第8話 共闘関係
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【さいごに】
読んでいただき、誠にありがとうございます。
さぁ、もう5巻。真実に向かって着実に歩みを進めています。あなたは真実に付いてこれていますか?
ナッチメイルでの騒動は、正直に言えば少し予定とずれてしまいました。
私たちの目的は世界平和。そしてそのために必要なのは絶対的な神の存在。
――そして神には神話が必要。
だから鈴蘭の功績を、そして彼女の特別なその人を惹き付ける力で全てを巻き込もうとしています。
……ですが、今回は最後をフローラ姫に持って行かれましたね。同盟に亀裂を入れ、そこを鈴蘭の力で修復するシナリオが崩れました。
やはりフローラ=ウィル=ジェムシェール、彼女は侮れませんね。
……今までなぜ気付かなかったのでしょうか。
鈴蘭は愛される。人の心の支えになる力がある。
『安心する、側にいたい』
『隣に立って同等でいたい』
そんな感情を呼ぶような"支え"の力。
けれどそれと同じくらい、フローラは愛される存在のようですね。彼女は"支え"ではなく、"導き"でしょうか。
『この人に従えば大丈夫』
『何となく未来は明るい』
そんな風に思わせる、人としての魅力。
様々な人がセカイの本質を掴みかけている。
さぁ、あなたは私に辿り着けますか?
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〈ヒスイside〉
音を立てず、ゆっくり本を閉じる。
ナッチメイルから帰国し、部屋に戻るとこの本が机の上に置いてあった。鍵を閉めたはずの部屋に置かれているなんて、あまり気分の良いものではないけど、動じなくなってきた自分が怖い。
本を全て確認するかぎり、やっぱり完璧に今回のことについて書かれている。どこから監視しているのか本当に疑問だ。
でも、本を読んだことで自分の場所で何が起きていたのか知れたことは良かった。
――ヨモギがアンドロイドとかいうものだったこと。
――鈴蘭がセピアと決別したこと。
――そして、ライトがセカイの一員のエリアルと接触したこと。
「セカイのメンバーは、ヨモギ、エリアル。あと四人。ライトに渡した鍵は一体……」
ライトに、自分も読者だと言って協力出来ればいいんだけど……。
本当はそうするつもりだった。聖礼祭の翌日、僕はライトに相談しに行った。けれどライトは結城に全て話し、協力関係になったようだった。
いや、結城のことは友人として信頼している。けれどこの本のことでは僕の中で確証が得られていないから、安易に打ち明けることが躊躇われた。
どこで誰かセカイとして見ているかわからないのだから。
「そういえば、この本に書かれていないこともあったな」
本を読んで、記載されていないことがあった。
それは、僕とリカが戦闘した時にリカと交わした言葉と渡された紙のことだ。
そこの部分はセカイが見逃したのか、聴き逃したのか。それとも描写しなかっただけか。
……わからないけれど、おそらくセカイにバレなかったのだと思う。
『オレは目的があってロベリアに近づいている。信頼を得るために任務も忠実にしないとならない。だが鈴蘭の主を傷つけるつもりはない。オレと戦って合わせてくれ。詳しい話はジェミニカに帰ってからしよう』
詳しい話、か。
でも確かに、僕にも協力者は必要だ。その点リカは経歴も明らかだし、結城よりはこの事に関しては信頼できる。
いやっ、もちろん結城の方が友人としては信頼できるよ!? ただセカイかどうかっていう点だけ。
「姫、鈴蘭……」
大切な居場所だから。
導いてくれる姫を守りたい。鈴蘭の隣で立ちたい。
二人のためなら……
「世界の真実を知りたいよ」
………
……
…
僕はそれから数日後、半休をもらって城下に出ていた。姫の護衛は鈴蘭に任せてある。
リカはジェミニカに帰ってから詳しい話をしたいと言っていた。外にいれば接触できるのではないかと考えたからだ。
「……」
うん。やっぱり読みは当たったみたい。
人の混雑の中、後ろを付けてくる一人の男の気配を感じた。即興で合図をすると、彼は僕を何処かに案内するように、横を追い抜いて前に出てきた。
それから彼に距離を保ったまま付いていくと、マンホールの中に入って行った。
……下水か。確かにセカイもそこまでは監視していなさそう。
………
……
…
「お前はやっぱり優秀なんだなぁ。打ち合わせ無しでここまで来てくれて助かったぜぇ」
地下を歩いて、少し開けた一角まで来ると彼はくるりと振り返ってそう言った。やはりリカだ。ギラギラした凶悪な目つき、見間違えることはないだろう。
「ここまで来た理由は、セカイの監視の目を掻い潜るためかな?」
「そ。王都は……いや、ジェミニカも世界中どこもセカイの監視がある。だが、ここならバレない」
薄暗く、臭いもきつい、空気がこもって長時間居たくはない場所だ。
「ここが監視の目が届かないって、どうしてわかる?」
「お前、ナッチメイルでオーパーツを見ただろう?
