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三章「友」

マシニクルとクズ鉄山は決して近くはない。道も悪く非常に歩きにくい。そのせいか生物であるチコは道の途中でバテてしまった。そのため、途中からは俺がチコをおんぶしてクズ鉄山に向かっていた。

魔導人形には疲れというものはない。魔導人形の燃料源はすべて胸にある魔導石のエネルギーだ。魔導石のエネルギーすべてを使い切るなどしなければ問題なく行動できるだろう。もちろん、アギトにしたようにセーフティがかかるほどの衝撃がかかれば別だが…。


「だいぶ近くまで来たな。カルル。チコを起こしてあげたまえ。」


「はいはい……おら、起きろ。いつまで甘えてるんだよ。」


そう、声をかけるとチコは「ふわぁぁぁぁ」と最初に話した時のように声をあげた。

たしかアンダーの話だとこれは『あくび』という生物の行為だったはずだ。

『睡眠』と呼ばれる休息を必要としているとき、または休息をとったあとに自然と起きる現象らしかった。

カルルが物珍しさにチコを見ているとチコはアンダーの身体の影に隠れてしまった。


「興味津々だな。」


「…うるさい。俺だってあんたじゃなくても好奇心ぐらいはあるんだ。」


「君の場合は好奇心がありすぎて何かの拍子にスクラップになりそうだがな。昔の人の言葉に好奇心は猫を殺すと言う言葉もあるしな。」


猫ってなんだ?という疑問が湧いたがどうせ昔の生物かなにかの話でそこに食いつけばアンダーの雑学で話が進まなくなると思うのであえてそこには触れないでおこう。


「そもそもあんたが頼んだ部品探しが発端なんだからな?。もし俺が壊れたら………あ…。」


「……どうした?。」


チコを見つけるにあたった顛末を思い出してる途中に気づく。


「オウルの事忘れてた……。」


「ああ……君と一緒にネジさがしを頼んでいたが…。」


チコのインパクトがデカ過ぎて頭の中から吹き飛んでいたがそもそもクズ鉄山にはアンダーに頼まれた部品探しで来たのだ。その時、一緒に探していたのがオウルだ。

別の方向を探そうとして別れてからかなり時間がたっている。



「…私はてっきりその部屋とやらをオウルが見張ってるものだと思っていたのだがな。」


「こんな謎めいた物見つけて頭から消えてたんだよ。」


「…まあ、私にとっては特にどうということはないしな。君たちの友情にヒビが入るだけだ。」



たしかにオウルとは友人だが正直、ものすごく仲がいいかといえば微妙だ。

オウルは俺と同じく、アンダーに気に入られ、今は頼まれごとをこなしたりしている。部品探しのように俺たちが一緒に依頼をしたりすることもよくあるため、必然と話すようになったのだが…。



「正直、あいつ、アンタの嫌なところが似てるからなぁ。」


「というと?。」


「偉そう。」


「ふむ、以後、気をつけるとしよう。」


この分だと無理そうだな。治す気が無い。

問題のオウルだがあいつはアンダーと知り合った経緯こそ俺と同じだが、俺とは逆にアンダーのことを師匠と尊敬している。というかアンダー絶対主義だ。

そのため、台詞回しを中途半端に似せようとしたりとウザったかったりする。

正直、言うとオウルのことはあまり好きではなかった。

それでも友人をやっていけているのはオウルと俺が同レベルの戦闘能力を有していて、いいライバル関係になってるからだろう。性格は嫌いだがオウルの強さは俺も認めている。

そうこう話していると俺たちは目的地についた。

俺が落ちた穴はかわらずあり、下を覗くとチコを見つけた部屋が見える。


「ここだよ。ここでチコを見つけたんだ。」


「たしかに妙な部屋だな。ここの辺りの山だけ不自然に高く、多いのも気になる。」


最初に来た時も思ったが、アンダーの言う通りここの辺りはやけに鉄くずが積まれていた。

高くまで積まれていて道の起伏が激しいので非常に歩きづらく、邪魔だと俺は思っていたが…。


「誰かがここを隠すために山を積み重ねた可能性もあるな。」


「……それは考えすぎじゃないか?ここらへんは他の魔導人形は近づかないし探索されてないだけだと思うが。」


「ここを見てみろ。」


そう言うとアンダーは廃材の一部を指さした。とくにどうということはないただの鉄材がそこにあった。もうだいぶ沈みかけている日の光を反射してキラキラと輝いていた。とここまで考え、カルルはこの光景に違和感を感じ、納得した。


