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4章「妖精」

「どうした?人形風情。さっきまでの威勢は虚勢だったか?。」


「うるせぇ、調子のんな!。」


牽制に蹴りを放ち、一旦距離を取る。しかし、想定より相手はかなり手強い。そこいらの魔導人形より力や速度がずっと高いのもそうだがなにより厄介なのは相手のコンビネーションだ。

片方が攻撃し、その隙をもう片方が埋める。その隙を……といつまでもキリがない。こちらもコンビネーションで競い合いたいところだが……

オウルの方をチラリと見る。


「カルル、前に出過ぎだ。わかっているだろ?こっちも連携しないと無理だ。少しはこっちにも気を使え。」


「だからっ……お前はなんで偉そうなんだよ!!。」


「余所見とは舐められたものだな。」


刃付きの方が一気に加速し、前に切り込んでくる。

緑色もだが黒い刃付きのほうはかなりキレのある動きだ。迂闊にカウンターを入れようとすればその刹那にその刃の腕で切り刻まれることが予想できた。

そのため、当初は装甲が分厚く、防御力が高いオウルがコイツの相手をするはず手筈だったが相手の動きに翻弄され、こちらはすっかり押し込まれてしまった。


「甘いっ!!。」


「くっ!。」


度重なる斬撃に避け切れず、肩に少しもらってしまった。しかし、どうやら腕を動かすのに影響はなさそうだ。しかし、このまま続けていてもこちらがダメージを追い続けるだけだ。



「オウル!!『ソレ』をよこせ!タイミングは任せた!。」


「……。」


無言だが何のことを言っているかはわかっているはずだ。

了承を一々待っている余裕はない。


「なんのことかは知らねぇが……とっとと消えろぉ!!。」


緑色の方が刃付きと変わり、突撃してくる。

馬鹿正直に俺が受けると思うなよ…。

緑色が放つ拳の連激をなるべく躱す。戦いはなにも自分の技能やパワーだけじゃない………相手を自分の思うように動かすことも大切だということを教えてやる…。


「ちょこまかとっ………喰らえ!!。」


「待て!前に行き過ぎだ!!。」



刃付きがあわてて緑色の奴に注意をする。しかしもう、遅い。すでに奴はは力をこめ、大きく振りかぶった腕を放っている。

今度はこっちの番だ……!!。


大きく横に動き、その拳をよけると同時に前をオウルに譲る。

その拳はガードを固めたオウルの腕に命中し、あたりに轟音が響く。


「悪いね…『リアクティブ』」


オウルのその掛け声と同時にオウルが纏っていたゴツイ「装甲」が弾け飛んだ。

近くにいた緑色は装甲の炸裂を散弾さながらにくらい、派手に吹き飛んだ。

そしてその中心にいるのは装甲を脱ぎ、カルルと同じくらい細身の赤い人形となったオウル。


「ふっ……すべて俺の計画通りだ。」


『俺の』というところが気になるがツッコミを入れてる暇があったら前に突っ込まなければならないので一旦無視する。

もし、連携をして戦っている状態で、相方がやられたのなら……。



「クレイっ!!」


予想通り、やられた相方(どうやらクレイというらしい)をフォローするために刃付きが前にでてくる。だが近づけさせない。させるわけが無い。

刃付きの方を倒すべく、前に走り出し、跳躍する。そして右腕に力を込める。


「貴様のリーチはすでに把握した……そんな大振り…」


刃付きは案の定、俺の拳を躱す体制にはいった。



俺の拳なら躱せるだろうさ。


「なっ……!。」


刃付きは動揺をしていた。それはそうだろう。相手が振りかぶろうとした右腕が巨大化していくのだ。なにが起こってるか一瞬では把握できまい。

そうこうしてる間にも俺の右腕はオウルの装甲がガッチリと固め、ガントレットの様に『変形』した。


「これで……終わりだ!!」


貯めに貯めた右腕を勢い良く振り切る。その渾身の一撃を刃付きはその刃の腕で受ける……が俺自身の力と重力、そしてオウルの装甲の重みのを耐えられず、そのまま大きく吹き飛んだ。



