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願いが叶うなら  作者: 汐野悠翔
秋物語
24/98

学校へ行こう

「か~ぐや君!あっそび~ましょっ!!」


「来たな、また煩いのが。」


「煩いなんて酷いな~。離れていた時間の友情を取り戻そうと頑張ってるのに」



この町に戻って来てから、早いもので一週間が経とうとしていた。

今日は8月の最後の日。

今日で夏休みが終わると言うこの日、私はいつものように、神耶君のいるこの八幡神社に遊びに来ていた。

でも、一つだけ。

一つだけ、いつもと違っていることがある。



「ねぇねぇ!神耶君!どう?似合う??」


「女みたいで気持ち悪い」


「酷っ!!」



夏休みが終わり、9月を迎える明日から、私はついに念願の学校に通う事になったのだ。

今日は、流行る気持ちを抑えきれなくて、明日から着て行く高校の制服を、神耶君へのお披露目も兼ねて着て来ていたのだ。


なのに・・・・・・

そっか。気持ち悪いのか。


まぁ、無理もない。

神耶君の前でスカートをはくのは初めてだしね。

それに最近は伸ばしていたとは言え、まだどちらかと言えば髪型はショートに近い。

自分でも見た目が男の子みたいである事は承知している事実。

そんな私が、制服とは言えスカートなんて



「やっぱり似合わうわけない・・・・・か。」



諦めの気持ちから小さくため息が漏れる。



「別に・・・・・・似合ってない・・・・・・事もない」


「えっ?」




その時、ボソッと漏れ聞こえて来た神耶君の言葉に、俯いていた顔を上げて神耶君を見た。

彼はプイっとそっぽを向くも、その顔はどことなく赤くなっているように見えた。



「相変わらず神耶は素直じゃないですね。素直に可愛い。似合ってると、思っている事をそのまま言葉にすれば良いものを。」


「あっ!師匠さん!」

「師匠っ?!何でここに?」



突然、、どこからともなく聞こえてきた声に、私と神耶君は声の主を呼ぶ。

師匠さんは、白髪の長くて綺麗な髪をなびかせながら、にこにこと穏やかな笑顔を浮かべて、私たちの目の前に姿を現した。


私達が“師匠”と呼ぶこの人は、八幡神社に奉られる八幡神の一人で、三代八幡宮の一つ、京都にある岩清水八幡宮を納める、神様の中でもとくに立派な神様なんだとか。

神耶君が神見習いの時からお世話になっている神耶君の師匠さん。



「あんた、また自分の神社抜け出してこんな所までサボりに来たのか?」


「そんな事、今はどうでも良い事です。それより正直に葵葉さんに可愛いと言って差し上げなさい。ツンツンばかりしてないで、たまにはデレないと、葵葉さんに愛想つかされてしまいますよ。女の方はそのギャップに弱いのですから」


「はぁ?!可愛いなんて、思ってもない事言えるわけないだろ!ってかツンとかデレとか、一体何の話をしてるんだ!!」



更に顔を赤く染めながら、師匠さんに噛み付く神耶君。

彼のそんな姿を見てたら、たまらず笑いが零れて来た。

やはりさっきのは、彼なりの褒め言葉だったらしい。



「本当に素直じゃないんだから。神耶君は。」


「は?お前まで何言ってやがる!何笑ってやがる!別に俺は、似合うとは一言も言ってねぇからな?!わかってんのか!?」


「はいはい。わかってますよ~。そんな事より~」


「そんな事より・・・・・・じゃねぇ!お前、全然わかってねぇだろ!!」


「今日は神耶君に一つお願いがあるんだ。」


「無視すんじゃねぇ!ってか、お願いだと?誰が人間の願いなんて叶えてやるもんか。そんな話をしにきたんならとっとと帰れ!!」


「明日、一緒に学校来てくれない?」


「だから人の話を聞けって!何度言わせれば分かるんだ!?」


「お願い。一緒に行って?久しぶりの学校登校で緊張してるの。しかも入学が二学期からの転校生としてなんて、初めての経験で・・・・・・不安なのっ!」



私は、神耶君に両手を合わせて、甘えるよな声で必死にお願いをする。



「知るかっ!勝手に一人で緊張してろ!!」


「友達が困ってるのに突き放すなんて…酷い!酷過ぎるっ!!」


「だ~れが友達だっ!お前が勝手に付き纏ってるだけだろ!!」


「師匠さんからも神耶君を説得して頂けませんか?明日、どうしても一緒に来て欲しいんです。」


「お前っ!師匠を見方につけようなんて狡いぞ!!」


「だ~って~・・・・・・どうしても一緒に来て欲しいんだもん。一人じゃ心細いんだもん~。

お願い神耶君、明日だけ。明日一日だけで良いから、一緒に学校行って~?」



何度も何度もお願いするものの、決して首を縦には振ってくれない神耶君。

師匠さんも、私のお願いに苦笑いを浮かべるだけで、今回ばかりは師匠さんの味方は期待できそうになは無さそうだ。



「あ~も~!いい加減にしつこいぞ!嫌なものは嫌!だからな!!」


「あぁ~酷い!そんなはっきり言わなくてもいいじゃない!この人で無し!鬼!悪魔~!!」


「・・・・・・お前なぁ・・・・・・」




散々にごねて見せる私に、神耶君は呆れた様子で、盛大なため息をついていた。





***




そして翌日――


「くそっ・・・・・・。なんで俺、ここにいるんだろ」




なんだかんだ言っても、最後には必ず、お願いをきいてくれるんだから。

そんな神耶君が私は大好き。





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