「ああ、『反射』しすぎだな。」



「そう、鉄くず山は砂漠の近くだ。風に舞って砂が飛んでくる。だから普通なら自然とここにある鉄材には微妙な傷がつくはずだ。光なんて反射しないくらいな。」


「つまりここに積まれている山はすべて別のところからもってきたクズ鉄ってことか……わざわざ別のところから積んでくるってことは何かを隠したかったからってことね。」


とするとその隠したかったのはおそらくチコを含むこの部屋ということになるが。

すると誰がこの山を積んだのか。謎は深まるばかりだ。

アンダーは穴の底に降りて、藍色の空間にはいると壁を物色し始めた。俺も続いて降りようとしたとき、後ろから聞き覚えのある声が俺を引き止めた。


「やっと見つけたぞカルル。お前どこに行ってたんだ?。」


そこにはやや、暗めの赤色でゴツイフレームをもつ魔導人形がいた。

これこそ紛うことなき友、オウルがそこにいた。




「つまり、その人間を見つけて驚いたあまり、俺を忘れて自分だけ先生の元に帰ったというわけか?。」


「いや、ほんと、すまない。マジで忘れてたんだよ。悪気があったわけじゃない。」



俺と穴から一旦上がってきたアンダーはオウルに事のあらましを説明した。

最初、俺が人間を見つけたと言った時はまったく信じてなかった癖にアンダーが上がってきて俺の説明を後押しするとあっさり信じた。それだけでなく、「これは世紀の大発見ですね!。」「その探究心……わかります!」とか言い出す始末だ。だから俺はコイツが嫌いなんだ。

オウルはアンダーを先生と呼び、常にアンダーを最優先にする。しかし、それにもちゃんと理由がある。オウルは『目覚めた状態』の身体は非常にボロボロで、すぐに機能停止になってもおかしくなかったという。そこをたまたま通りかかったアンダーが修理し、直したらしい。その後はオウル自らアンダーの手伝いをするようになり、オウルはアンダーを常に尊敬し、慕うようになっていったようだ。しかし、しばらくたって、俺もアンダーの手伝いをするようになったため、オウルからは非常に敵意を向けられていた。しかし、喧嘩などに発展すると、アンダーにぶち壊されるのでお互い、不満を飲み込み、大人しくしているのが現状だ。


「いや、ほら、やっぱりアン……先生を最優先にするべきじゃね?。こんな大発見。真っ先に知らせなきゃと思ったら身体が勝手に動いて…」


「ふん、よく言うな。まあ、そういうことにしといてやる。」


とりあえずめんどくさいことになる前にオウルが好きそうな言い分を使って誤魔化した。本心で全く思っていないことはバレてるみたいだが、実際そういう考えもあると思ったのかこれ以上この事で責めてくることはなかった。


「で、このちっこいのが人間ねぇ……本当に人なんです?。」


オウルはチコをじっくりと観察していたがチコが俺の背中に隠れてしまうとチコを指さしながら先生に問いかけた。


「ほぼ間違いないだろう。だが……もしかしたら人と似た違う生物という可能性もあるがな。」


「なんだそりゃ。あんたがチコは人だっていったんじゃないか。」


そう返答するとアンダーは顎に手を添え、少し考えてから語り出した。


「例えばだ。この地方は大昔の異変でほとんどの生物がいない。実際にはカビなどはいるから0というわけではないが………つまり、昔にいた生き物はほとんど絶滅したと考えてもいいだろう。……チコがなぞの装置の中に入っていたということは普通に考えて昔の人々がその絶滅の危機からチコを回避させるために装置にいれたと考えることができる。」


