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願いが叶うなら 巡る四季の欠片を集めて、消えた神様の面影を約束の未来へ繋いで――  作者: 汐野悠翔
秋物語

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大切だから

「あっ!ねぇ見て見て!あのお店に飾ってあるあの服、可愛くない?」




どこか行きた場所があったわけでもないのだけれど、その後もあてもなくフラフラと商店街を歩いて回っていた私達。

ふと、店の前に飾られた純白のワンピースを着たマネキンを目にして、私は隣にいた神耶君の手を掴むと、トタトタとマネキンの前まで駆け寄った。

袖やスカート、あらゆるヶ所にフリルのついたワンピース。

マネキンのすぐ傍に置かれていたハンガーラックに、同じワンピースが掛けられているのを見つけて、私は自分の体にそのワンピースをあてて見せた。



「確かに、服は可愛い。けど、お前には似合わないな」


「え~?酷いな神耶君。でも確かに・・・・・・私には可愛すぎかな~?見た目、男の子だもんね。でも、目の保養くらいはしても良いよね?ね、ちょっとだけこのお店覗いて行っても良いかな?」


「ダメって言っても、どうせ言う事なんか聞かないんだろ?」


「へへへ」


「じゃあいちいち聞くな。好きにしろ」


「やった!ありがとう神耶君」


不機嫌な顔で溜息を吐く神耶君。

でも呆れながらもこうして私に付き合ってくれる神耶君の優しさに感謝しながら、私は手にしていたワンピースをハンガーラックに戻すと、再び神耶君の手を掴んでお店の中へと入って行った。



店内に入ると、服よりもおしゃれな雑貨類やアクセスサリーと言った小物類が多く目を引く。

どうやらここは雑貨をメインに販売するお店のようだ。



「あっ、これ可愛い!これも!!ね、神耶君も見て見て!!」



私は、可愛いと思ったもの一つ一つに節操なく手を伸ばしては神耶君に見せた。

するとそんな私に、ここでもヒソヒソと陰口が聞こえて来る。



「ねぇ、あの子さっきから一人でわーわー言ってるけど、何やってるのかな?」


正直またかと、半ば呆れなが私は無視していたのだけれど、神耶君はと言えば声の方ばかりを気にしている様子で、私の話など全く耳に入っていないみたいだった。

仕方なく私も、ヒソヒソ声の主の方へと視線を向けてみれば、私より少し年上くらいだろうか?大学生と思われる男女の二人組と目が合った。

瞬間、二人は急いで私から視線を外し、買い物を楽しむフリをする。


「・・・・・・」



あからさまな態度に、少しムッとしたけれど、でもそれ以上に仲睦まじい二人の姿が羨ましく思えて、暫くの間二人の姿を羨まし気に見つめていた。

私と神耶君だって・・・・・・あの二人と同じように買い物を楽しみたいだけなのに・・・・・・。

どうしてたら奇異の目で見られずにすむのだろうか?

込み上げてくる虚無感から、買い物を楽しむ気力も一気に無くなって・・・・・



「行こっか。神耶君。」


「あ?あぁ・・・・・・もう良いのか?」


「うん。もう良いんだ」


「そっか」



私達は店を出た。







「次は、何処に行こっか?」



外に出るなり、私は気持ちを切り替えようと、精いっぱいの明るい声で神耶君に尋ねる。

けれど、空元気だと見抜かれてしまったのか、神耶君は俯きがちにポツリと零した。



「・・・・・・なぁ、やっぱりもう帰らないか?」


「どうして?」


「どうしてって・・・・・・お前だって気付いてるだろ?さっきからお前が、周りから不思議そうな顔で見られてる事に」


「うん。気づいてるよ」


「だったら!恥ずかしいだろ?やっぱり今からでも社に戻って」


「嫌っ!まだ帰りたくない!!」


「ならせめて、俺の事は見えないフリしてろよ」


「大丈夫だよ。だって恥ずかしくなんてないもん。さっきも言ったでしょ?神耶君はちゃんとここにいて、私には見えてる。なのに、見えないフリなんて出来ないよ。周りからどう見られようと関係ない。だから、ね?神耶君も私に気なんか使わなくていいから、もっともっと楽しもう?」


