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願いが叶うなら  作者: 汐野悠翔
秋物語
27/94

クラスメイトからの忠告

「ねぇねぇ、どうして白羽さんは何も持って来てなかったの?携帯くらい持ってきてない?普通」


ホームルームが終わった後の休み時間。

転校生と言う興味本意からか、数人の生徒が私の机の周りに集まってきて、私を囲んで話はじめた。



「それは・・・・・・」


「もしかして持ち物検査があるって知ってたとか?」


「・・・・・・」



持ち物検査自体が自分のせいで行われたものなのだから、否定は出来ない。



「え?無言って事は本当にそうなの?!」



でも1番の理由は・・・・・・



「そもそも携帯自体、私持ってなくて」


「「「「えぇぇ~~~~?!」」」」



教室中に驚きの声が響き渡った。



「今時携帯持ってないの?あれ?白羽さんて東京からこっちに引っ越して来たんじゃなかったっけ?東京の高校生は進んでるのかと思ってたけど・・・・・・変な先入観だったのかな?」



私はどう答えたら良いか。

口を開いたらついつい病気の事でボロが出そうで、とにかく笑ってごまかす方法しか思いつかなかった。

数人の生徒からは、そんな私の態度を、興味以外の視線で見られていた事にも気付かずに。



***




新学期初日は、午前中で授業が終わった。

帰ろうと身支度をしていた時、担任の影山先生が私の席まで声を掛けに来てくれた。



「白羽。初めての学校はどうだった?体、辛くなかったか?」


「はい。大丈夫でしたよ。先生にも、色々と体の事でご迷惑をおかけすると思いますが、これから宜しくお願いします」



私は、私の体の事を心配してくれる先生に向かって深々と頭を下げる。



「そんな畏まらなくて良いぞ。ま、礼儀正しい子は嫌いじゃないがな」



そう言って穏やかに微笑みながら、私の頭をわしゃわしゃ撫でつける先生。



「何かあったら、いつでも言ってくれ。お前が楽しい学校生活を送れるように、先生も出来る限り協力するから」


「はい。ありがとうございます」



私もニッコリと笑い返す。

するとまた、わしゃわしゃと頭を撫でられた。

その後、ヒラヒラ私に向かって片手を振り、先生は廊下に向かって歩いて行く。



「だったらほっといてくれれば良いのにな」



その後ろ姿を見送りながら、私はぽつりと小声で呟いた。



「それを、本人目の前にして言えば良いのに」



突然、後ろからした声に、ビクンと肩を跳ね上がらせて私は驚く。

振り返ると、窓枠に座りながら、手を頭の後ろに組み、少し呆れ顔で神耶君が私を見ていた。



「神耶君っ!脅かさないでよっ!」


「何いい子ぶってんだ?お前らしくもない」


「・・・・・・そうだね。私らしくないよね」



神耶君の厳しい指摘に、私はまた作り笑いを浮かべた。

そんな私に、今度は前方から声がかかる。


「ちょっとあんたさ、何一人でぶつぶつ言ってるの?気持ち悪いんですけど」


「転校生だかなんだか知らないけど、何贔屓扱いされてんの?影山に何をどう取り入ったか知んないけど、むかつくんだよね。その良い子ぶりっ子」



机を2つ程挟んだ前方に立つ、2人の女生徒。

制服のリボンが緩められた胸元は大胆に開けられており、薄く化粧をしているのか、頬っぺたはほんのりピンク色をしていた。

二人とも髪の毛は少し茶色がかっていて、一人は長くてまっすぐな長い髪をおろし、一人は緩くウェーブのかかった髪を、後ろで束ねている。

私と比べるととても大人っぽい印象を受ける彼女達は、鋭い視線で私を睨んでいた。


気が付けば、私と彼女達以外、教室にはもう誰もいない。



「何だ?こいつら。」



不機嫌な声を漏らしながら、ヒョイと窓から降りた神耶君は女子生徒二人に向かってがんを飛ばしながら彼女達と私との間に割って入る。

でも、神耶君が見えていない彼女達は、そんな神耶君の威嚇に動じる気配などなくて、ジリジリと私との距離を縮めて来る。




「忠告しとくけど、調子のんなよ転校生」


真っ直ぐな長い髪をおろしていた方の女生徒が不意に私の胸倉を掴んで、低い声でそう吐き捨た。

至近距離で睨みつけられる。



「おいお前、何やってんだっ!」



私の胸倉を掴む彼女の後ろで、今にも殴り掛かりそうな勢いで神耶君が怒鳴った。

私は、そんな神耶君に向かって「大丈夫だよ」っと笑って見せると・・・・・・



「だから、その愛想笑いがムカつくんだっつの!」



この状況で笑う私の顔が気にくわなかったのか、掴まれていた服を勢いよく突き放されて、2、3歩後ろへとよろめく私。



「とりあえず今日は忠告だけで勘弁しといてあげる。けど、またでしゃばるような真似したら・・・・・・そん時はどうなるか、覚悟しときな。」



それだけ言い残して、女生徒二人は笑いながら教室を出て行った。



「おいっ!大丈夫か?!」


「だ、大丈夫だよ。慣れてる事だから」


「慣れてるって・・・・・・」





どうしても大人達から病気の事で贔屓されてしまう私は、学校で浮いた存在になってしまうのはいつもの事。

小学校でも、中学でもそうだった。



「流石に・・・・・・暴力は初めてだったけど」



少し首を絞めつけられていた事で、軽く咳き込みながら、心配してくれている神耶君に向かって笑ってみせる。そんな私に・・・・・・



「だから愛想笑いが上手くなったのか?」



神耶君は冷静にそう投げかけてくる。

神耶君の言葉は、まさに図星をついていたものだから、私はまたへへへと笑った。

どう答えたら良いのか?

答えに迷った時やっぱり私には笑う方法しか思い付かなかったから・・・・・・








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