「それだとさっきのあんたの考えとは違うように感じるが?。」


「話を最後まで聞け。早急に答えをだそうとするのは君の悪いくせだな。」


というとアンダーは嘲笑しながら手を広げた。

その行為の意味はわからなかったが馬鹿にされているのはわかったのでイラついたがなんとか抑える。

正直、早急に答えをだそうとしているのではなく、わざとアンダーが遠回しに言ってるだけなのではと思ったが声には出さなかった。


「まぁ、しかし、私が読んできた本には当時の人が残した日記などもあるのだが……そのどれにもその絶滅の時に起こった出来事についてなにも書いていないのだ。」


「ただ、単に書く余裕がなかっただけじゃないのか。絶滅するほどの出来事だろ?。」


「カルル、確かに大半の人間などはそうかもしれないが、危機に瀕したとき、未来に情報を残そうとする者は必ず何人かはいるはずだ。」


俺の意見はオウルに諭されてしまった。

こういう知識の話ではオウルの方がアンダーから真面目に受けようとしているのではるかに上だ。

その点は尊敬できなくも……ない。


「まあ、実際にはその種族の知恵レベルにもよるがな。少なくとも私が見てきた文献の中の人からはそういったことを大事にするような種族に見える。」


「………話が回りくどい。つまりどういうことだよ。」


あまりに迂回しすぎた話の為、つい急かしてしまった。オウルから物凄い殺気を感じるがスルーする。


「つまり大昔、生物が居なくなるほどの異変は突然、なんの予兆もなく起きたということだ。それも一瞬のできごとだ。つまりチコが装置にはいっていたのは異変から遠ざけるのが目的ではないと考えられる。そもそも異変を察知していなかったんだから。」


「まあ、その知恵があるものの習性?みたいなやつについては良く分からないがアンダーの言い分はわかった。だが人じゃない可能性ってのはどういうことだ?俺が見た本とかでもこんな形だったと思うんだが…」


「それは……」


アンダーはさらに自らの説明を使用とし……途中でやめた。

少し離れた後ろに二人組の何者かがいたからだ。

二人組からはこれでもかと言うほど殺気を感じられた。隠そうともしていないようだ。

ちらりと二人組を見てみる。どちらも比較的細身の魔導人形で一人は全身が黒く、腕が刃のようになっている。

もう一人は緑色のフレームで俺らと変わらず手と足がついている。そして、二人組に共通する妙なこと気づいた。

部品が新しい。まったくの劣化もしていない。

刃付きのほうはチコをちらりと見ると困ったような素振りをし、相方に話しかけた。



「聞いてないぞ……目覚めているなんて。やっとの思いで隠し場所を見つけたのに。」


「なーにビビってんだ?やることは簡単だろ?奪えばいい。……ということで人形風情。そいつはうちの大事なもんだから返してくれよ。」


「チコ……知り合いか?。」


チコに一応、聞くと案の定、首を横にふった。

だが向こうがチコを知っているということはチコの正体について何か関係があるということだろう。

ここは慎重に動かなくてはと思い至った時、ふと隣のアンダーを見ると不機嫌だった。

おそらく、自分の知恵を語る機会を潰されたのが原因だろう。


「ふん、どこの誰だか知らないが、この子はうちの子だ。奪いたいなら力ずくで奪いたまえ。まあ、うちのボディーガードに勝てると思うのなら……だがな。」


「おいおい、挑発するようなことはやめてくれ。ここは友好的に……」


「まあ、手強そうな相手だが君たちならやれるだろう。せいぜい、頑張ってみたまえ。ああ、カルル、チコは預かるぞ?。」


アンダーはチコを近くに呼びだすと後ろに下がった。

こうなってひまっては仕方ないのでオウルとどっちをやるか打ち合わせをする。


「…オウル、お前どっちと戦う?。」


「じゃあ、黒い方で。『相性』良さそうだし…」


ということは俺は緑の方か。そういえば俺らを呼ぶとき、あいつは人形風情と言っていたが……妙な呼び方だな。まるで自分は人形ではないみたいな…。


「まあ、強制的に聞き出せばいいか。」



「おもしれぇ。俺らに勝とうっていうのか?人形風情がぁ!。」


こうして俺らは謎の人形達との戦いが始まった。

とても長い戦いが。

嘘やろ?何ヶ月たってると思う?……あはは………

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