流れのまま着地すると同時にオウルの装甲が離れ、宙に浮く。装甲同士の間にはバチバチと電流のようなものが迸っていた。これがオウルの『変形』の魔導石の力だ。あらかじめオウルの魔力を撃ち込んでいた物体同士をあやつり、それらを合わせることで自在の形に変形することができる。

ただし魔力を撃ち込むには長時間必要でそこいらのものに撃ち込んで使うということはできない。つまり即席で物を変形させることはできないのだ。そのためオウルは普段、自らの細いフレームに魔力を打ち込んだパーツを鎧として身体に纏っている。そのせいで本来の姿より一回りデカくゴツイ姿になってはいるが…。


「派手に決まったなぁ…。で?腕は大丈夫か?。」


見ると装甲を纏っていた姿とは違い、俺よりもスリムな姿になっていた。先ほど俺の右腕からから離れた装甲はオウルの周囲で浮いて止まっている。

少し右腕を動かそうとしてみる…………動かない。

どうやら中の回路がイカれたらしい。


「………右腕が動かない。」


「肩の損傷とあわせて俺の鎧をその細腕で振り回したんだ。そりゃあ、負担肩にかかるわな。」


よくみると肩にもらった切り傷に電流の様なものが走っていた。見る限りそんなに深くはなさそうだが………。


「ちょっと見せてみろ…………まあ、これぐらいなら叩いとけば治るだろ。」


「適当言ってるとはっ倒すぞ……。」



「はは、問題なさそうだ。とっとと先生の下に行くぞ。」



「やぁ、思ったより早かったじゃないか。」


見るとアンダーはチコがいた部屋を物色していた。奇妙な物体を手に持ちながらいろいろ弄っていたようだ。しかし、この部屋の元住人はというと自分がいたカプセルをじっと見ているだけでまったく動いていなかった。


「僕一人ならもっと早く倒せたんですけど足引っ張る奴がいましてね……。」


「お前鎧脱いだだけで何もしてないだろ。」


「は?。」



「あ?。」


「ところで君たち、彼らはどうしたんだ?」


彼らというのは先ほど戦った奴らの事だろう。オウルのリアクティブはかなりの威力を誇るし、俺の右腕も手応えはあったから少なくともすぐに襲ってくるということはなさそうに思う。


「結構吹っ飛んだからほっといた。」


そう聞くとアンダーは頭に手をやり、やれやれ…といった様子で何か考え始めた。


「襲いかかってきた奴らは私にも検討がつかない相手で少しでも情報が欲しい…なのに君たちは貴重な情報源を放置した……と?」


あっコイツ…まだ不機嫌だな。どんだけコイツは自分の知識を他人に語るのが好きなんだ…。


「あ……そうだ……俺も聞きたいことがあったのに忘れてた…。」


聞きたいことというのはクレイと呼ばれた人形が俺たちに言っていた「人形風情」という呼び方だ。まるで自分が人形ではないような言い方だったが、どうみても彼の身体は人形だった。そこに違和感を覚えたので適当に喋らそうとしたのだがすっかり忘れていた。


「うーんどうしよっかなー……やっぱ戻るか…」


そう思案していた時、壁によりかかった時。



ピッ



と音がした。



「………ん?」


「先生!これは…」


音ともに置物だと思っていた物が突如、四角く光り、本で見た文字のようなものが現れる。


どうやら昔、アンダーに教わった文字と同じようでなんとか読める。



「システム……再起中……88%……いや、90?」


「100%になったぞ」


見ると文字は100を現しており、『システム…再起動完了しました』の文字と共に光が強くなる。そして光は中で形を作り出し……。


「おはようございます。………お待ちしておりましたよ………カルル様。」



四角い置物の中にそれはいた。

本で見た人にそっくりの形だが……立体的じゃない。

まるで絵のようだった。



「わたくし、エルハザード様からあなた方をサポートするよう申し付けれられました。ナビゲーションピクシー。ナビとお呼びください。」


俺は自分をナビと紹介した存在を見てとても驚いた。

その映し出された存在がとてもチコに似ていたからだ。


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