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願いが叶うなら  作者: 汐野悠翔
夏物語
16/98

生きろ

葵葉が何か言いかけたその時・・・・・・

葵葉の足元、川の中から無数の手が伸びてきて、葵葉を水の中へと引き込もうと力強く引っ張る。



「きゃ~~~~~っっ!!?」


「葵葉っ!」



葵葉の悲鳴に俺は急いで手を伸ばした。



「神耶君・・・・・・やだ・・・何?これ・・・・・・私を水に引き込もうと?」


「荒御霊だ!あの世にも行けず、現世にも戻れず、行き場の無くした魂達が、お前の精気に惹かれて集まって来てるんだ!」



本来であれば、現世で肉体が死に、生を終えた肉体から魂を離す儀式を済ませた魂にしか、この三途の川は渡れない。だが、葵葉の魂がこの川を越える事などできるはずがないのだ。


あの世への川も渡れず、現世への帰る道も分からなくなった魂は、年月をかけて荒魂となる。そして、荒魂となった魂は、気の狂いそうな程長い年月をこの地で彷徨い続けるしかなくなる。

自我を失った魂はやがて、消滅の道を辿る。



「やだ・・・怖い・・・怖いよ・・・・・・神耶君。私、どうなっちゃうの?もしこのまま引きずり込またら・・・・・・」


「二度と現世に戻れなくなる。お前の兄貴や、家族、現世にいるお前の大切な人達と・・・もう二度と会えなくなる」


そして・・・・・・葵葉の魂も荒魂となり・・・・・・今葵葉を引きずり込もうおしている彼らと、同じ道を辿ることになる。




「・・・・・・神耶君とも?」


「・・・・・・あぁ。俺ともだ。」


「嫌っ!」



葵葉の顔は恐怖からなのか、一気に真っ青になり・・・・・・

目にじわりじわりと涙がたまり始めた。



「いやだ・・・怖いよ・・・死ぬの・・・怖いよ・・・・・・まだやりたい事いっぱいあったのに・・・・・・。神耶君ともっといっぱい思い出作りたかったのに・・・・・・まだ死にたくない。死にたくないよ・・・・・・」


「っ!」



恐怖の中、葵葉が少しずつ胸に隠していただろう欲望を漏らし始めた。



そうだ。

もっと、もっと欲を出せば・・・・・・

本気でこの状況から抜け出したいと抗えば、まだ可能性はある!



「葵葉!もう一度聞く!お前の・・・・・・本当の願いは?!」


「私・・・私・・・・・・生きたい。もっともっと、生きていたい!」



ボロボロと涙を零しながらそう訴える葵葉。

そんな葵葉に、俺は精一杯腕を伸ばして叫ぶ。



「掴まれっ!葵葉っ!!」



俺が伸ばすその手を、一生懸命掴もうと葵葉も手を伸ばして来て・・・・・・


やっとのおもいで掴まえた葵葉の腕を、おもいっきり引っ張りあげる。



「うおぉぉぉ~~~~!!!」



絶対にこいつは助けてみせる。死なせてなんてたまるか!

絶対に・・・絶対にこの手を離さない!

こいつは、俺が守ってみせる!!

絶対にっ!!!






ー生きろ!!ー






















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