生きろ
葵葉が何か言いかけたその時・・・・・・
葵葉の足元、川の中から無数の手が伸びてきて、葵葉を水の中へと引き込もうと力強く引っ張る。
「きゃ~~~~~っっ!!?」
「葵葉っ!」
葵葉の悲鳴に俺は急いで手を伸ばした。
「神耶君・・・・・・やだ・・・何?これ・・・・・・私を水に引き込もうと?」
「荒御霊だ!あの世にも行けず、現世にも戻れず、行き場の無くした魂達が、お前の精気に惹かれて集まって来てるんだ!」
本来であれば、現世で肉体が死に、生を終えた肉体から魂を離す儀式を済ませた魂にしか、この三途の川は渡れない。だが、葵葉の魂がこの川を越える事などできるはずがないのだ。
あの世への川も渡れず、現世への帰る道も分からなくなった魂は、年月をかけて荒魂となる。そして、荒魂となった魂は、気の狂いそうな程長い年月をこの地で彷徨い続けるしかなくなる。
自我を失った魂はやがて、消滅の道を辿る。
「やだ・・・怖い・・・怖いよ・・・・・・神耶君。私、どうなっちゃうの?もしこのまま引きずり込またら・・・・・・」
「二度と現世に戻れなくなる。お前の兄貴や、家族、現世にいるお前の大切な人達と・・・もう二度と会えなくなる」
そして・・・・・・葵葉の魂も荒魂となり・・・・・・今葵葉を引きずり込もうおしている彼らと、同じ道を辿ることになる。
「・・・・・・神耶君とも?」
「・・・・・・あぁ。俺ともだ。」
「嫌っ!」
葵葉の顔は恐怖からなのか、一気に真っ青になり・・・・・・
目にじわりじわりと涙がたまり始めた。
「いやだ・・・怖いよ・・・死ぬの・・・怖いよ・・・・・・まだやりたい事いっぱいあったのに・・・・・・。神耶君ともっといっぱい思い出作りたかったのに・・・・・・まだ死にたくない。死にたくないよ・・・・・・」
「っ!」
恐怖の中、葵葉が少しずつ胸に隠していただろう欲望を漏らし始めた。
そうだ。
もっと、もっと欲を出せば・・・・・・
本気でこの状況から抜け出したいと抗えば、まだ可能性はある!
「葵葉!もう一度聞く!お前の・・・・・・本当の願いは?!」
「私・・・私・・・・・・生きたい。もっともっと、生きていたい!」
ボロボロと涙を零しながらそう訴える葵葉。
そんな葵葉に、俺は精一杯腕を伸ばして叫ぶ。
「掴まれっ!葵葉っ!!」
俺が伸ばすその手を、一生懸命掴もうと葵葉も手を伸ばして来て・・・・・・
やっとのおもいで掴まえた葵葉の腕を、おもいっきり引っ張りあげる。
「うおぉぉぉ~~~~!!!」
絶対にこいつは助けてみせる。死なせてなんてたまるか!
絶対に・・・絶対にこの手を離さない!
こいつは、俺が守ってみせる!!
絶対にっ!!!
ー生きろ!!ー
 




