は間違っていなかったんだろうか。
大した腕も無いのに、仇なんて討てるのだろうか。
これが全部悪い夢だったなら。
この波が全てを流してくれたのならば。
そう思わずにはいられない。
本当は、姉さんと一緒に海を感じたかったんだ。
しばらく目を閉じていると、艦橋の階段から人が降りてくる音が聞こえた。
「ルーク君、海は好きかね?」
慌てて立ち上がる。
「はい!とても・・・安らぎます。」
「そうか・・・それは良かった。」
その人は帽子を脱ぎ、隣に立つ。
整えられた白髪が夕日の光を吸い込んで輝く。
「あの・・・お名前を伺ってもよろしいですか?」
「ああ、私の名はホワイト・F・ジェームズ。この艦の艦長をやっておるよ。」
「す、すみません!乗艦しているのに艦長も知らないだなんて・・・」
「そんな畏まることはない。気軽にホワイト艦長とでも呼んでくれ。」
緊張のしすぎで何を話せばいいか分からない。
しばらく考えていると、ホワイト艦長から話題を持ちかけてくれた。
「君はノーティカル隊に所属することになったそうだね。スミス君は厳しいぞ?」
「いえ、僕はもっと強くならなくちゃいけないので。」
「もっと強くか・・・ソフィア君を思い出すな。」
「姉をですか?」
「ああ、ソフィア君も日々努力しておったよ。」
はじめからエースなんて生まれはしない。
姉さんも訓練を積んだからこそ戦えたんだ。
「・・・すまない。辛いことを思いださせてしまった。」
「いえ、姉は僕に生きる希望を与えてくれたので。」
「そうか。私も君の成長に期待するとしよう。」
ホワイト艦長が帽子を被り、立ち去る。
「私も出来る限りのことはサポートするよ。」
「ありがとうございます、ホワイト艦長。」
艦長はフフッと笑いながら、階段を登っていった。
アマテラスに戻る頃に、艦隊放送から命令が伝えられた。
それはホワイト艦長の声だった。
「これより我々メルボルン海軍基地所属第3艦隊は先の襲撃事件の実行犯である宇宙海賊ゲルト・ハルバードの追撃に向かう。目的座標はスカウトチームからの情報でフィジー諸島と見られる。奴らはテロリストだ、遠慮はするな、全力で戦え!以上だ。」
その声に艦隊の全クルーが沸きだったであろう。
実際、大きな歓声となっていた。
「すごい、こんなにも・・・」
「だろ?幾ら戦力の差があっても、これなら何とかなるかもしれないぜ。」
「戦力の差って、どういうことですか?」
こちらは正規軍で、G.H.はテロリスト。
そう授業で習っていたから、戦いはこちら側の圧倒的なものと思っていた。
「相手の戦力は空中に大型輸送艦が1隻と小型が3隻、対するこちらは人員の少ない空母1隻と巡洋艦1隻、駆逐艦2隻だ。正面からぶつかるのは厳しいんじゃないか?」
「え!?第3艦隊って4隻しかいないんですか?」
衝撃の事実だ。
「ああ、空母ロバート・フォード、巡洋艦ペンサコーラ、駆逐艦まいかぜ、いぶきの4隻だ。」
相手はガーディアンだけでなく、無人機も搭載している。
空母1隻でどうにかなる量じゃないだろう。
「それでも、俺達はやり遂げなきゃならないんだよ。」
どうしても暗い顔が出てしまう。
「心配すんな!俺達ノーティカル隊がいるんだ、なんとかなるさ。」
「・・・そうですね。僕らがなんとかしないと。」
そう、今戦えるのは僕達だけ。
少し前まではこの世界は平和だと思っていた。
トレミー戦役も宇宙で起こったことだったから、何も知らなかったんだ。
最前線では思ったより緊迫していたのだ。
僕は胸の奥に一抹の不安を抱えてしまっていた。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
ホワイト艦長による激励タイムでした。
艦長は乗組員を信頼し、乗組員は艦長を信頼しています。
そんな関係憧れますね。
さて、今回はロバート・フォードと愉快な仲間達が出てきましたね。
【太平洋連盟】
ペンサコーラ
アストリア級ミサイル巡洋艦の7番艦。
艦隊唯一の重武装艦として、艦隊を防衛する。
ロックオンさえ出来れば、敵艦への遠距離攻撃も可能。
まいかぜ
ゆうぐも型ミサイル駆逐艦の5番艦。
対空レーダーを多数装備。
空を飛んでいるものはカモメであろうと見逃さない。
いぶき
ゆうぐも型ミサイル駆逐艦の12番艦。
対潜水艦装備に重点を置いている。
行方不明になった人員の救助も行う。
※ペンサコーラは便宜上はミサイル巡洋艦ですが、203mmビーム単装砲が2基装備されています。
ビーム兵器を主砲にする事は太平洋連盟としては初の試みです。
※ちなみに駆逐艦が日本名なのは、太平洋連盟の駆逐艦の殆どが日本で建造されているからです。
前の大戦時、小型艦造船所に攻撃を一切受けなかったのが一番の原因です。
次回もよろしくおねがいします。