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忘却の白と黒の記録書  作者: オトノシユ
4章 聖礼祭編
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第7話 見てる




〈ライトside〉



ノバラさんに話を聞こうと意を決したけれど、一兵士と王子の側近では位が違いすぎてお目にかかることも少ないと思い出した。西の塔奪還作戦で近づけたのは奇跡だ。

しかもカイト様はノバラさんにベタ惚れらしく、無闇に近づけば切り捨て御免……なぁんて噂もある。……ただの噂だよな?


そんなこんなで近づける限界まで執務室に近づいて、その辺りでうろうろすること一時間。

どうしよう。


「不審者はっけーん」


「うわぁ!」


空から降ってきた人に吃驚して、思わず情けない声が出た。こうやって変な登場をするのはいつだって……


「先輩ですか。驚かせないで下さいよ」


ショール先輩が飄々と笑った。聖礼祭で忙しかったから久しぶりだ。


「相変わらず良い反応見せてくれるよね。それでどうしたの? 見つけたのがカーナとかカルセだったら今頃牢屋行きだよ。俺が優しくてよかったね」


「そうですね、先輩は優しいです」


「……」


先輩は良い人だ。いい加減な人に見えても、仕事はするし後輩の面倒も見る。強くて努力家で頭もいい。


素直な気持ちを乗せて返事をすると、すっごい反応に困るって顔された。


「うん、まぁいいや。ありがとう。

で、ライトは何してるの?」


「あ、ノバラさんと話がしたくて……」


「いいよ、ノバラね。呼んで来てあげるよ」


理由も聞かずに呼んで来てくれると言われて、嬉しさよりも先に申し訳無さが出た。


「そんな、悪いですよ」


「別にいいよ。ただし、ノバラを口説いたら駄目だよ。カイトに斬られるから」


それだけ言って一瞬にして消えた。

やっぱり先輩はスマートで親切だ。格好いい。




………

……




と言うわけでノバラさんと空き部屋でお茶をしております。が、緊張のあまり紅茶が喉を通らない。

前は任務に夢中だったから、どうやって接してたかわからない。


助けて結城!


「それで、ライトは、何か私に、用事でもあるの?」


動く人形と言われるだけあって、本当に作り物のように綺麗な人だ。緊張するけど、結城に頼ってばかりではいられない。俺も鈴蘭を生贄にしないために動かないと!


「実は今、理由があって調べ事をしているんです。

……ノバラさんは、ネイコの出身ですか?」


するとノバラさんは察したように目を細めてこちらを見る。出方を考えているような態度に、身体が固くなった。


「なるほど、ライトも、黒の本を手にしたのね」


「あ、西の塔奪還の時も言ってましたよね。ノバラさんは何か知ってるんですか?」


「知ってるも何も、私も黒い本に書かれたことがあるのよ」


「えっ?」


黒い本に書かれたことがある?

どういう意味ですかと問おうとしたが、その言葉は喉の奥に引っ込んだ。


何故なら、ノバラさんがいきなり服のボタンを外し始めたからだ!


「の、の、ノバラさん!? な、な、な、な。落ち着いてください!」


「こっちの台詞。いいから黙って」


鋭い声と睨みのダブル攻撃で、黙らざるを得なくなった。

後でカイト様にばれて殺されないように祈りながら、せめてもの足掻きとして俯いて目を閉じていると、布が擦れる音が止んだ。


「こっち向いて」


「は、はい……」


片目だけそろりと開けると……


「なっ……」


絶句した。

ノバラさんがはだけて見せていた背中と肩は、酷い火傷の痕が残っていたのだ。

痛々しい姿に、こちらまで胸が痛くなる。


「ライトの言うとおり、私はネイコ出身。でも両親に売られた。売られた先はジェミニカの劇団。私は見たものをコピーする能力を買われてNo.2まで上り詰めた。

ある日、カイト様が舞台を見に来ることになって主役は私が尊敬していたNo.1の人がやることに決まった。けど怪我をして、繰り上がりで私が主役になったのよ。

No.1は心を乱してしまって、劇場に火を放って亡くなったわ。私は炎で死にかけのところをカイト様に救われた」


その話は……きいたことがある。鈴蘭たちと王都観光した時に見た焼けた劇場の話だ。


ノバラさんは服を着直して前を向く。痛々しい傷痕が見えなくなっても、俺は胸が痛かった。


「ノバラさんはそれでカイト様の婚約者になって、そのシンデレラストーリーが小説化されたんですよね」


「そう。……でも、おかしいのよ。

――私しか知るはずないことまで小説に書かれていたの」


何か衝撃が走った。

そうだ。俺が読んだ鈴蘭の本も、鈴蘭しか知らないこと、俺しか知らない心も、全部書かれていた。


「私は、最初に書かれた本を、必死で探した。誰が私たちを見ていたのか、誰が私だけの大切な思い出を晒したのか。

……色んな出版社を渡って、やっと見つけたのが、黒い本。作者はセカイ」


忘れていた。セカイは、その人しか知らないことまで知っている得体の知れない連中なのだと。


「ライトがそれを追っているなら、止めない。私も話せることは話す。けど、覚えておいて。


………セカイは、見てる。今この瞬間も」





………

……





その後、俺はノバラさんからネイコのことを聞いた。

現在ネイコは内戦状態だけど、昔は今と違い自然は豊かで穏やかな王が治める最高の国だったと。


けれどある時から、奇妙な死病が流行り始めた。


『その病は瞬く間にネイコ中に広がり、大勢の人が亡くなった。王が何か対抗策を打ち出してくれると、私たち国民は期待していたのに、王は何もしなかった』


そして王に対して不信感を募らせていった国民の前に現れたのが、今の王――リリー。


『リリーは王の妹の夫。……ええ、男よ。

彼は新薬を開発して、国民に配った。そうして国民はリリーを支持し、王を追放する風潮が広がった』


その頃王を支持する権力者は何者かによって暗殺され始めた。

王の味方は減り、病が広がり新薬が配られる度にリリーは国民の支持を集める。


そしてリリーは、王と王妃を処刑した。


『それが1099年のこと。

私もその混乱の中、家族に売られたわ。

……今は、そのリリーが王に君臨してるらしいけど、内戦状態になってるって聞く限り、彼に王の器は無かったってことね。今となっては、当時の王がリリーに騙されていたのかもって、私は思う』


繋がった。

鈴蘭が記憶を無くしてセピアに拾われた年、1099年。



それが、ネイコに新王が誕生した年。



結城はこれを言いたかったんだろうな。もしも鈴蘭がネイコ出身なら、その混乱に巻き込まれた可能性も大きい。現に、ノバラさんもその混乱の被害者だ。それで今の幸せを勝ち取ったのだからいいと笑っていたけれど。




「でも、これでセカイに近づくかって言われたら微妙なんだよな。鈴蘭の謎には近づいたけど……」


俺が思うにセカイに関係がありそうなのは、まずヨモギ、この子は確実にセカイのメンバーだ。

あとはリコリスの背後にいる謎の人物。そしてセピアの現人神。

そんで……


「ホタルさん」


鈴蘭のことをあれだけ大事にしているホタルさんだ。鈴蘭を殺して平和を作るなんてトチ狂ったことは言わないと思うけど、何かしら関係がありそうなのは事実。





1100年の白の革命。

1099年のネイコ新王誕生。


そして、1073年の"約30年前の事件"



真実はどこにあるんだろう。



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