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忘却の白と黒の記録書  作者: オトノシユ
6章 追憶のネイコ編
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第4話 鋸草




【第三話 アレア】



セン第二王子の側近。

王の側近である近衛騎士団長の息子。

最年少の天才騎士の兄。

――それがアレアの肩書だ。


アレアもまた、センと同じく努力型の人間であった。英才教育とその努力で、周りの大人にも引けを取らない強さと思慮深さを持っていた。努力してなんぼ・実力が全ての騎士の世では、アレアは苦労しながらも確かな評判を得ていた。


「アレア兄様!」


凛とした声が彼の名前を呼ぶ。

溺愛する妹のものだと理解した瞬間、アレアはとろけるように破顔した。


「涼花」


そちらに目を向けると、花に埋もれる涼花がいた。小さな体に大量の花というのはなんとも可愛らしい図である。


「ホタル様と花畑へ言ったので、兄様にもプレゼントしたくて」


『花畑』の前に『城を抜け出して見つけた』という説明が入るところだが、確実に怒られるのであえて伏せる。


「中庭の薔薇園あたりかな? ありがとう」


実を言えば、二人は血の繋がりがない。

アレアは、涼花の父親の友人の子だ。けれど彼が赤子のころ両親が馬車馬の転落事故で天涯孤独の身となってしまった。そこを引き取ったのが、彼女の両親だった。

それから一年後涼花が生まれ、それから数年後涼花の母はこの世を去ってしまった。


おたがい血の繋がりがないことは知っているけれど、生まれた時から一緒の二人はたしかに家族だった。


「ホタル様は博識なお方なんですよ。私の名前の由来であるスズランのことも教えてくれましたし、他の花言葉も教えてくれました」


「そうかそうか。楽しそうで良かった。

セン様も植物に興味があるみたいだったよ」


「では、今度四人で花畑に行きませんか。……セン様も少しは気が休まるはずです」


ホタル様もセン様に対する周りの言葉を気にしているようでしたし、と続けた。


王子同士の仲は決して悪くない。むしろ仲が良い方だ。けれど、周りの声が二人の関係をよそよそしくさせているのは明白だった。


「(涼花は気づいていないのだろうな。私たちも、兄妹同士で比べられていることに)」


天才騎士の涼花。

最年少で騎士になり、"あの"第一王子の側にいても周囲からの不評はないに等しい。そもそも涼花は周りなんて気にしなかった。それは子供故の無邪気さからか、元々の性格からか……。


「兄様、私は誇り高き騎士になりたいのです。人を貶めるようなことは許しがたいものです」


「そうだね。俺も、そう思うよ」


立派な妹に、父親。恵まれているとは思う。けれどやっぱり、そんな立派な親子とは血の繋がりが無いのだと思うことは少なくなかった。自分一人だけが、異様な優秀家族から浮いている……と。


ただそれでも、アレアは妹が大切で大好きなのだ。




________





数日後、城の中庭でお茶会を開くことが出来た。


「兄上、この前ですね……」


アレアは、センが楽しそうにホタルに話しかけるのを微笑ましく見つめる。

いつも、ホタルに追いついて力になりたいと考えているセンの気持ちは一番近くで見ているからこそよく分かっている。けれどそれが容易でないことも、アレアは分かっていた。


「(兄弟仲が良くてもままならないな)」


二人が周りに振り回されず向き合える日を、ただ願うばかりだった。





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