セカイはそのオーパーツを使って俺達を監視している。"小型監視カメラ"ってやつだ。これは何万何億と国中に仕掛けられているわけだ」
そういって小さな黒いものを投げてきた。
大きさは小指の爪ほどもないくらい。軽くて、よく見るとガラスがはめ込まれている、見たこともないデザインだ。ゴミと言われても納得するくらいに小さい。
「これが、オーパーツ?」
「録画録音、中央コンピューターへ情報を伝達。小さくて優秀なカメラだ」
こんぴゅーたー。
またわからない単語だ。オーパーツだから馴染みがないから仕方がないけれど。
「それで、僕を呼んだ理由は何かな。君の目的は、何?」
するとリカはニタァと歯を見せて笑った。本では良い人らしいけど、見た目は悪役のそれだよ。
「オレはセカイのリーダーを探してんだよ。んで、おそらくそのリーダーは、ロベリアのバッグにいる人間だ」
「"セカイ様"って言われてる人だね。
……その人と現人神は一緒じゃないの?」
「別人だ。オレは現人神に会ったことねぇけど、男だってことは聞いた。一方でセカイ様の方は、おそらく女だ」
ヨモギ、エリアル、男性の現人神、女性のセカイ様。あと不明の人物二人か。
「セピアで鈴蘭がセカイの餌食になって殺されようとしてるって知った。それでセカイを独自で探してたんだ。……6年前から」
6年前というと、鈴蘭がリカのために大会に優勝した頃か。その時からずっとって……
……うん、リカは悪い人じゃない気がする。一途に家族を想い続ける人だから。
「オレの目的は鈴蘭を死なせねぇこった。そのためにセカイ様っつーのを探してる。ヒスイ、オレと組んでくれ」
「いいよ」
自分でも驚くほどするりと返事が出てきた。
最近セカイの動きが活発になっているというのもあるだろう。けれどもっと、リカの熱意に胸を打たれたのかもしれないな。
その瞳が、命をかけて狩りをしていた自分を思い出させるような鋭さを伴っていて、いかに本気なのかが震えるほど感じた。
「ありがとな、ヒスイ」
差し出された手を握り返す。
こうして僕とリカは協力することになった。
………
……
…
それから、自分たちの持っている情報を交換し合った。リカは黒い本のことはあまり知らなかったようで、僕はそれについて。
リカからは………
「………。リカ、今の話は本当のことなの……?」
「おそらくな。今の話は、現人神が住む図書塔に侵入したときに見つけた本で見つけたもんだ。
信憑性は高いだろうな」
リカから聞いた話は、あまりに荒唐無稽で、あまりに現実味がなく、あまりに恐ろしい内容だった。
けれどもしそれが事実なら、不可解な点もするすると解決していく。
「もしもそれが本当なら……
セカイ様は、本物の"神様"だ」




