入隊
あらすじ
戦闘は終わった。
エネルギーを使い果たし動けなくなっていたルークは、ノーティカル隊隊長スミスに救出される。
姉の死を見たルークはスミスに全てを話した。
個人の部屋では一番大きいであろう艦長室。
そこでは2人の海の男が話し合おうとしていた。
「ジェームズ艦長、今回の襲撃事件について報告に参りました。」
「こちらにも話は回ってきているよ。ソフィア君のことは残念だった。ルーク君には気の毒に思うよ。」
「また部下を一人失ってしまいました。情けない限りです。」
グラスの氷がカランと鳴る。
「スミス君、何か飲むかね?」
「アルコール以外ならなんでも。」
綺麗な水が氷を溶かしていく。
「司令部から第3艦隊に命令が下った。内容は敵輸送艦の撃沈およびエレボスの破壊だ。」
「そのエレボスのことなのですが・・・」
「どうした?言い方が君らしくないな。」
「ルークの証言から、エレボスを強奪したのはあのカインハートと思われます。」
「何だって!?奴は生きておったのか・・・」
艦長ですら名前を聞くと驚く。
カインハートは相当厄介な相手なのだ。
現代では珍しいアンティークな時計が時を刻む。
「それと、アマテラスのことなのですが、あの機体はルーク以外には起動が出来ないようです。」
「まさか操縦権限が移動してしまったのか・・・」
「搭載されているAIユニットは外部からの操作が出来ません。」
アマテラスは一般機とは違い、自律型のAIを搭載している。
主と決めた人間の命令には絶対に逆らわない。
「ソフィア君は最期に弟に託したんだな。ふむ・・・」
艦長が立ち上がる。
「スミス君!今すぐ追撃部隊を編成してくれ。人員が足りないようであればアマテラスを編成しても構わん。」
「ルークをですか?しかし彼はまだ学生です。」
「訓練ばかり受けて軍人になるより、君の元でしっかり育てた方が彼のためにもなるだろう。それに、君もそうしたかったんじゃないのかね?」
男二人がクスッと笑う。
「ええ、では本人の意思で決断します。」
そうして、追撃部隊が組まれることになった。
格納庫内にいたパイロット達は全員会議スペースに移動となった。
キッドさんに行ってこいと言われた僕も向かっていた。
空母の会議スペースは学校の教室とは違い、かなりの広さがあった。
しかし、席は10つほどしか埋まっていなかった。
しばらくすると、スミス隊長が入ってくる。
席に座っていた全員が立ち上がり、敬礼をしていた。
勿論僕も立ち上がり、敬礼をする。
「あーそういうのは止してくれ、こっちまで気張っちまう。いつもどおりでいいんだ。」
全員が着席する。
「今回のミーティングは、これからの作戦説明だ。後ろの画面をみてくれ。」
スミス隊長の後ろのスクリーンが映る。
「今回の任務は、G.H.による襲撃で奪われたエレボスの破壊と、輸送
艦の撃沈を目的とした追撃部隊を編成する。まあここにいる全員になるだろうがな。」
全員がハハハと笑う。
しかし、そのうちの1人が手を挙げる。
「ここにいる全員ってことは、この学生も入るんですかい?」
そうだ。僕は本来ここにいちゃいけないんだ。
「ルーク、どうする?俺の部隊に入るのも、このまま学生に戻るのもお前次第だ。」
全員がこちらに注目する。
僕は・・・姉さんの仇を討ちたい。
姉さんが託してくれたアマテラスで。
「みなさん、ルーク・アマギと申します!よろしくおねがいします!」
「よし、よく言った。今日からお前はノーティカル隊の一員だ。」
おお~と全員が反応する。
「俺はリードだ。さっきは意地悪なこといってスマンな、ルーク。」
「名はラング。アマギということはソフィア嬢の弟だね?」
「オーリックだ。ソフィア嬢から話は聞いていた。」
「この中では最年少のブルーだ。弟が出来たみたいで嬉しいぜ。」
みんなから話しかけられてあたふたしている僕を見て、スミス隊長が助け舟を出してくれた。
「そんなに一斉に話しかけても覚えられないだろう。お前ら焦るな!」
「了解!」
隊長の大きい咳込み。
「そして、アマテラスのパイロットであるルークには特別階級が与えられる。」
「いきなり特別階級ですかい!」
「あくまで建前としてだがな。ルーク・アマギ、君は少尉候補生だ。」
「ええっ!?」
軍事学校を卒業すらしていないのに・・・
「テスト機のパイロットならこの位の階級が無けりゃ後々困るからな。それに、俺が直々に叩き上げるんだ。相応の腕は持ってもらわなきゃな。」
「そりゃそうですな。」
ハハハッと笑いが広がる。
僕は強くなれるんだろうか。
「改めてよろしくおねがいします!」
「ああ、楽しみだな。」
いや、強くならなくちゃならないんだ。
仇であるカインハートを倒すために。
どうも緋吹 楓です。
読んでいただきありがとうございました。
今回出てきた艦長は、スミスとは長い付き合いです。
困ったことがあれば話せる親友のような存在です。
ノーティカル隊メンバー、続々と出てきます。
さて、今回は空母ロバート・フォードの紹介をします。
【太平洋連盟】
ロバート・フォード
連盟軍が誇るエンタープライズ級空母の3番艦。
しかし建造当初にはガーディアンを搭載する予定はなく、無理な改装が繰り返された。
結果、本来84機搭載できた本艦はガーディアン18機、艦載機48機となった。
しかし、現在は人員が足りておらず、搭載機数は大幅に激減している。
武装:オート式対空機銃×3 8連装ミサイルランチャー×2
21連装近距離防空ミサイル×4
次回もよろしくおねがいします。