「・・・・・・」



帰ろうと言う神耶君。

けれど私は、もう半分意地になって神耶君を説得した。

そんな私に、神耶君はもうそれ以上は何も言わなかった。

だから私も何も言わずに、また強引に神耶君の手を引いて商店街を歩いた。

そして商店街も、もう終わりに差し掛かろうかと言う所で、今までで一番賑やかなお店、ゲームセンターを見つけた。



「あっゲームセンターがある。ね、今度はあそこに入ろうよ!」



「・・・・・・あぁ」


テレビや雑誌では見た事はあったけど、実際に目にするのは初めてで、可愛いぬいぐるみがたくさん積まれたUFOキャッチャーを目の前にして、私は少し興奮気味に言った。



「私、一回これやってみたかったんだ~」


「・・・・・・」


「ね、どの縫いぐるみが可愛いかな?」


「・・・・・・」


「ねぇ神耶君?聞いてる?」



隣にいるはずの神耶君。

なのに何度話かけてみても、彼から返ってくる言葉はない。

痺れを切らした私は神耶君の方を振る。



「どの縫いぐるみが可愛いかな?」



すると神耶君は俯きながらやっと口を開いた。



「・・・・・・もう良いって。俺の事は見えないフリしとけって。じゃないとまた・・・・・・昨日みたいに周りから気味悪がられて・・・・・・」


「神耶君、やっぱり知ってたんだ。昨日の事・・・・・・」


「あぁ。昨日、俺のせいだったんだろ?お前が階段から落ちたのは。だからお前、今日だって学校に行けなかったんだろ?」


「やっぱり神様には、全部お見通しなんだね」


「だから葵葉、お前もう俺に構うな」


「嫌だよ。私は、神耶君と一緒にいられる時間が一番楽しいんだもん。神耶君と一緒にいたいんだもん」


「でも、俺と一緒にいるせいで周りから変な目で見られるんだぞ?お前が欲しがってる友達だって、この先ずっと出来ないかもしれないんだぞ?それでも良いのか?」


「いいんだ。それでも」


「なっ?!いいわけないだろ!」


「神耶君。私ね、もう周りの声は気にしないって決めたの」


「・・・・・・え?」


「昨日ね、私を助けてくれた人がアドバイスしてくれたんだ。周りなんて関係ない。自分が信じるものを信じれば良いんだって。神耶君は私の大切な友達なのに、その大切な友達の存在を信じてくれない。神耶君を手放さなければ得られないような友達なら、私はいらない。」


「・・・・・・葵葉」


「だからね、そんな寂しい事言わないでよ神耶君。私にとって神耶君は何ものにも変えられない大切な、大切な友達なの。だから、ね?お願い」


「・・・・・・」



神耶君の、私を見つめる悲しそうな瞳。

その瞳に向かって、私は精一杯の笑顔を見せた。






「あれ?あんた」


「え?」



その時、突然後ろからポンと肩を叩かれる。

びっくりして慌てて振り返ると、そこには意外な人物が立っていて、私の口からは「あっ」と、驚きの声が漏れた。


「あ~~~!貴方は、昨日の!!」



その人は、昨日、階段から落ちた私を助けてくれたあの、月岡先輩。



「やっぱりあんたか。そんな所で一人漫才なんかして何してるんだ?サボりか?」


「先輩こそ、制服姿でどうしてこんなところに?学校は?」


「俺は勿論サボりだ」



何の悪びれもなく、さも当たり前のように言ってのける月岡先輩に、私は笑いながら言った。



「ダメじゃないですか。サボったりなんかしたら」


「平日に私服でこんな所フラフラしてる奴に言われたくねぇよ」


「私はサボりじゃなくて、暫くの間学校通えなくなっちゃったんで。暇つぶしにちょっと遊びに来ただけですよ」


「おいおい、通えなくなったって、もしかして停学か?あんた昨日一体何をやらかしたんだ?しかも停学くらってる奴が、んな堂々と遊び周ってていいのかよ」


「え?ダメなんですか?」




正確には停学ではなく、ドクターストップなんだけど。

私はあえて先輩の勘違いを訂正する事もせず、キョトンとした顔でそう聞き返した。

すると先輩には、呆れ顔で大きな溜息をつかれてしまう。



「・・・・・・・はぁ~。まぁいいけどな。俺には関係ないし。でも気をつけろよ。あんた、見た目小学生だから、んな所で一人漫才なんかして目立つような行動してたらすぐに補導され」


「ちょっと君達っ!」



先輩が最後まで言い終わらないうちに、私達はまた後ろから声をかけられる。

先輩は、私の後ろに視線を向けると、ぽりぽりと頭をかきながらばつの悪そうな顔で小さく言った。



「あ~あ。遅かった」


「え?」



いったいどうしたと言うのだろうか?

私は不思議に思って声のした方を振り返る。

するとそこには、警察の格好をしたおじさん2人が、怖い顔をして私達に近寄ってくる。



「こんな時間にこんな所で何をしてるのかな?学校は?」


「・・・・・・え?・・・・・・ええ?」



まるで怒られているかのような威圧感で、警察官が迫り来る今の状況が、うまく呑み込めずにいた私は、ポカンと口をあけて立ち尽くしていた。



「おいおい、あんた!何ぼ~っと突っ立ってんだ!早く逃げるぞ!」



するとそんな私の腕を掴んで、先輩は急に走り出した。



「えぇ?!あ・・・・・・はいっ!」



先輩に引っ張られるがままに走らされた私は、先輩に掴まれている方とは反対の手で、咄嗟に神耶君の手を掴むと叫んだ。



「なんか良く分かんないけど、神耶君も早く!」



一瞬不思議そうな顔で私の手の先へ視線を漂わせる先輩と視線が合ったのだけれど、別段何か言う事はなく、追いかけて来る警察から逃げるべく私達は必死になって走った。



「こら~!待ちなさ~い!!」







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